※リクエストのお題:パラレル設定で普段『誰にも負ける気がしねぇ』な腹黒ブルーが受の、明るい話。

※―――に、しようと思ったら何故かソルジャー・シンが降臨したため微妙に薄暗いことに(………)

※でも、結局は当方の書く作品なので表現はぬるいのであった(苦笑)

 

 

 

「何か言うことはありますか? ブルー」
「………特にないよ、ジョミー」
 灯りのない室内で床に押し倒された体勢で、ああ、困ったことになったなあとブルーは考えた。
 目の前のにっこりと微笑むジョミー。
 が、常になく怒っていることはピリピリとした空気からも分かるが、自分の実力よりも彼の実力が上であるためか、本心から怒ったジョミーが何を考えているのかブルーは読み取れた験しがない。
 ただ、今回は見当がついている。
 キースと食事に出かけたことがバレたのだ。
 それだけだ。
 そして、それを『それだけ』のこととして片付けられないのがジョミーなのだ。
 僕が愛しく感じているのは君だけなのに何をそんなに不安になるの? と戸惑っても、ヤキモチを妬いてくれてるのかなと思うと不謹慎にも嬉しかったし、怒りに燃える彼の瞳は綺麗だなあと単純に感心したりもした。
 ―――が。
 やはり。
 デートの誘いに来たその足で押し倒されている現状は少々頂けない。
「言い訳ぐらいしたらどうです。偶然店で出会ったんだとか、賭けに負けて奢る羽目になったんだとか」
「言い訳など出来ないよ。僕が彼を誘ったのは事実だし―――誘った理由を君に告げたくはない」
 これでは疑うなと言うのがおかしな話だ。それが証拠に一層にジョミーの笑みは深くなり、ほどける様子を見せない。
 つまるところブルーが彼に真実を打ち明けない理由は「必死こいて店を探していた事実がなんとなく照れ臭いから」という感情に起因していて、そこに「胡散臭いことにジョミーを巻き込みたくない」との庇護欲や、「隠れてコソコソしてしまって実に後ろめたい」という罪悪感が加わってくる訳で。
 ………話せるはず、ないじゃないか。
 そんなところをこそ察してくれと我侭にも不満を抱いたところで彼の読心術が向上するはずもなく。
 結果、自分たちはしなくてもいい喧嘩をすることになっている。
 確かにこれはキースに指摘された通り自分の悪い癖なのだろうと視線を逸らして考えると「誰のことを考えてるんですか」と睨まれた。すかさずキースのことですか、と続けられて、勘がいいのか嫉妬深いのか分からないなあと場違いにも微笑ましくなった。
 宥めるように両肩を押さえ込んでいる彼の腕を軽く叩いてみる。
「―――とりあえず、電気を点けよう。君の顔が見えない」
「イヤです」
「………僕は君を食事に誘いに来たのであって喧嘩をしに来た訳ではないのだが」
「イヤです。その店だってキースと下見をした後なんでしょ。二番煎じなんて真っ平御免です」
「だから―――」
 流石にこれは怒った方がいいのかな、と。
 口調を荒げそうになってすぐやめた。言い争いなんてしたくない。
「前にも言ったけど、君とキースの味覚はよく似てるんだ。僕は君と一緒に美味しい食事をしたいんだ。不味い食事ならキースとで充分だ」
「あなたが一緒なら不味い食事でも文句も言わずに食べますよ」
「それじゃあ僕が不愉快だ」
「我侭ですね」
「今更?」
 どちらに非があるのかは分かっている。
 ジョミーは悪くない。
 彼が好きだと言いながらも、何だかんだとキースの手助けをしてしまう自分がいけないのだろう。
 かと言って、かつてはともかく『いま』のキースが死に急ぐのを黙って見ているのは『いま』の友人であるところのブルーには出来ないことだし、むかしの自分とてそう思うだろう。
 一番いいのはジョミーとキースが仲良くなってくれることなのだが―――それは余程のことがない限り無理だろうと半ば諦めてもいる。「単なる顔見知り」から「知り合い」に格上げされただけでも奇跡的展開だったのだから。
 肩をきつく握られて流石に眉をしかめる。
 ジョミーが視線を細めた。
「………いい加減にしないと。手足を折って何処かに閉じ込めますよ」
「何処に?」
「何処かに。誰も辿り着けない場所に」
「それは―――」
 逸らしていた視線を戻して、正面から相手の瞳を覗き込む。
 緑色の瞳に映り込む己がさほど取り乱していないことに安心した。にっこりと笑う。

「それは、いいかもしれないね」

「―――」
 急に。
 ジョミーの視線がやわらかになった。
「折られる瞬間は痛いだろうけど、きちんと手当てもしてくれるんだろう? 手足が動かなくてもサイオンは使えるよね。でも、どうせだから食事も着替えも何もかも君に任せてしまおうか」
「………ブルー」
「なんだい、ジョミー」
 両肩にかけられていた腕の力が緩んだ。
「本気ですか」
「君が望むなら」
 迷う必要はない。
 真実、彼がそれを望むなら、いつだってすべてを捧げる覚悟は出来ている。捧げられた彼にとっては負担になるかもしれない、それだけを懸念するとしても。

「誰とも会えないんですよ」
「君には会える」
「動けないんですよ」
「君が助けてくれる」
「喉だって潰すかもしれない」
「君の声は聞こえる。君には僕の声が聞こえる」

 なんの不満があるんだい? と笑いかければ。両肩が解放され、代わりにきつく抱き締められた。
 声が震えている。
「………じゃ、ないですか………っ!!」
「ジョミー?」
「僕に………なこと―――できる、わけ………!!」
「―――」
 ああ、また。
 悲しませてしまったのかと、ブルーは切なげに眉を寄せた。
 何故だろう。彼には幸せでいてほしいのに、笑っていてほしいのに、上手く行かないことの方が多い。
 ごめんね、ジョミー、と呟いたところで返されるのは頑是無い頷きだけだ。ごめん、本当にごめん、君はこんなにも素直なのに僕ときたら。
(―――たぶん未だに、ひとを愛するとか、大切にするとか、そういったあたたかい感情をどうやって表せばいいのか分からないんだ)
 友人に対する気持ちと、君に対する気持ちと。
 確かに違うはずなのにどう表現すればいいのかが分かっていない。伝える方法を理解していない。だからこうして無駄に泣かせてしまうし、怒らせてしまうし、傷つけてしまう。

 本当にごめんね。
 でも、―――離れたら生きていけないと思うぐらいには。
 好きだよ。

 繰り返し、繰り返し、言葉とサイオンでその感情だけを伝えれば、肩口に置かれた彼の目元から涙が滲み出るのを感じた。
 いつだって自分は彼に許されている。癒されている。慰められている。それは確かに、自分にとってはこの上もない幸福なのだろうけれど。
 そんな彼に果たして自分は同じだけのものを返せているのだろうかと―――『再会』してから幾度目になるか分からない疑問を思考の片隅に浮かばせた。
 彼の頭を抱き寄せる傍ら、上着のポケットから懐中時計を取り出して。

 


インマイライフ・インユアライフ


 


未だ、それが時を刻み続けていることを確認した。

 

 


 

下手したら永久に口喧嘩しそうなので強制的に打ち切りました(待て)

このふたりも文句を言い合えるだけ進歩したんだよ………と思いたい。思えたらいいな(あれ?)

何はともあれ、頑張れジョミー!

 

こんな感じになっちゃいましたが、少しでも楽しんでいただければ幸いですー。

 

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