※リクエストのお題:「きつねつき」シリーズの半兵衛と総兵衛、ふたりに対する秀吉の反応の違い。

※半兵衛の方が秀吉に好意を持っているとわかるもの。

※取り合えずネタに苦しんだ結果、お約束ネタを使うことになりました。すんません。

※お約束ネタだから上手くすればお色気シーンにもなりえたのにどっちも妙に淡白だから結局いつも通りの無味乾燥(苦)

※ふたりに対する反応の違いもなあ………うん………(目を逸らす)

 

 

 

 空はどんよりとした鼠色、重たい雫をいまにも零れ落としそうにしている。吹き付ける風はなまぬるく、木々の葉は空の色を映して暗く移ろっていた。森の合間を縫うように流れる川は遠く山から激流となって下り来る。岩と岩の合間を縫い、木々の影を駆け抜け、幾つもの細い支流となりながらも本流は絶えることなく続いて行く。
 不意に、水中から棒切れのようなものが飛び出した。
 灰色に濁りきった中をかろうじて揺らめきながらも水辺に辿り着いた棒切れは、次いで、その本体を現す。濡れそぼった髪が纏わりつき、衣服は水を吸って重く沈む。地面についた手はおろか全身から止め処なく水を滴らせるものは間違いなく人間であった。
 荒い息を吐き、激しく咳き込み、未だ水中に没したままであった左腕を強く地面へと引き上げる。水中から現れたものもやはりヒトであった。気絶しているのか身動きする気配もない。同じように重たく濡れそぼった衣服、唯一の違いは、後者の方が小柄であり、腰に大小を差していたことであろうか。さもありなん。前者は着物を纏ったまま水中を泳ぐために己が武器を捨てたのだ。そうでなければふたりとも水に没したまま還らぬ者となっていたであろう。
 長い髪を纏わりつかせ、動きの鈍い身体で地面を這いずり前へと進む。上空から静かに、されど確実に降り始めた雫が既に湿り気を帯びていた土に滲んで色を深める。衣服の纏う水滴を絞る暇もあらばこそ、荒い息を吐きながら腕に小柄な男を抱え込み、手近な茂みの中へと身を隠す。腹を抱え、蹲る。苦悶の表情を浮かべ、頬は青褪めながらも眼光だけは鋭さを減じてはいなかった。
 周囲の気配を探り、呟く。
「まずいな………」
 この方だけは助けなければならないのに、と。
 半兵衛はもう一度だけ秀吉を庇うように胸元へと引き寄せた。

 


鈍色


 

 鬱蒼と生い茂った草むらにこれ幸いと身を潜めながら辺りに注意を払う。
 油断していた訳ではない。油断していた訳ではないのだ―――と、思いたい。しかしそれは結局はただの言い訳であり、こうして現実に主君たる秀吉を危険な目に遭わせてしまっている現状は。
(軍師の名折れだ)
『まったくだ』
 内心で零れた片割れも同意を示し、情けなく項垂れるより他はなく。
 未だ夏の遠い京の都。曇り空と冷えた風の生憎の天気、遠乗りなどしたところで景観は望むべくもないと言い立てて、言い立てることによって執務を抜けたがる秀吉を説得できなかったのが失策のひとつ。
 ついて来いとの言葉に従い共に馬に乗り駆けたはよいものの、城内の主だった面子に直接行き先を告げるでもなく、急な出立であるからと衛兵のみに言伝を頼んだのが失策のふたつ。
 数日前から己が手足である佐助と茜を方々に偵察に出していたのが失策の三つ。
 都から遠く離れた野まで駆け、密やかに秀吉の命を狙っていた敵の潜伏に気付かなかったのが失策の四つ。
 かろうじて敵を撃退するも崖から谷底に転落し、馬という貴重な足と戦力を失い、更には敵が未だ何処に潜んでいるのか判断さえつけられずにいるのが失策の五つ。
 過ちと誤りを数え上げれば切りがない。反省は尽きることなくとも落ち込むにはまだ早い。激流を泳ぎきった身体は疲労を訴え、水に濡れた衣服は体温を奪い、降りしきる雨が動きを取れなくする。それに、見える部分にこそ秀吉は怪我を負ってはいないが。
(っ………)
 右の脇腹を抱え、低い呻き声を上げた。岩にでもぶつけたか、先刻から重たい痛みが圧し掛かる。痛覚は半兵衛と総兵衛で分け合うことで弱められるとも、身体は同じである以上、無理を重ねれば突然に動けなくなる可能性とてあった。ましてや半兵衛はただでさえ腺病質であり、お世辞にも丈夫とも頑丈とも評することは叶わぬ身の上であり。
 ―――忌々しいと生まれながらの体質を恨んだところで是非もなし。
 空は暗く沈みこみ、太陽の位置から方角を確認することさえも難くする。逸早く城に帰らんとする身にとっては災難、されど、敵もまたこの暗さではこちらを見つけるに難かろうと思えば僥倖。脳内で辛うじて巡らせたは直前まで山中で辿りし方角、谷川へ落ちた位置、高さ、川の向き。凡その見当と共に歩き出さんとするのは己が優秀な部下の言葉を信じるためである。
 意味はなかろうと思いつつも未だ気絶したままの主を脱ぎ捨てた羽織で包み込む。早くあたためてやらねば熱を出してしまう。自分はいい。倒れたとて熱を出したとて常のことだ。されども秀吉は軍の長であり、心身を害したならば事は個人の問題に留まらぬ。
 今しばらくの辛抱をとひとりごち、ずしりと響く重みを腕に抱え上げた。よろめく足が情けない。腹の痛みが何程のものかと歯を食い縛り、周辺への注意を怠らぬままに歩を進める。
 探すのはこの辺りにあると聞いた忍びの隠れ小屋である。以前に部下から耳にしていた。本来は忍びが使うもの、下手に紛れ込めば返って危険極まりない、お教えするのはあくまでも非常の事態に備えんがためと念押しされたことを覚えている。思えらく。いまが正にその時であると。雨水と疲れからぼやけがちな目を必死に開いて薄暗い世界を見通す。日は落ち、闇が近付く。このまま凍え死ぬことも獣の餌食となるのも御免被りたい。主だけは何としても護らねばならぬ。
 木々の合間に隠れ家への道を見い出した時には半兵衛の体力も底をつきかけていた。もとより必要最低限の肉と脂しか備えておらぬ身体、無理をすればのちへの影響は避けられぬ。雨露が凌げるだけでも有り難いと腕に抱えた人物ごと家屋の中へと転がり込んだ。中に他の忍びが居たならば一悶着起きたであろう急な来訪も幸か不幸か無人の居であった。
 疲れに押されて眠り込む訳には行かぬ、気絶することも叶わぬ、意識を失えば身体が冷たくなるを待つのみである。
 しかし、落ちかかる瞼を堪えることもつらく。
(………総兵衛)
『任された』
 半兵衛が薄闇色の瞳を閉じ、変わりに目覚めたのは濃紺の瞳。扱う肉体は同じなれども精神の疲労度合いが違う。この時ばかりはふたり分の精神を備える己に感謝しつつ、総兵衛は素早く辺りを見渡した。半身は精神の奥底深くに沈んで休養を取っている。
 小屋の中には必要最低限のものしかないようである。火を起こしたかったがいま少し様子を見るべきか。もたつく足で奥の箪笥へ向かい、中から乾いた大きな布と小袖を取り出した。濡れた身体を拭えるだけでも相当に助かる。出入り口付近に寝かせておいた秀吉を抱き上げ囲炉裏の傍まで運び、「失礼」と一応の前置きをした上で濡れた上着を剥いだ。腰の大小はいつでも使えるように脇へと退けておく。
 ―――細く、小さな身体だ。熱を留めておくことさえ難しいような。
 しかして秀吉の手足の筋は強く、跳躍にも優れていることを総兵衛たちは知っている。力で押し切る戦いは出来ずとも速さと機転で数多の戦を潜り抜けてきた男である。それ以上の感慨を抱くこともなく秀吉の着込んでいた内掛けを取り、袴を取り、遠ざける。流石に下帯を取るのは躊躇われた故に手付かずで放置し、代わりに布で丹念に周りを拭いておく。はたはたと己が髪から流れ落ちる雫が彼に落ち、刺激で彼が起きはせぬかと少々気遣った。起きてくれた方がよいのであろうが、聊か、傍目には問題ありそうな体勢である。
(襲っているように見えるな)
 呟いたとて半兵衛から呆れた応えのある訳もなく、ひとり静かに苦笑を惑わせ手際よく秀吉を着替えさせた。ぬれそぼる彼の着物は天井の梁の釘に軽く引っ掛けておく。出入り口と囲炉裏を遮るように吊るしたのは不意の侵入者の目を紛らわせんがため。
 着替えさせながらに確認したが、秀吉に目立った外傷はないようである。心臓も正常な鼓動を刻み、呼吸も規則正しい。多量の水を飲んでしまったということもなさそうだ。火が焚けるまでせめてもの暖になればよいと十重に二十重に乾いた布で小さな身体を包み込み、小山のようにしてから安堵の息をつく。
 主に目立った外傷はなかった、となれば、愈々もって問題となるのは己が怪我である。痛覚を遠ざけたのは咄嗟の判断であり、肉体の放つ悲鳴を無視することは得策ではないと知ってもいたが、そうしなければ此処まで逃げて来ることさえも難しかった。
 同じように箪笥から乾いた布を引きずり出し、恐る恐る、着物を脱いだ。
『………こんなものか』
 僅か、総兵衛は柳眉を寄せた。右の脇腹は青黒く腫れ上がり、毒々しい。青黒い傷が熱を持っているのか冷えて腐りかけているのか現時点では判じられぬ。下手をすれば骨、内臓、何れかに支障を来たしているのやも知れなかったが、ざっと見たところ、忍び小屋の中にすら使えそうな薬はない。擦り傷、切り傷に使える常備薬はあれど、だからこそ使わずにいようと感じた。薬は匂いが強い、使えば秀吉は気付く、せめて城に戻るまでは無駄な心配も迷惑もかけたくないと半兵衛も同意するに相違なかった。
 そのまま怪我を放置しようとした腕は、眉を顰める己が部下、佐助と茜の顔を思い出すことで動きを止めた。城に戻ることが出来たなら傷の手当ては彼らに頼むことになる。その際、無茶が過ぎると怒られるのも謗られぬのも生憎と慣れていたが、悲しげな表情をさせることだけは迷われた。仕方無しに折衷案として、尤も香りも効き目も少ないと思われる膏薬を患部に塗りたくり、薄っぺらいさらしを巻きつけた。上手く巻き付けようにも寒さに悴んだ手と指先では無理がある。
 秀吉の大小を手に携え、木の扉の脇に立ち、格子窓から外を窺う。相変わらずの雨。世界は暗く、重く、冷え切っていた。斯様な視界の有様では喩え敵が潜んでいたところで判ずることは不可能。張り詰めた神経で周囲を探っても伝わるのは静かな世界に響く雨音とふたりの人間が奏でる吐息のみ。両手に握り締めた大小の感覚さえ遠いと気付き、この様では、敵に襲われたとて寒さの余りに碌な抵抗も出来ずに斬り捨てられると思われた。
 いざとなれば我が身を盾にし、彼ひとりに逃げ延びて貰えればいいとややもすれば短絡的に判じ、総兵衛は小窓の傍から離れた。
 幸いにして乾いたまま置かれていた木々を囲炉裏にくべ、暖を取る。火打石を操る両手が震えていたのに笑う。吐く息はともすれば白く浮かび上がりそうで、これは空気が冷え切っているためか、己が身体が氷のようになっているからかとしばし思考を浮遊させた。
 燻り始めた火の手に息を漏らし、同時、身震いした。手も足も白く、遠目に見たならば生霊のように感じられたやも知れぬ。昏々と眠り続ける秀吉を包まった布ごと背中から抱え込み、腰を下ろす。彼が目覚めたらどうして俺がお前に抱っこされてなきゃいけないんだとか身動き取れないとか、とにかく文句を言われるのだろうと思うと先んじて困り果てたいようでもあり待ち遠しいようでもあり。
 どうも、秀吉殿には甘くなってしまって困る―――………。
 仕えるべき主君なのだから大切に思うのも命を捧げるのも当然ではあるが、総兵衛にとっての秀吉はただの上司よりは親しみ深く、半兵衛にとっての秀吉は友と言うよりは護るべき対象と捉えられているようであった。では秀吉から見た両名はとなると、途端に想像もつかなくなってしまうのは自身の想像力が貧困なためであろうか。
 炎を前にしてもぬくまる気配は一向にない。芯から冷え切っている。濡れた長い髪を乱雑に布で拭い、いっそ禿にしたならば手入れも必要なくなるのにと考え、そんな真似をしたが最後、小一郎や佐助や茜に苦言を呈されるのだろうと微苦笑を浮かべた。長政もお前は長髪が似合うと褒めてくれた。外見に然程の拘りは持たぬが、周囲の制止を押し切ってまで断髪を強行しようとも思わなかった。
 適当に包まったために己が手足の所在さえも覚束ない。重く冷たい痛みと疲労を訴える身体を叱咤激励し、ぎこちない動きでかろうじて両手を外へ出す。これまた何処に行ってしまったのか皆目見当もつかぬ秀吉の手を探し出し、意味があるのかないのか分からない摩擦熱を送る。彼の手よりも握っている己が手の方が冷たいと気付いてからは二人羽織の如く後ろから布ごしに秀吉の手を掴んで火へ翳した。秀吉が起きるやもしれぬ。起こしたくない気もする。無論、起きてもらわねば困るのだが、何故か、出来うる限りはこの静寂を友としたく。
 布の隙間より取り出した秀吉の手をじっくりと見遣る。このような時でもなければ手の造詣などさして気にも留めぬ。肉厚で、指はやや短く、こどもの手とも言えそうな。されどもこどもと評するには皮膚が固く、指の節々が太く、ところどころに剣だこが出来ていた。自分には体力も腕力も限界がある、それは生まれ以っての体格故にどうしようもないことだ、ならば最低限、刀に振り回されること無きように心身を鍛え、力よりは速さを重視した攻撃を目指すのだと秀吉は語っていた。実際、彼はただの力比べであれば小六どころか弟の小一郎にさえも負けるであろう。だが、忍びを彷彿とさせる身軽さによって変幻自在の攻撃を繰り出す。実戦において勝つことよりも生き延びることを重視した戦闘様式。それでいい。彼は一軍の将。陣地の奥深くにて差配するのが主たる役目。先陣きって戦場を駆け巡るのは他の兵士の役割であった。
 翻って己が手の細さ、白さを見るにつけ、自嘲の笑みを浮かべずには居られぬ。斯様に細い腕では戦ったところで限度がある。故にこそ己は身体より頭を働かせるを得意とするようになったが、敬愛する主君のために直接の腕を奮えぬことは惜しく感じられた。
 秀吉が低い呻きを上げる。嗚呼、目覚める、少しは離れておくべきか、けれども身動き取れぬのが現状だと、逆に未だ濡れそぼつ彼の赤茶けた髪に頬を寄せてみる。ぬくもりのひとつもない冷たいばかりの感触すらも、主のものと思わば何程のこと。
 ゆるゆると秀吉が目を開き、定まらぬ視線を左右へ彷徨わせ、自らの状況を把握し始めるのを待ってから総兵衛は声をかけた。抱き締める腕に僅かに力を篭め、握り締めたままだった彼の掌をわざとらしく炎の前で振りながら。
「おはようございます、秀吉殿。お加減は如何ですか」
「………総、兵衛、か………?」
「総兵衛です。ちなみに半兵衛は眠っています。状況を一からご説明差し上げることも可能ですが如何なさいますか。頭はしっかりしていますか。寝惚けていませんか。あと半刻とか思っていませんか」
「………相変わらずだな、お前は………」
 低い声で舌打ちした秀吉は、徐々に調子を取り戻してきたようである。もとより寝覚めはよい。目を覚ました瞬間こそ多少の混乱を誘えども、ほんの僅かな合間を置いてすぐに理性を取り戻す。常に状況把握に努める見上げた精神は当然に賞賛の対象ではあったが、休む暇とてないのではないかと心配にもなる。
「現時点で追っ手の影はございません。幸か不幸か外は雨、囲炉裏の火から出る煙も多少は雨に紛れてくれるでしょう。馬がなくては城に戻るにも少々手間取ります。いましばらく体力が戻るのを待つのが吉かと」
「追っ手、か」
 目つきを鋭くし、口元を布に埋めた秀吉の手をそっと解放する。離れていくぬくもりが寂しいなどと決して告げたりはしない。
「見覚えのない連中だったな。心当たりはあるか」
「心当たりならお互い山のようにございましょう。昨今は敵も策を弄する、わざと自軍とは異なる装束に身を包み襲撃してくる向きもあると聞き及びます」
「まあ、この時期に仕掛けてくるってことは割とあたりもつけ易いけどな」
「わざと隙を見せたと仰いますか」
「それで本当に危機に陥ってりゃ世話はねえ」
 自嘲気味の笑みを見て、存外本心だったのやも知れぬと感じた。張りつめていた肩の力を抜いた秀吉の右肘が脇腹に当たりそうになり少しだけ身動ぐ。理性や意志の力でもどうしようもない、条件反射のようなものだ。痛みは遠ざけてあるが、痛覚を取り戻した瞬間に倒れてしまっては秀吉を護れない。何がどうあろうとも城に戻るまでは意地でもこの肉体を持たせなければならなかった。
 敵の追及は後回しとしたらしい秀吉は、総兵衛に抱え込まれたまま実に不機嫌そうにこちらを見上げてきた。もしかしなくとも彼はこの位置関係故に話を早々に打ち切ったのかと総兵衛は考える。何故かと聞かれれば、常のふたりは正面から対峙していることが主であり、幾ら半兵衛や総兵衛がふてぶてしくとも、相手を抱きこむような無礼な振る舞いを仕出かしたことはないからである。秀吉は誇り高く、意地っ張りであり、普段なら乗ってきてなかなか降りない話題を即座に放棄する以上は斯様な理由しか思い浮かばなかった。
 案の定、睨み上げてきた秀吉は先ずは不満の声を上げる。
「ところでな、総兵衛。この体勢はなんだ」
「嫌だなあ秀吉殿。そんなの見たまんまじゃないですか」
「にしたってな………」
 苦虫を噛み潰したような顔で秀吉が居心地悪そうに動く。彼の左手は総兵衛が取り出したために布の外に出ているが、他は未だに包まれたままでいるのだ。心身の自由を奪われているのが落ち着かないのかもしれない。四苦八苦した挙句にどうにか右手を布の外に突き出し、両足もきちんと外に出してから漸く彼は安堵の息を吐く。火に照り返された顔が微妙に嬉しそうなのを確認し、嗚呼、普段からもっと笑えばいいのに、小一郎殿ほどではなくとも随分と可愛らしい顔立ちをしているのだからと又しても勝手な感想を抱いた。
 器用にも総兵衛の腕の中―――と、言うには聊か語弊のある体勢。総兵衛は疾うに彼を抱え込むのをやめて父親が幼子を膝に乗せるが如く彼の背後にひたりとついていたに過ぎないからである―――で、彼は向き直る。呼吸の音すら聞こえるほどの距離。
「どうして俺を抱き込んでたんだ」
「秀吉殿が冷え切ってはいけないと思いまして」
「暖を取るだけなら裸で抱き合ってた方が何ぼかましだろ。無礼だとでも思ったのか」
「総兵衛の身体の方が冷え切っていたので」
 ちょっと触ってみてください。明らかにあなたの方があたたかいでしょう、ならば直に肌を触れ合わせたとて熱を貰うのは総兵衛たちばかりになってしまう、穏やかに笑いながら告げると不貞腐れた表情と深い溜息を返された。
「………総兵衛」
「はい」
「お前、馬鹿だろ」
「はい?」
 いつも通りの評価を聞かされて、いつも通りに総兵衛は首を傾げる。総兵衛はもとより、半兵衛ですら時に秀吉から「馬鹿」と称される。一応はこれでも美濃の麒麟児と、優秀な軍師であると褒めそやされているはずなのだが何かにつけては貶められる。だが、嫌ではなかった。賢い、聡い、頭がよいとの賞賛をもらいたい訳ではない。其は秀吉が信長に対して抱く感情と等しく、役に立ちたいこともさることながら、褒められないよりは褒められた方が嬉しいことも否定はせぬが、つまりは単純に主君に笑っていてほしいのだと。
 脇に放られ再び熱を失っていた総兵衛の手を秀吉が拾い上げる。
「下手な気遣いすんな。お前が倒れたら、周囲に責められるのは俺なんだからな」
「流石にそれはないでしょう。何だかんだ言いながら皆さん秀吉殿のことが好きなんですから」
「いや、だから、お前は―――」
 握った手に力を篭め、言い募ろうとした秀吉が不意に眉を顰める。正面から見据える茶色の瞳は仔細は読み取れぬながらも躊躇いを覚えているようであった。
 総兵衛の右手を己が左手で握り締めたまま、主は口調を強くする。
「―――半兵衛はどうしてる」
「総兵衛たちは交代制ですからね、いまは奥深くで眠り込んでます」
「出せ」
「いますぐですか」
「そうだ」
 すぐに、と言葉を重ねられてやはり総兵衛は首を傾げた。相方を呼び出すのは吝かではないか、疲労しきった精神は泥のような眠りを貪っている。強引に叩き起こしたとてまともな会話は望めまい。あるいはそれこそが望みであるやも知れなかったが、半兵衛の精神が不可抗力により眠りに就いたならば浮上してくるのは結局は総兵衛である。秀吉とて理解しているはずだ、かつての京への道行きにおいて事情を話したのだから。そうと理解した上で尚、辿り着くものは同じであっても、半兵衛に伝えたいことがあるならば従うまでではあるが。いや、前置きも必要なく、彼が望むならば拒否権はない。発動する気もない拒否権などあって無きが如しだ。
 ゆっくり、瞳を閉じる。
 意識の奥に潜んでいた片割れを呼び出し、よく分からないが用事があるらしいと揺り起こす。寝惚けた相方は総兵衛と同じように首を傾げつつも意識を浮上させた。
 濃紺の瞳が消え失せ、代わりに、薄闇色の瞳が目を覚ます。
 正直にも即座にと命ぜられた通りに起きてきた半兵衛は状況が読み取れていない。眠りこけていた折りの行動は伝聞に過ぎず、現実を目の当たりにすれば戸惑うこともある。動揺は現さぬまでも何故に秀吉と至近距離で睨み合う羽目になっているのかは純粋に疑問であった。
 こちらの手首を捕まえて秀吉が不敵に笑う。
 嗚呼、何か良からぬことを考えている時の表情だ………そう、半兵衛が未だ回転の始まらぬ脳で拙く考え出す暇もあればこそ。
 視界が転じ、身体が後ろに倒れる。見上げるは天井、圧し掛かる影に疑問を抱くより先に強打した後頭部に手を当てた。
「痛っ………」
 咄嗟に右手を動かそうとしたものの封じられていては思うように動かぬ。必然的に左手を後頭部へ当てるが痛みが紛れる筈もないことは先刻承知。冷たい板の感触と丁度腰の辺りに感じる重みに幼子らと遊んだ際の記憶が甦る。膝にじゃれかかり、足元に纏わりつく子らは元気そのもので、勢いに負けた半兵衛はよく転倒していた。
 果て、如かしていまはこどもなどおらず、座り込んだままに転倒するほどの眩暈を覚えた験しもなしと鈍い瞬きを繰り返し、遅ればせながらの結論として。
「………秀吉殿」
「なんだ」
「重い………のです、が………」
「だろうな」
 主君に押し倒されたのだと漸う理解した。
 囲炉裏の火は細く、乏しい灯しか投げかけてはこない。薄暗い室内で見る主は笑っているようでもあり怒っているようでもあり、何れにせよ彼の考えを読み切ろうなど無駄なことと幾許かの諦観、感心、賞賛、重たい冷たさを伝えてくる右の脇腹にばかり神経を取られる。幸いにして彼が座すは半兵衛の腰、怪我の真上に居座られた訳には非ず。隠し果せねばならぬと鈍い頭の裏で考えつつ浮かべる笑い。
「どうなされたのですか。総兵衛が何か粗相でも?」
 未だ掴まれたままの右手に秀吉のざらついた手の感触を覚える。小さくとも固く節くれだった「武士」の手。其に比して自らの如何に軟弱なことか。木下組に来る前までは水仕事や畑仕事に精を出すこととてあった、幾ら佐助と茜がいたとて暮らしを営むためには野菜や果実を育てるぐらいする。伴って水洗いも行えば不思議と部下たちに怒られた。私どもの仕事を奪う心算ですかと詰られれば引くよりなかったが、いまでもあれは、主に余計な仕事をさせまいとする彼らの優しさだったのだと信じている。
「奴はいつも通りにふざけた奴だったさ。問題ない」
「然様でございますか。ともあれ、無事の目覚め、何よりです。小屋を探れば多少の食料もございましょう」
「此処は忍びの隠れ小屋のようだからな。兵糧丸だけは願い下げだが他なら何でもいい」
「ならば早速、用意いたしましょう」
 上体を起こせば支えとしていた左手さえも彼に奪われ、板敷きに後戻りする。
 流石に今度ばかりは半兵衛も眉を顰めた。
「秀吉殿………?」
「総兵衛を押し倒すのは気が引けるが、お前なら押し倒したって問題ない」
「どのような違いがあるのか分かりません」
「俺にだって多少の遠慮や好みはある」
 ますます意味が分かりませんと深い溜息。
 揺らめく炎にあわせて秀吉が皮肉そうに頬を歪める。自分たちは考えが読めないとよく言われるが秀吉とて大概だ。信長に向ける好意を除けば何を何処まで考えているのか誰にも予測不可能。色々と考えているようでもあれば、意外にもあっさりと終わることもある。果たして今回は彼なりの深謀遠慮か気紛れか、素直に白旗揚げて問い質すことができぬのはこれまたつまらぬ自分たちの意地であろう。
「命令だ。このままでいろ」
 ただただ笑みを浮かべて秀吉が左膝を立てる。視線だけで動きを追えば、膝を脇腹へ乗り上げてきた。薄い膏薬を貼り付けた傷の真上である。気付いているのかと案じたが単なる挑発かも知れず、下手に動けば即座に問い質されそうな雰囲気に半兵衛は敢えて何も感情を浮かべなかった。胸中の総兵衛は自らが行くべきかどうかと迷っていたが、いま変じたならば彼の機嫌を損ねるであろうと留め置く。
 ぐ、と強く。
 青黒く腫れあがった傷の端に秀吉の膝が乗りかかる。徐々に体重をかけられ、身体が反射的に跳ねそうになる。痛覚を遠ざけているとしても肉体的な反応は如何ともし難く、言うことを聞かぬ己が身に舌打ちしそうになった。仮に秀吉が何も知らぬとして、遠慮の欠片もなしに全体重をかけられたならばどうなるか。秀吉とて一応は成人男性であり、大小も鎧も身に着けておらぬともそれなりの重さがあることは彼を背負って歩いてきた半兵衛だからこそ知っている。
 相変わらず秀吉は微笑したままこちらを見下ろし、なればこそ半兵衛も穏やかな笑みを絶やさずにいるのだ。背筋を冷たい汗が流れるとも、呼吸が荒くなるのを必死に堪えているとしても、視線を逸らさないのは誠に単純な。
「顔色が悪いんじゃないか、半兵衛。土気色だ」
「外は雨降らす鉛雲とあらば差し込む光も青みを帯びておりましょう。私の位置では秀吉殿とて随分と暗い表情をしていらっしゃる」
 一貫して不敵な笑みを浮かべていた秀吉が不意に表情を改めた。つまらぬものを見るような蔑んだ眼差し。脇腹の上から膝こそ退けたものの、伸ばした両手で半兵衛の包まった布を取ろうとする。不穏なものを感じ、今度は半兵衛が彼の両手首をとらえた。不機嫌を隠そうともしなくなった秀吉の冷たい視線。
「邪魔をするな」
「と、申されましても………何をなさろうとしているのか分からぬままでは」
「脱げ」
「お断りします。骨と皮ばかりの身体などご覧に入れるようなものではございません」
 怪我の状態を知られたくないのが一番の理由ではあるが、己が身体にある種の劣等感を抱いているのも事実。小柄な秀吉でさえも鍛えたならば鍛えただけの筋肉はつくし病に倒れることも少ない。彼と血を同じくする小一郎も中肉中背ではあるが戦うに苦労することはなく、小六は筋骨隆々の大男だ。幼少時より多くの武士と触れ合う機会があったが、誰もが武士として戦場を駆けるに相応の肉体をしている。それに比して己は何たる様かとすぐに倒れる我が身を嘆くこととて多い。
 何気ない劣等感の表れを秀吉は鼻で笑った。
「男同士で今更だろ。てめえこそ俺の下半身みてるくせに」
「あれは不可抗力で………ましてや実際に目撃したのは総兵衛ではありませんか」
 自分に当てはめないでくださいと苦しい言い訳と共に如何にか秀吉を遠ざけられないかと腕に力を篭めてみる―――無駄な努力だったが。起き上がろうと力を篭めても腹部の傷と腰にかかる秀吉の重みが邪魔をする。嗚呼、全く、腹立たしい。微笑んだまま密やかに眉間に皺寄せて背を流れる汗を無視しながらに蹴り飛ばすは無礼に当たらぬかと相当に無礼なことを思いつつ足を動かした。しかし、試しに跳ね上げた左足は痛み故か絡まる布のためか動きはいつも以上に鈍く、避けられた挙句にあっさりと秀吉に捕まえられた。先程とは少し異なる体勢ながらも相手に左足首を掴まれ、主の顔の真横に脹脛が来ることに怯み、伝わる掌の熱に素直に驚いた。
「秀吉殿」
「なんだ」
「もしかして体調が悪いのですか。妙に熱いではありませんか」
「戯け。俺が熱いんじゃなくてお前が冷え切ってんだよ」
 呆れ声に溜息を混ぜて足首を掴んでいた秀吉の右手がそのまま筋肉の筋を辿る。数ヶ月前、敵の攻撃に巻き込まれた直後は脹脛には醜い朱線が走っていた。普段は気付かずにいる古傷をなぞる様に撫でられ、一際熱い掌の熱に眉間に皺寄せ、秀吉に熱がないというのは嘘ではないかと思い、それ以上に自らの身体が冷え切っているのも事実であろうと重みを増してきた頭で考える。
 伸びてきた左手が着物の襟刳りにかかった。咄嗟に振り払おうとした動きを睨んで留められ、漸く観念して半兵衛は目を閉じた。急激に襲ってきた疲れと眩暈にうっかりと眠り込みそうになる。意識を失うことを恐れて無理矢理に目をこじ開ければ存外真面目な秀吉と視線がかち合った。
 左手のみで部下の包まる布を退け、着物を割った主が動きを止める。視線は、脇腹の辺りで止まっていた。仮初の膏薬が貼られたのみの腹部は見るに耐えぬ色を覗かせているのだろう。小屋が薄暗く、囲炉裏の火の大半も覆い被さる秀吉によって遮られていることに半兵衛は感謝した。日の光のもとで確認したならば己はしばらく城から出ることは愚か、城内を歩くことすら禁じられてしまうであろう。件の白拍子が居た折りは放任であった主も昨今はもとの過保護さと気遣いを取り戻しつつある。秀吉が優しさを失わないのは嬉しくとも、其がために行動を制限され、供さえ侭ならぬことは本意ではなかった。
「………馬鹿が」
「秀吉殿とて、信長公のためならば命とて賭けるでしょう」
「無駄な怪我なんて負ってんじゃねえよ」
 訴えを軽く無視して上司は軍師の首に手を伸ばす。曝け出された首筋から鎖骨、痩せ細った胸板、心臓の上、腹とくだり、伝わる熱に半兵衛はきつく唇を噛み締めた。熱い。怪我の影響か、肌の表面は冷え切っているにも関わらず内側は妙な重い熱を孕み、外側から秀吉の手で熱と重みが伝えられると呻きさえ零れそうになった。瞬きが増える。躊躇う様子のひとつもなしに秀吉の手が怪我の回りをじっくりと辿る。青黒くなっているであろう部分と、もとの色を残しているであろう部分を幾度も行き来する。
「っ………!」
「適当な処置しやがって。これはもっと腫れて来るぞ。下手したら内臓まで」
「………存じて、おります、よ………」
 だからこそ適当な処置で済ませておいたのだとまでは流石に暴露せぬ。されどもそれすらも知られているのだろうと勘付いてもいた。細かな理由は知らぬが秀吉は半兵衛たちが怪我を負うことを嫌う、木下組にとっての損害となるからか、織田信長から「与っている」軍師の身の上ゆえか、偏に仲間思いであるがためかは知らずとも。
 襲ってきた鈍痛に頭を振り、視線を流す。呼吸は正常と言い張るには早く、心臓の鼓動も常より速い。直に触れ合った部分から体調の如何を悟られてしまうのは不本意だ。精一杯の意地を貫いたところで所詮は見抜かれており、見抜かれたくないからこそ怪我を隠していたのにと恨み言すら零れそうになる。
「―――冷たい肌だ」
「ならば、離れてくださいませんか。折角の囲炉裏の火も此れでは遠すぎます。女人の如きやわらかさやぬくもりもない身体に触れていたとてあなたが冷えるばかりです」
「確かに、どうせ触るんなら女の足の方が気持ちいい、やわらかい胸や腹なんて実にそそる。だが、」
 眼前に横たわる青白くも冷え切った骨と皮ばかりの硬い肉体は男を慰めてくれるような乳房や太腿も備わっておらず、肌の手触りは武士よりはましと言えども湿布の隙間から覗く青黒さに萎える。ここぞとばかりに言い募り、左足を上げたままの姿勢は苦しいと暗に訴え、愈々酷くなってきた眩暈に首を左右へ振れば「落ち着け」の一言と同時に左手で額を抑え付けられた。右手は足に、左手は額に、これで胸から腹部を触診されることは無くなったが、強く身を乗り出した彼に下腹部が圧迫され結局少しも楽にはならぬ。
「俺は、お前が女じゃないことぐらい知ってんだ」
「………何方でも存じているのでは………」
「武家の嗜みってのがある。俺は興味がないが、城の連中が時折りてめえに良からぬ視線を送ってるのは知ってるんでな」
 漸く解放された左足に安堵の息を吐く暇もなく、秀吉が身体ごと預けてきた。脇腹は避けながらも心臓付近に頬を寄せられ、首の下で揺れる髪が少々くすぐったい。足元に纏わりつくばかりであった布を引き上げ、ふたりを覆う。無抵抗の意を表すように投げ出されたままだった半兵衛の右手を秀吉が拾い上げ、己が口許に寄せた。かかる息は熱く、触れた部分が僅かな湿り気を帯びる。瞼が重い。身体にかかる体重が妙に心地良い。布団代わり―――と、評するのは聊か失礼ではあろうが、かつて長政のもとで出会ったお市の方が「こどもを抱き締めて眠るのはその重みと相俟って実に心地の良いものなのです」と語っていたことまで思い出す。
 おずおずと自らの指を動かし、彼の頬に触れた。
「私は………秀吉殿の方が心配ですよ」
「俺の外見につられる阿呆がいる訳ないだろ」
「あなたは優しい方ですから、心底惚れ込んだ者がいてもおかしくないでしょう」
「―――半兵衛」
「はい」
「お前、馬鹿だろ」
「………はい」
 否定はいたしませんとぼんやりとした笑みを浮かべれば彼は舌打ちしたようだった。ふたり分の体温でぬくまってきた身体が痛みを遠退け、意識を追いやろうとする。決して、決して眠らぬよう注意していたはずなのに、総兵衛に代わろうとすれば気配を察した秀吉が睨みつけてくるのだから堪らない。
「休め。俺も眠る」
「全員休んでしまったら、もしもの時に―――」
「そん時はそん時だ。むしろ休める時に休んでおかないと身動き取れなくなる」
 秀吉が部下に寄せた気遣いであろう。素直に好意を受け取っておくべきか、胸中の相方に呼びかければ微苦笑が返された。すぐさま表に出ることはせずとも総兵衛の精神は常に起きている。それで如何にかできようと、いま一度、囲炉裏の傍らに置かれた大小の位置を視界に捉え、ゆっくりと半兵衛の意識は浮遊した。
 秀吉の呟きが直に肌を揺らす。
「総兵衛が傷を残したらと考えるだけでも腹立たしいってのに、なんでお前まで………治せ。絶対。傷跡のひとつでも残してたら殴る」
 殴られたら痕が残りそうなのですがと疑問を投げかけることはせず、半兵衛は疲れ果てた左腕を、己に寄り添う秀吉の肩へ回した。彼と自分の距離が近しいのはいまを置いて他にない、非常事態であればこそ彼は文字通り付きっ切りでいてくれるのだと思えば、多少の甘えや欲も湧いてくる。腕に力を篭めたりなどしないから、せめて少しでも近く感じられるようにと。
「おそらく、いずれ小一郎殿か、佐助が………」
「自力で帰ってみせるさ」
 半兵衛の手を力強く握り返してきた彼の言葉に、少しでも長くこうしていたいと感じてくれているのではないかとあらぬ希望を抱き、弱さを纏った己に自嘲しつつも半兵衛は灰色の混沌とした世界に精神を沈めていった。

 

 


 

タイトルは「にびいろ」読みでお願いします。どんより灰色、鼠色。

話としては中途半端なようですがここで終わり〜。助け出されるとこまで書こうかとも思ったんですが

蛇足になりそうだったので省きました!!(力尽きたとも言う;)

 

こんな話ですが、少しでも楽しんでいただければ嬉しく思います〜。

リクエストありがとうございました♪

 

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