※このお話はパラレルです。

※戦争がなくて、ルルとナナリーは枢木家に引き取られたまま、とゆー設定です。

※今回、みんなも微妙に壊れてます。是非とも広いこころで受け止めてやってください。

※ルルファンの方、ごめんなさい。スザクファンの方、すいません。カレンファンの方、もうしませんから(平伏)

 

 

 


―――紅月カレンには、伝説がある。

 


恒常的不満に対する永続的反逆の宣言U


 

 あれはまだクラス分けが決まって間もない時期、昼休みを迎えた教室はざわめいていた。
 中学からエスカレーター式に上がってきた者もいれば、他から転入してきたものも、引越してきた者もいる。親の都合で義務教育期間中、日本とブリタニアを行ったり来たりしていたカレンは漸くこの程日本に帰還したところだ。一時期だけ留学していたブリタニアよりも幼少時代を過ごした日本の方がはるかに居心地がいい。周囲からは「お嬢様」と思われているようで聊か息苦しく感じることもあるが、いずれは肩肘はらずにやっていけるだろうと思っていた。
 自分の席で教科書を整理しているカレンの横にすっと誰かが影を落とす。
 見上げればそれは、クラスメートの枢木スザクで。何処かのんびりした油断ならない笑みを浮かべながら彼は少しだけ首を傾げた。
「あのさ、カレンさん」
「………なに?」
「話があるんだ。少しだけ付き合ってくれないかな?」
 突然の申し出に周囲がどよめいた。しかし、そのどよめきが広がりきる前に。

「ルルーシュに頼まれたんだ。カレンさんに取り次いでほしいって」

 更なる爆弾を彼は投下した。
(………ルルーシュ?)
 カレンは眉を顰める。
 確かそれは隣のクラスの、やたら顔立ちの整った少年の名前だ。もとはブリタニア人だが日本に帰化して長いと聞く。じゃあ日本名を取得したらあの顔で「太郎」とか「万作」になる可能性もある訳だと内心バカ受けし―――た、のは置いといて。カレンが眉を顰めた理由は他にある。
 つまり、いま現在、机の横でにこにこ笑っている同級生も、「ルルーシュ」という少年も、色んな意味で有名人だったからだ。
 ルルーシュはIQが異様に高いとか、枢木が100メートル走の新記録を出したとか、ルルーシュは校外で賭け事に精を出しているらしいとか、枢木は壁を走ることが出来るとか―――おまけにふたりはこう見えても「兄弟」だ。もうひとり中等部に妹がいると聞いたが、どんだけ派手な兄弟妹なんだと思ってしまう。
 特に「弟」は既に生徒会副会長の座に就任している。生徒会メンバーを発表する場で見事な演説を披露した黒髪の少年に、どれだけ目立てば気が済むんだと呆れてしまったのは秘密だ。だって、大抵の女子は「かっこいい」と見惚れていたのだから。
 そんな有名人が何の用で、と感じると同時に、いい印象はあまり抱いていなかった。
 隣のクラスだから廊下ですれ違うことは幾度かあったが、その度に何故か冷たく睨まれたから。ああ、でもそれはいつもという訳ではなく、ある特定の人物と喋っていた時に限られていて―――。
「大丈夫。僕も行くから」
「………わかったわ」
 根拠もなく言い切ってくれる彼に何故か自然と頷き返していた。直後に「しまった」と舌打ちしたが、頷いてしまったものは訂正が効かない。僅かに視線を俯けて立ち上がれば導くように枢木が踵を返した。
 ついて来い、と言っているのだろう。
 微かなため息と共にカレンは後に続いた。




 辿り着いたのは校舎の裏手。穏やかな陽が差し込む中に「彼」は佇んでいた。白い壁を背に、柔らかな光を受けながら立ち尽くす様は一幅の名画のようでもあって、瞬間的ではあったがカレンの目を奪う。しかしそれは、「絵」ではない証拠に枢木を目にして表情を少しだけ和らげて、カレンを認めて僅かに嫌そうに眉をしかめて。
 呼び出したのはそっちのくせにどんだけ不遜なんだと先刻の感想も忘れてカレンは腹を立てた。
「ルルーシュ、カレンさんを呼んできたよ」
「………ああ」
 一歩前に進み出た彼は、何の感情も宿さない顔で淡々と告げた。
「紅月カレン」
「―――なに?」
「生徒会に入れ」
「………………は?」
 素っ頓狂な声になってしまったのは自分の所為ではない。ないはずだ。流石に枢木が嗜める。
「誘い方がいきなりすぎない?」
「会長に頼まれただけだ。好きで誘ってるワケじゃない」
 何だ、それは。
 失礼にもそっぽを向いたままルルーシュは制服の内ポケットから白い紙を取り出し、朗読を始めた。
「『紅月カレンに告ぐ。私、ミレイ・アッシュフォードこと生徒会会長はこの度正式にあなたを生徒会に引き入れることを決め―――」
 抑揚がないことこの上ない。思いっきり面倒くさがっていることが嫌でも分かる。
 これ以上ないくらいに分かる。
 とんでもなく分かる。
「―――により当校の生徒は須らくいずれかの部に所属することを取り決められており、先達の様子から伺うに」
「………」
「いずれの部にも属さず属す気配もなく(中略)故に生徒会への参加を要請するものです。無論、あなたの優秀さは前から耳にしており(後略)」
「………」
「てゆーかぶっちゃけ面白そうだから入りなさいなv ルルちゃんがきちっとこの文章を読み上げたかも後で教えてね♪』―――って、なんだそれは!!」
 バシィッ!!
 きっちり文面通り「v」やら「♪」まで読み上げてしまった彼は苛立ちも新たに手紙を地面に叩き付けた。傍らで耳を傾けていた枢木が苦笑と共にそれを拾い上げる。「会長ってやっぱすごいヒトだよねぇ」と彼は笑っているが―――。
 苛立ちも露に前髪をかきあげたルルーシュは尊大に命じる。
「とにかく! うちの会長は我侭な上にワンマンなんでな。目をつけられた以上は逃げようがない。とっとと生徒会入りを受諾しろ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。幾ら何でもいきなり過ぎない?」
「異論反論は直接、生徒会室で言ってくれ。尤も、会長に不平不満を告げたところで丸め込まれるのがオチだがな」
 ふん、と軽く鼻で笑われた。
 前から思っていたがこの態度は問題がありすぎやしないか。同級生たちが語る「ルルーシュくんて白馬の皇子様だよねv」とのセリフに脳内パンチを食らわせる。
 知らず、カレンは右の拳を強く握り締めた。
「―――ルルーシュくん。あなたは一応メッセンジャーなんでしょう? 会長に頼まれたのならもう少し礼節を尽くすべきじゃないかしら?」
「会長がお前を入れたがってるだけでオレには何の関係もない」
「何の関係もない割りには敵意が見え隠れしているのよね。もう少し感情を隠す術を学ぶべきだわ」
「猫の被り方でも教えてくれるのか。このデカ胸のバカ女が!!」
 直後。

 バキッ!!!

 渾身の右ストレートがルルーシュにヒットした。

「ぐはっ!!」
 悲鳴と共にその場に「皇子」は突っ伏す。一方、加害者も内心で激しく動揺していた。
(ど、どうしよう、やっちゃった………!!)
 ブリタニアで鳴らしたストリート・ファイトの腕前をまさかこんなところで披露する羽目になるとは。せめて日本では乱暴な面は隠し通そうと思っていたのに。
 オタオタと辺りを見回したカレンは、はた、と気付いた。この場にもうひとり目撃者がいることに。
 恐る恐る右手を見遣れば、枢木スザクが目をまん丸にして立ち尽くしていた。
 まずい。バレた? コイツもやるか?
(って、そうじゃないでしょあたし!!)
 あうあう、と顔を真っ赤にして言葉もないカレンに、何処か困ったような笑みを返した彼は。
 まずは倒れている「弟」を助け起こして意識があるのを確認すると、真面目な顔で語りかけた。
「いまのは、君が悪いよ。ルルーシュ」
「………」
 殴られた左頬を抑えてルルーシュは不機嫌そうに唇を引き結んでいる。赤く腫れあがったアレは相当痛むだろう。だが、素直に謝る気にはなれなかった。
「日本人は礼節を重んじるんだ。僕よりも君の方がそういう機微に詳しいのにどうしたのさ」
 そうだ枢木、言ってやれ。そいつはちょっとばかり外見がいいからって思い上がっているのだ。もしくは単に拗ねているか甘えているか―――。
「カレンさんは頭がいいのにバカ女なんて失礼だよ。それに、スタイルだってシャーリーとためをはれるってクラスの皆が言ってたよ」
(………ん?)
 カレンは瞬きを繰り返した。
「なのに『デカ胸』はないんじゃないかな、『デカ胸』は」
「………」
 ―――あの。
 なんだか、話が妙な方向に転がっちゃいませんカ。
 微妙に硬直しているルルーシュとカレンを余所に、我が道を行く枢木スザクは堂々とのたもうた。
「『デカ胸』じゃ敬意が感じられないよ。せめて『デカ乳』で行こう、ルルーシュ」
「っ、それの、何処に敬意があるんだ――――――っっ!!?」

 ドバキャァァッッ!!

 強烈なコーク・スクリューが枢木スザクを吹き飛ばす。
 どしゃあっ………! と数メートル離れた場所に落下した様はどこぞの少年漫画を髣髴とさせる。
「っ、生徒会なんか、ぜったい入らないからね!!」
 茫然自失のルルーシュと地面にダイヴしたスザクを置いて、カレンはくるりと踵を返したのだった。




 ―――かくして、紅月カレンは「伝説」を手に入れた。
 学園内で一、二を争う有名人、枢木家の兄弟ふたりをダブル・ノック・アウトした女傑として。




 あの後しばらくルルーシュ親衛隊(男女比2:8)に付け狙われるは、マニアックなファンはつくは、本当に大変だった。
 実に不本意だ、と。
 いまでも時折り授業の合間に洩らされるカレンの呟きに、スザクは静かに笑みを零すのだった。

 

※WEB拍手再録


 

でも結局、彼女は生徒会に入ります。結論だけ見れば会長のひとり勝ち(笑)

ルルの発言が色々とひどいですが、スザクと同じクラスのカレン嬢が羨ましかったんだと

大目に見てやって下さい………。

スザクはたぶん天然だから、セクハラの何たるかもわかってないと思うヨ!

 

BACK    TOP

 

 


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理