090.ゆずれないもの


 

 赤い魔本の表紙を撫ぜて微かに清麿はため息をついた。このところの連戦でさすがに疲れ気味だ。残っている魔物たちのレベルが上がっているから、尚更。
 それでも戦いから身を引こうなどとは思わない。
 優しい王様になるのだと涙した彼のために死力を尽くそう。

 もう二度と、彼が泣かずにすむように。
 もう二度と、戦いたくない者が争いに駆り出されないように。

 自分が傷つくたびにガッシュはひどくつらそうな顔をするけれど、清麿からすればいつだってガッシュの方が余程ボロボロじゃないかと思う。回復力の優れた魔物だからってそれはないだろうと言うぐらいにいつだって傷だらけで、その大半は生身の人間である己を庇った故のものだから歯痒くてならない。

 だからせめて、己は死力を尽くそう。
 彼のために戦えることは己にとっての勲章なのだから。




 勉強机に座って何やら考え込んでいるらしいパートナーの背中を眠ったフリをしながら盗み見る。
 清麿は頭がイイ。
 並大抵のことでは挫けないし勝利に導くための策を授けてくれるし曲がったコトは大嫌いだ。
 それでも、と、ガッシュは思った。

 彼が傷つく度に己の無力さが悔やまれてならないから、
 彼にどんなに諭されても彼を庇うコトはやめられないから、
 彼がこの手を引いて背中を押して先を示してくれるから。

 逃げられないし逃げる気なんてもとからないのだけれど、
 でも、たぶん、
 清麿の命と魔界の王とを天秤にかけられたらどうしたって見捨てられないんだろうなと思う。
「オレを捨てていけ」と彼はいつだって当然のように言うけれど、そんなこと言われたら絶対に見捨てられない。
 その願いどおり前に向かって突き進んだとしても必ずどこかで振り向くだろう。彼の存在を確認し、彼の手をとって共に歩き出すために。

 だって、きっと。

「彼」の願う「優しい王様」はどんなモノも見捨てない存在のはずだから。

 

 


 

原作は立ち読みばっかで通して読んだことがありません☆ ← ナメてんのか、われ。

 

これを書いた丁度その頃に本誌で清麿が生死の境を彷徨っていて掲載を見合わせた作品です(苦笑)。

だっていきなり本誌で「本の持ち主が死んだなら………」とか想定しだすんだもんヨ。

どうしようかと思ったですヨ。

 

この作品は本誌+アニメで内容を乗り切っています。故にところどころ辻褄あってないかも

しれませんが、その辺はどうかご容赦くださいねv

ってゆーか、100のお題の作品はほとんどがそんな感じだ………(汗)。

 

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