TOP絵(48)

 

 

 

 

―――朝、目覚めたら、ひとりきりになっていた。

 

 

本当の意味でひとりになった訳じゃない。

ただ、前日も変わらず馬鹿話を繰り返していて、歴史担当の先生が厳しいとか、

この前ヒュンケルが遊びに来てくれたとか、今度レオナの買い物につきあうんだとか、

ブラスじいちゃんの様子を見に行ったんだとか他愛もない話をずっと続けていて、

それが至極当然のように感じていた。

 

「へぇ、そっか。ブラスじいさんは元気だったか?」

「うーん………元気は元気だけど」

「少しでも気になるんなら行ってやれよ。あとんなって後悔したって遅いんだぜ?」

 

そう言ってポップは笑った。

 

思えば、あの時から既に考えを固めていたのかもしれない。

語り明かして同じ部屋の別々のベッドでそのまま眠りに落ちて、

オレが目覚めた時、既に彼のベッドはもぬけの殻だった。

朝が早いなんて珍しいと思いながらもレオナに何か用事を言いつけられたのかもしれないと考えた。

胸を掠めた僅かな不安は気付かないフリをした。

 

 

―――そう、もしかしたら。

不安を無視できたことが、

彼の考えが読めなかったことが、

 

僅か数年の間に生じた彼との溝なのかもしれなかった。

 

 

いまでも彼はオレの大切な仲間で―――友人で。

けど、たぶん、彼は、まだ。

数年前に置き去りにしたことを………気にしているだろうから。

そしてそれ以上に、彼の自由への希求がこれまでよりも増していたから。

 

オレが戻ってきたなら自分の役目は終わりだと思ったのかもしれない。

だったらもうちょっと帰るのを遅らせればよかった。

少なくとも、もう少し彼が現世での関係に色々と縛られて、自力で旅立つには

地位だの責任だのが重くなりすぎるぐらいまで。

 

 

そんな後ろ向きな思考をする自分はとっくに『勇者』じゃなくなってるのかもしれないと

僅かに自嘲した。

 

 

目の前に広がる世界は綺麗だ。

人々が笑顔でいることは嬉しい。

なのに―――どうしてだろう。

嬉しいはずのオレはこころの底から笑うことが出来ないんだ。

 

 

きっと、その原因は。

吹き付ける風の中に感じる不吉の予兆と。

 

 

―――傍らにいない『オレの魔法使い』。

 

 

 

 48代目TOPイラスト。ダイくんの後ろ姿です。「置いてかれて
拗ねてるんですー」みたいな図柄になってしまいました(汗)。
この話は原作数年後設定なので、もーちょい後ろ姿も大人び
てるべきなんですが………。
 ダイとポップの関係は友情以上恋人未満ということでファイ
ナル・アンサー。世界は平和だし好きな人も傍にいるし大満
足なはずなのに、微妙に楽しむことが出来ないのです。どこ
かの国(ロシア?)の諺に「100年楽しみたければ結婚して、
一生楽しみたければ親友を作れ」みたいのがあったと思いま
すがまさにその状態。
 ラスト近辺だけ不吉な予兆を漂わせて以下、次回(笑)。

 

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