※このお話はパラレルです。

※戦争がなくて、ルルとナナリーは枢木家に引き取られたまま、とゆー設定です。

 

 

キライではないのだ。
ただ、ちょっとばかり苦手なだけで。

 


考えたところで意味のない傾向と対策U


 

 彼に対する印象を好きか嫌いのどちらかに分類しろと強制されたなら迷わず前者と答えるだろう。
 あの若さで帝国を纏め上げる手腕には脱帽するし、綺麗に整った顔立ちは流石あのふたりの兄弟だと見惚れてしまうし、話術や交渉の巧みさには素直に驚くしかない。他国の外交官と話している内容に耳を傾ければ、よくもまあ相手に気付かれない内に自国に有利なように事を運ぶものだと色んな意味で感心してしまう。
「話を聞かれても怒らないのは君だからだよ」
 などと、すこぶるつきの微笑と共に囁かれても何と言い返せばいいのか分からない。
 そもそもこの人物が怒る様が思い浮かばない(それはそれで恐ろしいことだ)
 協力してくれと頼まれたなら手を貸すことに否やはないが、もとより自分は彼の部下でもなければ同士でもなく、ましてや歳の離れた友人などであるはずもない。尊敬の念を抱いてはいるが、おそらく、第一義的には「敵」であるところの。
 つまりはどう言い繕って見たところで自分は彼―――ブリタニア帝国のシュナイゼル皇帝陛下―――が苦手なのだ、とスザクは結論付けた。
 個人的な好悪の感情とはまた別次元の話である。




 華やかなパーティもあまり得意ではない。
 テーブルの間を縫いながらスザクはこっそり内心でため息をつく。
 こうして動き回っている理由はただひとつ、誰かに捕まれば途端に取り囲まれることが目に見えていたからだ。「日本国首相の息子」はそれなりに目立つ立場だから肩がこって仕方がない。
 語学はそこそこ、頭脳もそこそこの自分では高尚な政治・経済の話題を振られたところで通り一辺倒の回答しか示せやしない。ルルーシュならきっと上手く切り抜けるどころか逆に相手をやり込めたりするのだろうなと思うともはやため息さえ零れそうに無い。
 各国の主賓を招いたこういった会にどうしても出席しなければならないのであれば、いっそSPの如く給仕の如く脇に控えさせてはくれないかと父に申し出てみたことがある。無論、切り捨てられたが。
 はあ、と俯いて足を止めたのがまずかった。
 背後から感じる覚えのある気配に逃げ出そうとしても時既に遅し。
 振り返れば、先回、対面した時と寸分違わぬ笑顔が待っていて。
「久しぶりだね」
「お久しぶりです、シュナイゼル皇帝陛下」
 あくまでも表面上は礼儀を失わずにスザクは丁寧な礼を返してみせた。
「畏まらなくていい。君は弟の親友である以前に、私の個人的な友人でもあるのだからね」
「自分はそこまで優れた人間ではありませんから」
 彼が傍らに立った瞬間から周囲の目が痛いほどこちらに注がれる。かつての敵国、現在の友好国の代表ふたりが話している場面は否応にも興味を惹くらしい。ましてや、片方が何かと噂の絶えない絢爛豪華そのものの現皇帝陛下と来ては。
 そういえば父はどうしたのだろうとふと思い出して、まるで思考を読んだようなタイミングで「お父上とは先刻、話をしたよ」と返された。
 じゃあそれでいいか、とスザクは納得した。
 枢木家の親子の繋がりは明らかに薄い。いっそ憎んだり貶したりといった感情が存在するブリタニア皇帝一族が羨ましく思えてくるほどに。
 かつて、ランペルージ兄弟を日本に留めるべく奔走した際もスザクが相談した相手は父ではなく六家代表のカグヤであり、桐原老であり、目の前の現皇帝陛下であった。父には父の政治的な思惑があったらしく幾つか愚痴っぽい繰言はされたもののスザクはほとんど耳を傾けたりしなかったのだ。
 結果、負うことになった責務も責任も使命も業も知ってて引き受けたのだから後悔はしていない(「弟」は納得しないかもしれないが)
 スザクが引き受けることになった代償の内容を知っている人物のひとりは目の前で優雅にグラスに口をつけている。
「ところでスザクくん。ルルーシュとナナリーなんだが………」
「帰しません」
 これだけは引けない、と言い切った。
 彼は綺麗な紫色の瞳をちょっと虚をつかれたように見開いて。
「ふたりの―――」
「戻しません」
「ことなんだが………」
「行かせません」
「………」
「あげません」
 その、言い方が。
 あまりにも大人気ないものだったから。
 とうとう彼は苦笑して困ったように前髪を軽くかきあげた。
「―――単にふたりが元気にしているか尋ねたかっただけだよ。大丈夫。今更、わたしがあのふたりを取り返そうとすることはない」
「………申し訳ございません」
 流石にいまの対応はちょっとあれだったな、と、遅ればせながら悔やんでみせる。
 そんな態度だから君は不遜なのか謙虚なのか律儀なのか無作法なのか分からないと言われるんだよと、日本語が達者な皇帝陛下は揶揄してみせた。
 近くのテーブルから持ち上げたワイングラスをひとつ、こちらへ押し付けて。
「バルコニーに出てみないかい? ここからの眺めは結構、気に入っているんだ」
「陛下が望むのであれば」
「―――まだそう呼ぶのか」
 聊か諦観を含めてぼやいた後に穏やかな光の灯るバルコニーへと足を進める。
 すれ違う瞬間、彼は小さく、しかし確かに響く声で呟いた。

「今日は、君の『ランスロット』が見たいな」

 無理です、と即座に返した声は「たとえ演技であったとしても一考してみせるべきだよ」の一言で呆気なく拒否された。
 嗚呼、全く、本当に。
 どれだけ注意していたところで結局いいように運ばれてしまうから。

 だから自分は彼のことが嫌いでないくせに苦手で堪らないのだ。

 

※WEB拍手再録


 

こんなシュナイゼルはイヤだ(汗)

と言うか、あの方の性格を私自身が掴みきれてないんですね………

くるるぎさんとの距離感が分かりません。

 

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