TOP絵(42)

 

 

 

 

世界に必要とされる人間が残ればいい。

 

 

 

住み慣れた城から離れて丘の上から眺めてみる。遠くにかすむ景色はとても綺麗で儚くて、

こうしていると非現実的ですらある。

一般人出身である自分があんなところにいたなんて嘘みたいだ。

 

「………ほんと、嘘みてぇ………」

 

出てきたことは後悔していない。もともとあいつが帰ってくるまでっていう、腰掛けの立場だったし。

魔道士の後任も捜してあるし仕事の引継ぎもしてきた。憂えることはない。

 

ただ―――何も知らせなかった、あいつだけはちょっと怒るかもしれないけれど。

「何でだよ、ポップ」といって、少し拗ねてみたりするのだろう。

数年前に勝手に行方不明になった少年はそんなところまで自分勝手だ。

 

 

いい加減、解放してくれたっていいだろ? とか、思ったりもする。

だってお前は帰ってきたんだし。

俺は旅に出ようと思ってたんだし。

お前を大事にしてくれる仲間も、恋人も、みんなあの城にいるんだから。

 

永久に会えないって訳じゃない。いつだって呼んでくれればすぐに駆けつける。

取り掛かったばかりの研究も実験も放り出してお前の手助けをするよ。

 

 

ただ、いまは気楽なひとり身に戻って思う存分、世界を歩いてみたい。

 

 

「―――ま、飛ぶことの方が多いかもしれないけどな」

 

笑う。

 

あの時、お前は選択を間違えた。消えるべきはお前じゃなかった。世界から『勇者』を―――

いや、『ダイ』を遠ざけてしまった。

立ち直る世界に関わるべきはお前だったのに。

 

 

世界には、『魔法使い』よりも『勇者』が必要だ。

『賢者』よりも『王』が必要だ。

それを、数年経ってようやく戻すことができたというだけ。

 

 

「さぁて………どこに行こうかねぇ」

 

 

重かった腰をあげてのんびりと天を見上げる。

目に痛いほどの青い空は果てなどないように思えた。

 

 

 42代目TOPイラストです。ついでに連作(予定)の第一章で
す。ポップはあんまし暗くならないとは思うのですが、やっぱ
どことなくシリアスな雰囲気に(苦笑)。
 最終回においてダイに置き去りにされてしまった訳ですが、
おそらくポップ君は「オレが代わりになっとけば」とか考えてそ
うだなぁと思いまして今回の小話と相成りました☆
 勇者が残るのと魔法使いが残るのとではその後の展開に
違いがあったのか否か。仲間が捜してくれるのは同じでも、
世間一般がどう捕らえるかって問題ですよね………以下、次
回v しかし続きは数ヵ月後だ(苦笑)。

 

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