「戦え! ボクらのコロクンガー!!」

23.take me to his place

 


 薄暗い廊下では物音ひとつしない。けれど確実に「何か」は存在している。どれだけ息を殺して潜んて

みても監視されている。常ならばそういった、たとえばセンサーとかモニタとかいったものに確実な細工

をしているのに、今日は詰めが甘かったのだろうか。

(うーん、まんまと騙されたーって言うべきなのか?)

 暗闇をひたひたと足音殺して歩きながらある意味で非常に暢気なことを五右衛門は考えていた。背後

に続く加江は銃を手にして緊張の面持ちだ。彼女の態度の方がこの場においては正しいだろう。




 なにせ、彼らはいま、一国の政府官邸内に入り込んでいるのだから。




 政府首脳をかどわかそうというかなり無謀な策は内通者の協力によって成り立っていた。だが、その

内通者以外にもこちらの侵入を察知していた者がいたらしく、それと知らずに忍び込んだ自分たちはま

んまと嵌められてピンチに陥った。

 遅ればせながら制御室に端末からアクセスしてシステムをいじくってはみたものの何処までもつかは

知れたものではない。

「やだなー、オレってば鈍くなったのかしらー」

「やたら落ち着いてるじゃない? もう少し緊張した方がいいんじゃないかしら」

「だって、焦ったところでいいことなんてないし」

 笑いながら五右衛門はまたひとつ、赤外線センサーの仕掛けを外していく。暗視スコープも何もないけ

れど設置されているだろう場所は勘で分かる。長年の経験の賜物だ。まぁ、不法侵入の経験なんてあま

り誉められたモンではないのだが。

 さいわいにして敵は自分たちの抹殺よりも捕獲を優先している。だからこそまだまだ余裕がある。

 とは言え、ひとつ下の階では大勢の警備員が出歩いて必死にふたりを捜索している最中だったりする

のだ―――実は。逃げ回るついでに監視カメラの回路をいじくっておいたからもう少し時間は稼げるは

ずだけど。

(どうしたもんかねぇ)

 考えながらも顔は笑っている。確かに状況は苦しいが、いまはもうひとつの思惑が成功するかどうか

の方が気になっている。加江には内緒のままとある作戦が進行中なのだ。きっと、彼女が怒るか慌てる

か呆れるかするだろう作戦が。

 予定ではそろそろ到着するはずなのだが………。

 ブツブツとよからぬことを呟きながらも手は休まない。出来れば政府高官もしくは首相を攫ってとっとと

ズラかりたいところである。

「ねぇ、五右衛門」

「んー?」

「あなたさっきから妙な笑い方してるわね。また何か企んでるの?」

「加江様にそう見えるんならそうかもねー」

 隠そうともしない五右衛門の開き直り方はいっそ清々しいほどだ。態度全体で「隠し事してマス」と言い

張っているのだから、付き合い慣れた人間はため息をつくしかない。なにせ、こうなったら最後、問い詰

めたところでのらりくらりと言い逃れるばかりで何一つ教えてくれやしないのだから。

 またしても仕掛けをひとつ解除したところでピタリと彼は停止した。

「あ」

「え?」

 背後を警戒していた加江も咄嗟に振り返る。と、廊下の向こう側で黒い影が過ぎった。

 明らかに警備員のひとりである。まさかこんなところで侵入者と鉢合わせするとは思いもしなかったの

だろう。警備員は手にした懐中電灯もそのままに間抜け面を晒している。

 しかし、我に返るのは早かった。左手が慌ててポケット内の非常ベルを探し出す。親指がスイッチにか

けられた。

「やべぇ」

 軽く五右衛門は眉を顰めた。一足飛びで駆けつけられる距離ではない。幾ら彼が忍びの体術を会得し

ているとて空間まで飛び越えられる訳ではないのだから。

「いけない!」

 撃つしかない、と加江が銃口を向けた刹那。




 ゴイ―――ン!………




 突如、大層ニブい音と共に警備員は倒れ伏した。呆気に取られる加江を他所に、こうなると察していた

のか五右衛門はニンマリと笑みを浮かべてまたひとつ、センサーを解除した。

「………ちょっとばかり遅刻な? ギャラから差っ引いとくぞ」

 なんて戯言まで付け足して。

 倒れた警備員の後ろ側、鎮座したソファの裏から登場した人物は金属バット片手に不平を述べる。

「なんやそれ、ヒドいやないかー。ボクかて頑張ったんやで!」

 加江の目が見開かれた。

 直後、投げつけられた激しい非難の眼差しを五右衛門は口笛吹きながら受け流す。センサーが役立

たずになった廊下を横切り助っ人に手を差し出した。




「遠路はるばるごくろーさん♪ 助かったぜ、竹千代」

「何ゆーてんねん。ボクと五右衛門兄ちゃんの仲やないかv」




 そして防衛隊最年少のお子様は五右衛門と笑顔で握手を交わした。

 慌てたのは加江である。蚊帳の外に置かれていた彼女にとっては寝耳に水もいいところだ。危険だか

らと日本においてきたはずの竹千代が、何故、いま、どうして、こんなところにいるのだろうか。

「竹千代! あなた、どうして!」

「久しぶりやなー、加江ねえちゃんv 相変わらず美人でボク嬉しいわー」

「お世辞なんて言ってないで早く帰りなさい。此処は子供が来ていい場所じゃないわ」

 わたしと五右衛門はまだ任務があるからひとりでちゃんと帰るのよ、と竹千代の背を押す。苦笑しつつ

名指しされた人間がその動きを片手で制した。

「まーまー、慌てなさんなって。悪いけど今回はオレの補佐としてこの坊ちゃんを呼んでるから、加江様

に帰還命令を下せる権利はないんだぜ?」

「馬鹿を言わないで。一体なにを考えてるの」

「そぉ? 妥当な考えだと思うけど? 実働部隊は派遣に充てられないし、師匠たち主だった面子は他

に潜入中だし、フリーな人材を捜したらコイツぐらいしかいなかったんだよなー」

 ―――との言い分は半分正解で、半分嘘である。

 人材不足は確かだが殊更に竹千代を選ぶ必要はなかった。近隣諸国に潜伏中の防衛隊の誰かに手

助けを依頼した方が迅速、かつ確実であったろう。しかし本来、五右衛門は助太刀など求めない人間だ

し、そもそも竹千代以外を招く気はなかったのだから追求することすら虚しい。

 秘められた魂胆なんて今更だ。

 いい加減ギスギスした人間関係は終わらせてほしいのである。

「第一、帰らせるにしても此処まで侵入したとあっちゃあ別行動とらせる方が危ないと思うけど?」

「………!」

 漸う彼の意図に気付いた加江が悔しそうに歯噛みする。きつく睨みつけられて、ああ、怖い怖い、と五

右衛門は嘯いた。

 いずれにせよ、脱出は急務である。首相を捕らえることも急務であった。

 普通に考えれば侵入者があった邸内からは疾うに移動しているだろう。が、軍部の反乱も明らかな現

状において身の安全を確保しやすいのは官邸より他になく、従って、首相は未だ此処に残っているだろ

うというのが三人の共通した見解だった。

 不貞腐れてしまった加江を引き連れて階段を下る。首相の隠れ場所なら自分が知っている、と竹千代

が宣言したのでそのお言葉に従ってみることにした。

「居場所を掴んでおくなんて、やるじゃん」

「当たり前や! ………と言いたいところなんやけどなー」

「なんだ? 歯切れ悪いな」

「ひとりでやったんなら誇れるんやけどなんつーかなー、そのー、えーっとまあ………」

 小声で話しているために相手の言葉が途切れがちになる。鍛えられた五右衛門の聴力でようやっと聞

き取れるか否かの音量で竹千代は何やら呟いている。はて一体どうしたのやらと彼は首を傾げた。








 首相がいるのは一番奥まった地下の一室らしい。心理的にそこが最も落ち着くのだろう。見回り中の

警備員を手刀で気絶させ、銃の柄尻で気絶させ、金属バットで気絶させ―――まぁともかく致命傷には

ならない程度の外傷を与えて時間を稼いだ。五右衛門がシステムに組み込ませたのは制御室に映し出

される映像を一定時間ループさせるプログラムだ。未だ警備員が無事でいるように思わせながら、実際

には昏倒しているという寸法だ。同時に、邸内の照明も最低限のものに落としてある。

 だが、そんな付け焼刃なプログラムが永久に続いてくれる筈もなく、タイムリミットが近づいていた。

 あと少しで到着、という地点で急に五右衛門は足を止めた。背後にふたりを庇う。

「ど………どうしたの?」

「―――誰かいる」

 唇に人差し指を当てて目配せする。慌てて加江と竹千代は口を噤んだ。彼らにとって目の前の薄暗い

廊下はただの廊下であり、何の変化もないように思えるのだが………。

 五右衛門は片手にくないを構えて慎重に歩を進めた。

 と、間もなく。

「………?」

 訝しげな表情で再び歩を止めた。

 何か見つけたのかと思ったが、そのまま無言を通すものだから、後ろのふたりが騒ぎ出す。

「ちょっと………どうしたのよ」

「変なものでも見つかったんかー?」

 五右衛門の肩越しに覗き込む。普段なら軽くあしらいそうな相手がいまはひたすらに前を見つめたま

ま停止していて、いよいよこれはおかしいぞと、ふたり揃って彼の両脇から顔を突き出した。

 そして。




「―――げっ」

「………!」




 竹千代は何故か頬を引き攣らせ、加江は警戒心を露にした。

 少し離れた場所に、見知らぬ少年が佇んでいたからである。

 帽子を目深に被っているため表情までは分からない。ましてや、この薄暗さ。僅かに残された照明の

おかげでかろうじて彼が「少年」に分類される世代だろうことが見て取れる。だらしないTシャツと破けた

ジーパンを纏った姿は今時のワカモノそのものだ。もしや政府高官の身内かとも考えたが、少年が手に

しているものを見た瞬間にそれは否定された。




 彼が、手にした、「もの」。

 ―――今回のターゲットである首相が、首根っこ掴んで引きずられていた。




 僅かに胸が上下していることからまだ生きているのだと知れる。だが、何か衝撃を与えられたらしい肉

体は弛緩し、響く呼吸は弱々しかった。

 果たしてこれは敵か味方なのかと五右衛門が戸惑ったのは仕方ないことかもしれない。長く感じられ

たが実際に彼が逡巡していたのはほんの数秒にも満たなかったろう。

 改めて武器を構え直した五右衛門が問いを発する。

「誰だ? こんなところでそんなニンゲン持ち歩いてんだからマトモな客じゃあないとは思うけど?」

 もしかしなくても同業者? と問いを重ねる彼の服の裾を竹千代がおずおずと引っ張った。

「竹千代、いま取り込み中だから」

「せやかて加江姉ちゃん………!」

 幼い子を嗜める加江の口調に竹千代が文句を垂れる。邪魔をしたいんじゃないんだと全身で物語り。




「―――あの兄ちゃん、ボクがここに侵入するのを手伝ってくれたんやで!?」




「………は?」

 五右衛門と加江の科白が被った。

 敵から目を離さないのが信条の五右衛門でさえ一瞬、背後のお子様を振り返った。

 ―――いま、なんつった?

「だから、どー侵入したろかって迷ってるボクの真ん前で門のプログラム強制排除して突入した兄ちゃん

や、ゆーてんのやっっ」

 若干すねた口調で竹千代が言い募る。

 つまり彼は、眼前の少年の特攻劇に追従しただけと言うことか。

「お前………もーちょっと警戒心っつーかなんつーか」

 あるいは出会った直後に教えといてくれれば、と詰ってみれば。

「言う暇なかったやん。それに、あん時は合流することしか考えとらんかったし」

 と、悪びれもせずに言い返される。ああ、これが悲しき「オコサマの思考」とゆーヤツなのだろうか。背

後で加江が深いため息をついている。五右衛門としては此処で竹千代に名誉挽回汚名返上の好機を

与えてやろうと思っていたのだが。

 ―――もしかしたら、逆効果だったかもしんない。

「あのさぁ、もしかして首相の居場所を知ってたのも」

「あの兄ちゃんが呟いてたからや。ちゃんと聞いとくべきことは聞いてるやろ?」

 自慢していいところなのかももう分かりまセン。

 少年は相変わらず黙ったままじっとこちらを見つめている。さて、これを相手に交渉するのはかなり難

しそうだと五右衛門が腹を決めた時。




 ウゥゥゥゥ―――ッッ!!




「えっ!?」

「しまった、プログラムが切れたか!」

 鳴り響いた警報に舌打ちする。邸内のシステムに介入させたプログラムが解除されたらしい。各所で

警備員が倒されているのに気付いた監視側が警報を発したのだろう。

 いますぐ首相を、何ならこの少年もプラスして掻っ攫わなければ―――! と前を見据えた五右衛門

の正面で。

 信じ難いことが起こった。

 少年が、薄っすらと、笑って。




 腕を―――壁にめり込ませた。




「っ!」

 バギィッ! と鈍い音を立てて壁に亀裂が走る。埋め込まれた少年の左腕から毒々しくも太いコードが

波打って壁を侵蝕する。

 突如、警報が鳴り止んだ。復旧しつつあった照明がまた薄暗く閉ざされる。邸内のそこかしこから悲鳴

が響く。何かを倒す音、誰かが倒れる音、銃を放つ音、弾かれる音、怒号、絶叫、そして。

 ―――無音。

 何が起きたのかは分からない。

 だが、眼前の少年が『何か』をしたことは明らかだった。

 少年が腕を壁から引き抜く。腕に絡み付いていたコード―――か、血管、のようなものはシュルシュル

と音を立てながら彼の体内に『収納』された。腕が入り込んでいた壁の傷跡さえも『修復』される。

 いまや加江と竹千代は驚愕と恐れも露に身を強張らせていた。竹千代は加江の足元にしがみ付き、

加江は竹千代を庇うように銃口を少年へ向けている。

 そんなふたりの敵意と恐怖に満ちた視線を五右衛門は己の身体で遮った。彼女らの反応は至極当然

だが、眼前の少年から感じるのは害意ではないのだ。彼は自身の直感を信じていた。

 右手に大の男を引きずったまま少年が一歩前に出る。

「―――プログラムが甘い」

 嘲りを含んだ声で呟いた。

「システム介入時のスペル入力に三箇所のミス。発動に至る流れに無駄な回路を経由。だからこんなに

早く解除される」

「な………」

 貶されたこと以前に告げられた内容に驚く。確かに、急ぐあまり三箇所ほど入力をミスした記憶があっ

たからだ。無駄な回路というのが何処を示しているのかまでは分からなかったけれど。

 そして、また。

「あんなワケわからん行動だけで邸内のシステムに侵入したのか? 腕つっこんだだけだろ? アクセ

スするための機材なんて何処にも―――」

 言いながら気がついた。それを可能にする方法に。

 だが、その手法は決して「合法」なものではなかったし、実現されているなんて話は聞いたこともない。

あの竹中教授とて研究はしているだろうが未だ製品化はしていないはずだ。それに伴うリスク故に。

 呻きがもれた。

「バイオチップか………!? バイオPCですら使用の是非を問われてるってのにっ」

「研究者間の倫理なんてオレには関係ないね」

 帽子の影で少年が笑う。否定しないということは、つまり、肯定ということだろう。

 バイオPCは機械に有機媒体を組み込んだ現在研究が進められている新型CPUのひとつである。まる

でそれ自身が生きているかの如く周辺機器と『一体化』して利便性を高めてくれるのだ。教授も小型タイ

プのものを携帯していたと思う。そんなバイオPCを細分化したのがバイオチップで―――これを用いるこ

とで科学技術は飛躍的に進歩してきた。

 と、同時に危険性も指摘されている。『何』とでも融合しうるために、『人間』とすら融合してしまう可能

性があった。実験では真実、マウスがバイオチップに取り込まれて『切り分ける』ことが出来なくなってし

まった。本当に人間と同化し処理能力を向上してくれるのであれば様々な分野に役立てられるとしても

分離できなければ意味がない。脳髄にかかる負担も計り知れない。

 故に、人体での実践は禁止されている。

 だが、まさか、この少年は。

「考察はどうでもいい。こちらの要求はひとつだけだよ、黒猫」

「………」

 五右衛門は返事をしなかった。するまでもないと思ったからだ。

 首を傾げるばかりの加江と竹千代にはすまないがコトの展開が少々異質な方向へ向かいつつあるよ

うだ。政府高官の回収を目的としていたのに思わぬところで思わぬ人物に出会ってしまった。

 バイオチップを自らの体内に埋め込む勇気と無謀。

 それを制御してみせるだけのスペルスキルやプログラミング能力。

 何よりも―――確かに、聞き覚えのある、この、声。

(………初めて聞いた時、オレは)

 なんてガラの悪いヤツなんだ、とちょっとショックを受けたんだっけ。

「オレは<ヤツ>に面会の約束を取り付けた。が、音沙汰ないから仕方なくこっちから尋ねてやることに

したのさ」

 ヤツが忙しかろうがいまが人類存亡の危機だろうが関係ないんだよ、と吐き捨てて。

 代わりに『これ』をやろう、土産にするがいいさと、右手の人物を高々と掲げて。

 要求を突きつけた。




「オレを<スペルマスター>のもとへ案内するがいい―――この、<ロード・オブ・ザ・ナイツ>を」




 少年の笑みに合わせるように五右衛門も笑みを深くした。








「―――本日、皆さんにお集まり頂いたのは他でもありません」

 半壊した防衛隊の基地で復帰したばかりの竹中教授が切り出す。傍らには腕を組んだままの小六が

佇み、しかし、そんな彼の側に常ならば控えているはずの五右衛門の姿は見受けられない。

「防衛隊は大きな痛手を受けました。だが、引き下がることはない。先の司令の宣誓通り―――こちら

から仕掛ける。たとえ後世において愚行と謗られようとも」

 基地内部の崩れかけた首都が望める一室。

 集まった者たちはみな緊張の面持ちをしていた。実働部隊たる信長も、犬千代も、退院したばかりの

日吉も。

 オペレーターであるヒナタやヒカゲ。一益。任務を果たして戻ってきた黒田、万千代に勝三郎も。

「敵基地に全戦力を『転移』して戦う。実働部隊も、コロクンガーも、他の武器や主だった戦闘員たちも」

「どうやってだ?」

 尤もな疑問を信長が浮かべれば教授は少しばかり思案深げに頷いた。

「そのための装置をいま織田や上杉、武田の協力のもとで製作中です。数日中には完成するでしょう」

「転移に対する危険は? 確実性はあるのか」

「出来る限り100%に近づける―――としか言えませんね、いまは。情けないですけれど」

 答える教授の顔にも疲労が濃い。

 彼は転移装置の開発を寝る間も惜しんで続けていると聞く。幾ら彼が理論を組み立てようと、計算を繰

り返そうと、迫り来る時間だけは如何ともし難い。敵が総攻撃をかけてくる可能性を考慮した場合、理論

が先が実践が先かという難しい問題になってくる。

 そこを何とか調整しながら進めているのだ。

 実働部隊の指揮を執る者としては確実性を求めたいところだが、同時に、ある程度の賭けも必要だと

知っている。故に彼もあまり食い下がることなく比較的あっさりと矛先を納めた。

「なら………任せた」

「はい」

 微かに教授が口元に笑みを刻んだ。

 司令が腕を解き、皆を見渡して、厳かに宣言する。

「この場にいない奴らもいるが、思いは一緒だ。迷っている暇はないぞ。覚悟を決めろ!」

「はい!!」

 それぞれがそれぞれの決意を胸に秘めて唱和した。

 ある者は家族や友人を護るために、ある者は捕らわれた身内を助けるために、ある者は自身の過去

に決着をつけるために。

 深く頷き返した小六が拳を握り締めた。




「いよいよ―――最終決戦だ」




 そして。

 最後の歯車が回りだす。

 

22 ←    → 24


話が進んだような進んでないような………(汗)。本当はもうワンシーン入れる予定だったのですが、

なんか微妙な長さだったので取り合えず次に回してみました。

 

ゴエと加江様が未だ海外にいたので回収大作戦(苦笑)。ゴエが竹千代を呼んだのは、単に早めに加江と

再会させないと色々こじれちゃいそーだな、と思ったからです。喧嘩した後って会わない時間が長いほど

仲直りしにくくなっちゃうじゃないですか? 見事な登場シーンで竹千代が男を上げた………かと思いきや、

侵入の時すでに他人の手を借りておりました☆ さすがにちゃっかりしてますネ(苦笑)。

 

バイオチップ云々の話は本筋に関係ないのでかなり説明を省いてあります。ナノテクノロジーの集合がどーとか、

ヒトと機械の融合をもたらすとか、処理能力の向上により大脳にかかる負担が並みじゃないとか、

他にも色々倫理的問題があるんだろーなとお考え頂ければ充分ですv(説明するのがメンドイだけとも言う)

 

<ロード>は仮想現実空間における黒猫の正体がゴエだと知っています。彼が<スペルマスター>と知り合い

だろうことも知っています。ほら、いつぞやの防衛隊基地へのハッキング事件の時、<スペルマスター>の近くに

ゴエがいたから(直接の会話はなかったし触れてもいなかったんだけど)。

彼が<スペルマスター>に会おうとするのは総兵衛と交わした公約に則っています。

管理人も忘れかけてたよ、その話。 ← オイ。

 

防衛隊が結団式を行いましたがややメンバーが足りてませんね。もっかい追加でやるかもしれません。

教授と司令が裏であることを画策しています。後で日吉を呼び出して断りを入れる予定です。

どんな作戦なのかは、待て次回♪

 

BACK   TOP

 

 

 

 


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理