008.英雄王の死
汽車は車体を揺らしカタコトと定期的な音を響かせながら首都へ向かっている。 窓を開けて風を受けながら目を細めた。なびく金色の髪が首に纏わりつき、ともすれば視界を遮りがちなそれに構う素振りもなく一心に外の景色を眺める。 今日ばかりは身につけた銀時計が重すぎた。 向かい側の座席に腰掛けた鎧姿の弟がそっと呼びかける。 「………兄さん。なに考えてるの?」 「―――大したことじゃねぇよ」 いまはもう後にした小さな町のこと。 ―――だが。 戦時下において錬金術が使える事実を隠していたことも。 自身の起こした炎に焼かれ崩折れていく影に思わず叫んでいた。 喪われた妻を取り戻そうとした彼と同様に、愚かしく、未練たらしく、滑稽なほどに捜しあぐねている。 最期の瞬間、彼は笑っていた。 『英雄』は愚かにも蝋でつくった羽根を背に、太陽を目指していずれ地に堕ちる。 ―――私のしたことと、君たちがやろうとしたことの、一体どこが違うのかと。 バンッ!! 「ざけんな………っ」 「………すべてを取り戻す」 決意を宿した黄金色の瞳が燃える。真向かいに座す弟が頷き返す。 止まらない―――止まるわけには、いかない。 改めて座り直した椅子の元で左足が軋む。開ききっていた窓を少しだけ下ろして、未だ風は受けながらも軽く唇を噛み締めた。 神の御業に手を染めて無いもの強請りをする『子供』ばかり。 停車駅が近づいて人々のさざめきが増す。行き交う和やかな別れの挨拶と再会の喜びの声がひたひたと耳元に届いた。 |
※WEB拍手再録
本当はもーちょい色々設定とか考えてたんですが、ここで終わらせといた方がキリがいい
気がするのでこのまま放置します☆(………)
またぞろどっかで人体練成に手を出しちゃった「英雄」と呼ばれてた退役軍人がいたとでも
お考えくださいナ。 ← すっげぇいい加減だな、おい。
作中に出てくる『英雄』はすべてもとネタがあります〜。いずれもギリシャ神話から持ってきたつもりですが、
実は結構記憶が曖昧なんすよねー、はっはっはv(確認しろヨ)