「何故、彼をそう呼ぶのかだって? 愚問だ。あまりにも今更過ぎる疑問だ!」

「私は彼に命を救われている。そう、いま思い出しても危険な、絶体絶命のピンチだったと言えよう。いや、私だけではない。あの場においては私をはじめとする一個小隊すべての命が彼の双肩にかかっていたのだ」

「流石の私ももはやこれまでかと考えた―――無論、一機でも多くの敵を倒して行く心算ではあったが、本来は救助に駆けつけた身だ。なのにただ地に堕ちるを待つばかりとは、この無念、無知、無力。あの瞬間の私がどれほどに自らの不甲斐なさを悔いていたかなど誰にも分かるはずがない」

「夕日に染まる血のような砂漠。駆けつけた機影は救いの神のようでもあり、死神のようでもあった。正確無比な射撃はまさしく敵と同様に私たちの命を奪い去ることもできる死神の鎌だ」

「その技術に見惚れた。射撃にはそれなりの自信を抱いていた己を恥じたくなるほどにね。分かるか? 他の者とは異なり彼の一撃は叶うならばいつまででも見ていたいような見事な軌跡を描くのだ。然るに、命を救われた私が彼に剣を捧げると決めたところで何もおかしくはあるまい」

「守られているだけのか弱い存在に興味はない。無論、花は愛でるべきであり守られるべきであり慈しまれるべきでもある。しかして彼は花ではなく、か弱き者でもない。こころに矛盾を抱え常に傷つき血を流しているとしても、立ち上がることを諦めないならばその魂は勇者のものだ」

「故にこそ宣言しよう、私にとって理想の相手とは守るだけではなく、背中を預けられる存在でもあるのだと!」

「助けを求められたならば幾らでも力を尽くそう。この身を幾度でも投げ出そう。だが同時にその存在は、もしも私が道を違えたならば、私を止められるだけの強さを持っている必要がある。彼が私を殺せるからこそ私は彼を守るし、彼に剣を捧げようと誓うのだ」

「他でもない、私が彼に私を殺す権利を与えるのだ!」

「愛でるだけの存在ならば他に幾らでも捜し出せる。だが、殺されてもいいと思えるほどの相手に巡り合えることがどれほどの奇跡か。いつの日か彼が私にその銃を向けたなら理由を聞くこともなくこうべを垂れ、己が命を捧げるとかたく誓おう!」




「―――で、もって」




「君がそういう風に思っていることを、実際に彼に伝えたことはあるのかな」
「ない!!!」

 告げればそれなりに感動したり怒ったりしながら受け入れてくれそうな相手なのに、だから逃げ回られるんじゃないかなあ、と。
 取りとめもないことを考えながら技術顧問は目の前のドーナツにぱくついた。

 


騎士の忠誠


 

 


 

とりあえず、うちのハムさんはこんな感じ。

ハムさんの奇天烈ながらも筋の通った台詞(※褒め言葉)が再現できません………。

 

BACK    TOP


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理