※このお話は1000%捏造です。

 

 


「何が望みだ」、と彼は問い掛けた。

 だから自分はただ笑い返した。

 


我が心に捧ぐ磔刑の咎人


 

 部屋に入り込む穏やかな光。けれどもそれは外から差し込むやわらかな陽の光ではなく、人工的に作られた偽りの光だ。
 自分は御簾を退けない。
 彼は仮面をつけている。
 互いに正体を悟られぬよう隠している。
 疾うに自分の名前は知られているし、自分も彼の名前を知っている。だから「隠す」のなんて本当に形式的なものだ。「心から信用した訳ではない」と無言で主張するための。
 幼い頃から互いの顔を見知っている。今更隠し立てするほどのこともあるまいと密かな笑みを零して。
「何が望みだ、と。あなたが訊くのですか」
「そうだ」
「望みなど決まっています。日本の独立を、ブリタニアの滅亡を」
「真実、それだけと主張するつもりか。なめないでもらいたい」
 新型KNFや武器の提供、各地に散らばった反乱軍との提携、資金提供、情報の受け渡し。キョウト六家との繋がりを得た『黒の騎士団』は色々と行動しやすくなったはずだ。
 それで満足しておけばいいものを、疑い深くも冷静な人物は己の意図が気になって仕方ないらしい。
 見返りを期待しない無償の奉仕など有り得ない。
 そう、固く信じ込んでいるかの如く。
「叶えなければいけなくなりますよ」
「元より叶えさせるつもりだろう?」
 どちらがどちらを謀っているのか分からない。
「―――ならば、命じましょう」
 薄っすらと微笑む。御簾を隔てても相手にこちらの意図が伝わるように。

「此処へ枢木スザクを連れて来なさい。殺してはなりません。生きたまま連れて来るのです」

 言い放った直後。
 伝わったのは明らかな疑念と惑い。どれだけ己を偽ろうとも、仮面で姿を覆い尽くそうとも、隠しきれない思考の果てで。
 呟かれたのはあまりにも単純な問いかけの言葉。
「………何故?」
 直接に答えることはせず。
 ただ、命を下す。
「手足が欠けていようとも心が壊れていようとも構いません。必ず生かした状態でこの場に引きずり出しなさい」
「前日本国首相のひとり息子だからか? 今更奴にどれだけの政治的意味があると言うのだ」
「意味などありません。必然があるのみです。私こそが彼の命を奪う人間なのだから」
 その精神を壊すのが、敵になった友人だろうと抱えた自己矛盾だろうと彼を支配する傲慢なブリタニア人だろうと関係ない。ただ、かつての誓いを果たすのみ。
 いまでも、覚えている。
 真っ直ぐで生意気で乱暴で、自分勝手で空気が読めなくて、いつもいつも自分のことで精一杯な。
 愚かしくて救えないと思った。穢らわしいと感じた。自身の傍に置いておくには、あまりにも泥臭くて馬鹿げていて、向こうはこちらに好意らしきものを抱いていたが故に一層に。
 邪魔だった、目障りだった、鬱陶しかった。視界に入ることさえ許せなかった。

 だから誓ったのだ。
 その首を落としてやろうと。

 立場的に難しいとか女の細腕で首なんか落とせるものかと当時ですら笑われた。軍に入り鍛錬を積んだ彼に真っ向から勝負を挑んでも叶わないことを知っている。
 だが。
 結果的に『勝てる』のだから問題ない。
「―――何故、お前が」
「契約です」
「あいつを、」
「殺します」
 仮面の奥には読めない紫暗の瞳。
 ―――彼の名前を知っている。彼が何を大切にしているかを知っている。
 幼い身で敵国に売り渡され、それでも尚、己の誇りと身内を守ろうとする姿は気高く感じた。
 誇りを踏みにじる者は血脈であれども容赦せず、血脈でなければいや増して。
 嫣然と少女は微笑んだ。
 聞いた以上は約束を果たさねばならないと。

「枢木スザクの命を捧げなさい。それこそが唯一絶対の望みです」

 其は怒りを内包し偽りを纏う者、憎悪に身を焦がす者。
 応えてみせるがいい。と、笑った。
 応えて天下に遍く知らしめるのだ―――我こそは、掛け替えのない者を死に誘う闇であると。




 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名をもって。

 

 


 

こんな神楽耶姫はイヤだ………。

 

未だ公式での一人称や性格が霧の中なので何とも言い難いですが、たぶん彼女は

騎士よりも皇子のがお気に入りだと思うんです(騎士ファンにあるまじき発言)

「血脈であれども容赦せず」、は皇子のことなのか姫自身のことなのかは微妙なところ。

神楽耶姫と騎士は血縁関係にあると信じてますが、実際はどーなんでしょ。

 

BACK    TOP

 


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理