「だからお前は馬鹿だってんだ。何だってオレらが貧乏くじひかなきゃなんねぇんだよ？」
「うるさいなぁ、仕方ないだろ？　あの場ではああ言うしか………」
「もーちょい頭使えよ、何考えてんだ？　全くもって馬鹿の上にアホで頓馬で間抜けでとーへんぼくのスットコドッコイだな、お前は。あーあ、やってらんねぇ見てらんねぇ」
「………無理だと思うのか？」
「お前に何が出来るってんだ。兵力も武力もねぇ、オマケに『仲間』と思しき連中ですら信用できない宮中孤軍の状態じゃねぇか。命令する方も命令する方だが、引き受ける方も引き受ける方だ―――主従関係、最悪」
「何だよっ、お前だって表立って反論しなかっただろ！？」
「呆れて口が聞けなかっただけだ」
「お前も望んで仕えてる身分だろ。だったら文句言わないで最善をつくそうとは思わないのか？」
「『最善をつくす』イコール『無謀な行動』ってとこだな、お前のは。大体お前は抗議はしても実質的な反対はしない。どうして最後には必ず頷いちまうかな」
「………期待を裏切るわけにはいかないよ。それに―――何とかなる、気がする」
「―――？」

「………ひとりじゃないと、思ってたんだ」




「オレひとりで何もかもやろうなんて思い上がりは抱いてない。ちゃんと考えてる」
「ホントかよ？」
「協力者がいれば何とかなると思う」
「見通し甘くないか？」
「お前は」
「？」

「お前は、手伝ってくれないのか？」

「………他力本願、自意識過剰。誰もが味方してくれると思ってんのか？　だからお前は甘いってんだ」
「………やっぱ、そうかな」
「はなっからオレのこと念頭に置いてたってワケか。その上であの話も引き受けたって？　………マジやってらんねぇ。変なところで計算高いんだよ、てめぇはっ」
「―――もし」
「勝手に人のこと数に入れてんじゃねぇよ、ったく………甘えやがって………」
「もし、お前が嫌だって言うなら………別に、いい」
「………」

「オレひとりで、やるよ。誰にも頼らない」




「お前―――ホント馬鹿だな」
「もう聞き飽きた」
「オレに頼れなかったらそれで全部終わりにして、後は独力でやるってのか？　計画性なさすぎ、信じらんねー」
「………」
「やってらんねぇ見てらんねぇ信じらんねぇ。無計画性もココまで来ると表彰モンだな、なぁオイ？」
「………？　って、痛っっ！　髪の毛引っ張るなよ、抜けるだろっ！」
「『頼れる奴』のリストに載ってるのって、オレだけか？　アイツら泣くぞ？」
「かほをひっひゃるにゃっ！！」
「―――忘れるな」
「………？」
「オレが此処にいる理由を、な。こうなっちまった以上は一蓮托生、比翼連理の関係なんだ。よーく頭に叩き込んでおけよ………バーカ」
「………」




　並んで歩いていた影が二つに離れ、ひとつが勝手にどんどん先に進んでしまう。残された方はしばし其処に佇んだ後訝しげに首を傾げた。

「………比翼連理って………なんか、意味、違わないか？」

　こっそり呟いて慌てて追いかける。やっとの思いで追いつくと足を引っ掛けられてスッ転んだ。抗議の声もいざ知らず、軽い笑いを響かせて二つの影は同じように月光の下を歩いていく。
　辿る家路は、間もなく終了。




　君と共に生きよう、この儚い現実。
　たとえどんな困難が待ち受けていようとも諦めはしない。
　全てを乗り越えて僕は君のもとへ駆けつける。




　共に在ろう―――比翼連理のつがいの如く。