最後に残されたものは「希望」だった。
そう、それは。
誰にとっても確かな「希望」だった―――。
遠くで建物が崩れ行く音が聞こえる。 目の前は薄い暗闇に閉ざされている。 いや、違う。おそらくはもう外界の様子を感じ取っているだけで、実際には『聴』こえておらず、『視』えてさえもいないのだ。 思い残したことは何もない。 死はもっと冷たく、激しく、逃れようのない恐怖を運んでくるものばかりだと思っていた。 ふわふわと水の中を漂っているような感覚。 ああ、嗚呼。 もうすぐこの『こころ』はこの場から離れ行くのだろう。 そうやって精神を解き放てば、思い出すのはいつも、いつも、運命を運んできたひとのこと。 あなたとの約束を守れましたか。 少しばかりの気懸かりがない訳ではない。 それでも、こんなにもこころが凪いでいるのは―――。 梢から覗く木漏れ日のごとく。 意志を継ぐ者がいる。 想いを伝えてくれる者がいる。 それだけで、それだけが、どれほどの救いとなることか。 身体が消えても、意識が遠くなっても、何も感じられなくなっても。 想いを継いでくれる誰かがいるのなら。 僕が意志を託した者(導いてくれる) かつて自分がブルーから受け継いだものを彼もまた感じてくれているはずだ。彼がいるから、彼が想いを継いでくれるから、そう信じられるから。 このこころは、こんなにも満たされている。 それでも、尚―――絶えることなく。 ひどく、―――眠くて。 研ぎ澄まされていたはずの感覚も遠く、いまは、懐かしい母のかいなに抱かれているかの如く。 親しき友の声が傍らで響くかの如く。 理解しあえた戦友と共に歩むかの如く。 後を託した者たちに見守られながら、先を行く、先を示す、切なくも恋しいあの影へと―――。 目の前に浮かんだ光景にジョミーは微笑んだ。 |
いつかの風景
あなたの傷が癒えるまで あなたが再び我々を受け入れてくれる日まで 遠く待つとも想いは尽きずに |
※WEB拍手再録
私的24話お疲れ様話。
「ブルーがお迎えに来てくれるよ」エンドは余所様でたくさん読めるだろうからと
敢えてブルーを登場させないマイ・クオリティ(どんな意地ですか)
勢いだけで書いたんで細部は大目に見てください………。