※リクエストのお題 → 『コードギアス』、スザルルでほのぼの。
※「よくある話」になりましたが全力で見逃してやってください。
※スザクもルルーシュも性格がかなり違いますがやはり全力で見(以下略)
― 永遠片恋 ―
どちらかと言えば努力はする方だ。めげないし、諦めないし、言い換えればしつこいし頭が悪い。 しかし、その対象がスポーツや勉学といった少しずつであれ成長が感じられるものであれば日々の苦労も納得できるのだが、これに関しては連戦連敗。周囲はもうやめとけと忠告、もとい、からかって下さるが、それでも諦め切れないのだから仕方がない。 ちなみに、組織を中から変えるだの祖国をぶっ壊すだのといった高尚なお話ではない。 枢木スザクが難儀している、猫に関してのお話である。 午後に入りかけた学園の生徒会室でスザクは悩んでいた。とてもとても悩んでいた。学校を休んでいる間にたまったレポートの山だとか、どうにもついて行けない教科書の内容とかセシルに託されたマーマレード入りのおにぎりに悩んでいる訳ではなく(「よかったら皆と食べてね」と言われたが絶対に誰にも渡すことはできない)、目下、彼の意識は棚の上で寛いでいる猫―――アーサーに向けられていた。 (………どうして) 餌を持ってきても、ねこじゃらしを持ってきても、その他ありとあらゆる猫用のおもちゃを持ってきても。 (どうして、一緒に遊んでくれないんだろう………っっ!!) 生徒会の他のメンバーがいない部屋で、彼はひとり悔しそうに拳を握り締めた。 切なげに見上げてもアーサーは知らん振りを決め込んでいる。ああ、あの尻尾とか、耳とか、前足の肉球とか、とってもとっても触ってみたいのに―――! アーサーに限らず、犬猫に代表される小動物に何故かスザクは嫌われまくっていた。そりゃーもう幼い頃から、遊ぼうと手を差し伸べた子犬に噛み付かれ、抱きついた子猫に引っかかれ、介抱しようと助けた小鳥につつかれ、逃げ出したハムスターを捕まえたら失禁された。お前、あそこまでされて何で動物嫌いにならないんだ、とは当時一番の親友だったルルーシュの弁である。 既に何度目か分からないがもう一度ねこじゃらしを取り出してひょいひょいと振る。 「ほーら、ねこじゃらしだよ〜」 呼びかけにアーサーはちらり、と目線こそ寄越しはしたものの。 ふにゃ〜あ、とだらしない欠伸をした後に棚の上に横倒しになってしまった。もはやこうなるとスザクの位置から見えるのは頭と背中のみである。 「………やっぱ無理なのかな………」 ガックリと肩を落とした時だった。 「―――先刻から何をやってるんだ、お前は」 「ルルーシュ?」 背後では、呆れ顔の友人が扉を中途半端に開けた状態で佇んでいて。 後ろ手に扉を閉めるとスザクの傍までやって来る。 「で? 何をしてたんだ?」 「あー………うん、その―――」 少しばかり話すことに躊躇いを覚える。先日も構いすぎるから嫌われるんだと揶揄されたばかりである。だが、スザクの手にねこじゃらしが握られていれば何をしていたのかなど一目瞭然で。 ふん、と鼻先で笑うとルルーシュは片手を棚の上へと差し出した。 不貞腐れていたはずのアーサーはいつの間にか耳をピンと立てて爛々と目を輝かせている。 「アーサー」 一言。 「こっちへ来い」 彼が呼びかければそれだけで。 にゃあんと一声、しなやかな身体を伸ばして優雅に生徒会副会長の肩へと飛び降りた。ゴロゴロと喉を鳴らしながら頬へと頭を擦り付ける。白く細い指先でアーサーの喉元をくすぐってやりながら、再度、ルルーシュは目を細めると。 「それで? お前は何をしていたと?」 「う………」 絶対、わかってやっている。 ビシリとその場に固まってしまったスザクをほっといて、ルルーシュは手近なソファに腰掛けると膝の上で丸まったアーサーの背中を撫で始めた。 「お前もいい加減にすればいいんだ」 「―――そんなこと言わないでよ」 「猫語を教えてくれる塾でも探してみるか?」 「話せそうな人に習ってみたけど駄目だったんだよね」 「………習ったのか」 フラフラとした足取りで近いて、ソファの背中側からばったりと倒れこんだ。両足は床に、腹はソファの背もたれに、両手は前側にダラリと垂らしただらしない体勢にルルーシュが僅かばかり眉をしかめた。他の誰かが居る時はきちんとしているくせにと毒づきつつ。 「座るんならちゃんと座れ」 「僕が座ったらアーサーが逃げるだろ」 「………まぁ、な」 いまはルルーシュの膝の上で大人しくしているアーサーだが、ひとたびスザクが隣に座ったなら飛び退いて逃げることは想像に難くない。たとえそこが友人の膝であれ、シャーリーの肩であれ、ミレイの足元であれ、スザクが近づけば不穏な気配を察したかの如く距離を置くのがこの猫である。 右手を見ればごく近くにアーサーの気持ち良さそうな顔。手を伸ばせば引っ掛かれるか噛み付かれるか逃げられるか、何にせよ触れられないことに違いは無い。 はぁ、とため息をついた。 ついでのように、ルルーシュもため息をつく。 「それでだな、スザク」 「うん」 「お前は何をしている?」 「なに、って―――」 さっきからこのセリフばっかりだなぁ、と思いつつ。 目標に到達できなかった右手は対象を転じて傍らに座る友人の頭へと。さらさらした黒髪をゆっくりと梳いていた。 くせっ毛の自分と違い、素直に指が通る彼の髪はむかしから密かな憧れである。 「気持ちいいなぁと思って」 「バカか、お前は」 「アーサーは逃げるし」 「代わりにするな」 「同じだよ」 「はぁ?」 不機嫌そうに眉を吊り上げて、思いっきりバカにした口調でルルーシュが振り向いた。僅かに宙に浮いてしまったてのひらを再び友人の耳元へ戻して、頬へ流れる髪を後ろへ撫で付けてやった。 上手くは言えないけれど。 気紛れだったりプライドが高そうだったり身のこなしが綺麗だったりする辺りとか。 「懐かないのが、特に………」 「意味が分からん」 むすっとした表情でスザクの手を払い除けると、友人は膝の上のアーサーにも構わずに立ち上がった。うとうとしかけていた生徒会室づきの猫は抗議の声をひとつだけ上げて近くのテーブルの上に退避した。 ああ、そういえば。 怒りや不機嫌のツボが何処にあるのか分かりづらい点もそっくりかもしれない。 ツカツカと室内を横切って、いま来たばかりなのにルルーシュはまた扉に手をかける。漸く少しだけ身体をこちらへ向けて、未だソファに引っ掛かったままのスザクにニッコリと、それはそれはニッコリと、背筋が寒くなるほどの笑みを零して。 「スザク」 「………なに?」 「差し詰め、お前は犬だな。犬猫は仲が悪いらしいぞ」 「小さい頃から一緒に育てば大丈夫だよ」 「だが、犬は尻尾を振る。主に、忠実に、バカみたいに」 言葉の端々に棘が潜んでいるのは気のせいか。 もしかしなくても同年代の友人の頭を撫でるのはマズかったか。スザクとしては相手が彼だからそうしたくなっただけであって、例えばリヴァルやナナリーやミレイ相手には、そんな不躾にも失礼な真似はしない。ただ、なんとなく、彼に対しては抑えが効かないとゆーか何とゆーか。 「もし、オレが猫だったら―――」 次の反応に身構えているスザクに、見惚れるぐらい綺麗な流し目ひとつ。 「やっぱり、お前のことは嫌いだ」 目を見開いた相手にそれ以上、視線を向けることはなく。 「―――当分、片思いでいろ」 多少は気にかけてやってる間に、考えもあらたに振り向いてみればいい。 猫は何処か不満そうに「ふにゃあ」と鳴いた。 |
………ほのぼのか………? これ………(汗)
いや、それ以前に「スザルル」なのか激しく疑問が残―――いえいえ、今回の場合、
積極的に絡んでるのがスザクの方だからワタクシにとってはこれでもスザル(強制終了)
あああごめんなさいごめんなさい、リクエストの何たるかを分かってなくてホントすんませんっっ!
何処か薄暗い話になってしまうのは最近のスザクに対して色々と考察を行った結果、
微妙に歪んだ結論に至ったからでしょーか。
でもって、そんなちょっとばかり黒そうな部分を取り入れたパラレルも別に考えてたんですが、
無駄に長くなりそうだったのでやめました☆
そっちのスザクのが攻めっぽかったんでしょうけどね………ふっ(遠い目)
こんな作品ですが少しでも喜んで頂けたら幸いです。リクエストありがとうございました♪