どれだけの時間を共に過ごせたか、覚えていますか。










 彼は自分のことを生まれた時から見守ってくれていたらしい。
 僕の誕生をそれはそれは喜んでいたと、フィシスやハーレイやリオから、折りにつけ聞かされている。
 けれどもそれは『僕』の記憶にはないから実感として捕らえることがない。
 確かに遠く思い出を辿れば懐かしい気配を感じ取ることはあった。

 だが、それが果たして彼だったかと尋ねられればあまりにも曖昧な輪郭しか残されておらず。




 この船に訪れて初めて直に言葉を交わし、すぐに別れ、僅かな触れ合いの後にあなたはすぐに眠りについて。
 彼の想いを伝えられた。願いを受け取った。

 生きて欲しい、と。

 思った。

 どんな夢を見ているのか、何を考えているのか、言葉で交し合うことが出来たのは本当に僅かな間にしか過ぎなかった。

 ―――僕が生まれてからあなたと出会うまでにかかった14年間。

 出会って以降、それ以上の時間を共に過ごしてきたはずなのに。

 交わした言葉も、想いも、何一つ足りていないと感じるのは僕だけだろうか。




 地球を抱く女神に情愛を。

 船を導く戦友に信頼を。

 聞き分けのない仲間たちにも親愛を。




 ならば、―――僕には何が残される。

 あなたに焦がれてあなたに近付きたくてあなたの願いを叶えたくて。
 あなたは最期の瞬間まで笑顔と言葉のみを遺して逝った。
 意志を、誇りを、想いを、願いを受け取った。

 ―――受け取った、けれ、ど。

 本当は。

 もっと。

 伝えたい言葉があった、相談したいことがあった、喩えあなたが僕のことを何とも想っていなくとも、せめてあなたに残された時間の全てを与えて欲しかった。

 なのに、最期の瞬間まであなたの時間は『他』のもの全てに費やされた。

 ―――伝えたかった想いの全ては。

 理解したいと願いながらも理解する暇も与えてくれずに旅立ってしまったあなたに抱く想いは。




 憧れと渇望と懺悔と愛惜と慕情と。

 いつまでも終わらない絶望と焦慮。




 喩え周囲がどれほどに求めたところできっとあなたは。

 


062.唯ひとりだけに与えられた世界を、唯ひとりだけで生きている


 


(もはや永遠に理解することの出来ないあなたの影を追って僕は『僕』を無くしていくのだ)

 

※WEB拍手再録


 

タイトルが「恨みます」しか浮かばなくてどーしようかと思いました(………)

余所様の感想で「アニメ版Wソルジャーって実は共に過ごした時間が物凄く少なくね?」との意見を見かけ、

「理解しあう時間がなかったなら恨む可能性もあるよな」と思ったら何故かこんなシロモノに。

マジでなんでやねーん。

 

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