――― 一義威令(後編) ―――


 

 通り過ぎた道の脇には小部屋が設えてあって、どんなものかと興味本位で覗き込んで拷問部屋だったので驚いて、牢屋だったので呆れ返って、寝室だったので放っといて。灯される明かりの下を歩みながら藤吉郎はふとした疑問を口にする。
「そういえばさあ、例の崩落だけど」
「ん?」
「本当に単なる偶然だったのかな。ほら、直前に妙な音がしてただろ?」
 段々近づいてきてたし、と付け足す。
「何かが俺たちのところに近づいてきてて、結果、落盤したんならそれって事故なのかな、それとも向こうの魂胆なのかな」
「何かがいるって決まった訳でもないけどな」
 前方に注意しながら進む五右衛門は実は最初からその可能性に気付いていた。
 と、いうよりもその気配を感じたからこそ早急な撤退を要請したのである。
 初めに坑道を調査した時から妙な気配を察知してはいた、しかしそれは前段階では至って無害だったのだ。故に信長や藤吉郎が中に入るのを止めはしなかったのだが―――いまとしてはちょっと無防備に過ぎたかと忍びは反省している。
 無関係に思えた存在が突如、方向を変えてこちらへ突き進んでくる気配が感じられた。だから崩落も落盤も絶対にそれが原因で。
 事実、五右衛門は崩れ行く砂塵の向こう側に何者かの視線を捕らえていた。
 黒く―――巨大な―――身の丈が通常の倍はある―――影を。
 確信の持てない状態で語るのは憚られたため五右衛門は当たり障りのない答えを返しておいた。
「面倒に巻き込まれないに越したことはないからな。とっとと殿様を探し出して地上に出ようぜ―――ん?」
 道の先が大きく開けているとわかって眉を顰めた。もしや地上かと思いつつ、にしては鈍い明かりだと否定し、背後に友を庇いながら足を踏み出した。
「へぇ………!」
「こりゃー、すげぇや」
 揃って歓声を上げた。
 見上げるほどに巨大な空洞。何だか天回の配下と闘った場所に似ているな、と藤吉郎は思った。きちんと地面に敷石がひかれて明かりだってついている。壁は頑丈な柱で支えられ、所々に意匠がこらされている。何よりも驚くべきことは見たことのない代物がゴマンと置かれていたことだ。鈍く光るそれらが武器だと見当はつく、けれども、古今東西の製品を集めたらしいそれらは彼らに目新しく移った。
 大きく湾曲した大陸風の刀や弓、細くしなるレイピア、重火器類。山と詰まれた内のひとつに近づいて品定めをする。
「なんだろー、これ。穴が一杯ある。弾薬かなぁ………わざと連続で繋いである」
「ここの仕掛けを外すと取り込むみてーだな。火縄銃を束ねたみたいなもんかね。ああ、ここに書いてあるな―――『回転式機関銃(試作品)』、だとよ。ってことは手製か」
 動作保証はされていまい。江戸時代末期に舶来したものだが藤吉郎たちには知る由もない。
「こっちは? この弾丸を使うのか? 火薬つめただけにしちゃ大きいよなぁ。肩に担ぐみたいだ………狙い定まるのかなぁ」
「『ばずーか』って書いてあるぜ。やっぱ試作品だ」
「天回は色んな時代から色んなモノを集めてたみたいだけど、結局こういったモノは本人の記憶を頼りにした手作りだったんだろうな。物体移動にある程度の制限でもあったのかな」
「俺たちは移動できてたケド。ありゃー巫女さんのおかげかね」
 和気藹々と話し合う彼らはおかげで背後から近づいた影への反応が瞬間、遅れた。

 ガンッ!!

「痛――――――っっ!!?」
 脳天を直撃された藤吉郎がズベシと地面に顔を突っ込む。咄嗟に避けていた五右衛門はさすがと言うべきか。
 足音立てずに近づいた人物は拳を震わせて怒りに耐えていた。額に浮かぶ怒筋が、ああ、目に痛い。
「てめぇら………人が苦労して探し出してやってみりゃあピーチクパーチクと暢気に騒ぎやがって………っっ!!」
 ようやっとふたりを見つけ出した信長は背にありったけの重火器類を背負って実に勇ましい。
 あくまでも藤吉郎たちを「探し出してやった」と主張する辺りが彼らしいというか何と言うか―――。自分も「捜されていた」とはチラとも浮かばないらしい。五右衛門が背後の足音を察知しつつも態と藤吉郎との会話に没頭していたのはヒミツである。
 挫折していた藤吉郎がガバと身を撥ね起こした。
「のっ………信長様! ご無事だったんですね!!」
「おう」
 主君はものすごーく不機嫌そうである。好対照な部下は感動に目まで潤ませて相手を見上げる。
「良かった………っ。本当に………っ。信長様に何かあったら―――ホント―――俺っ………!」
「………………そっちこそ」
「え?」
「無事で何よりだ」

 ―――色んな意味で。

 とは、決して表には出されない信長の本音である。主君がさり気なく忍びに睨みをきかしたのに気付かない部下と、やっぱりそれとなく舌を出して上司をおちょくる忍び。険悪な雰囲気になってもよさそうなのだがそれを押し留めたのはこの状況である。喧嘩したり原因を追究したりする前に地上に出なければ始まらない。この点は三人そろって苦笑したくなるほどの『現実主義者』であった。
 笑って肩を叩き合うのは安全圏に逃れてからでいい。
 ここには危険な『何か』が確実に存在しているのだから。
 藤吉郎が主君の背負った武器の数々を見て首を傾げる。
「信長様………それ、どこで見つけたんですか?」
「来る途中でな。お前らも色々と小部屋を見たんじゃないのか」
「見ましたけど武器庫は此処が初めてですよ」
 説明しようと口を開きかけ―――。

 ゴォ………ン………

 覚えのある響きに静止した。ハッと互いの顔を見合わせて警戒する。担いだ火縄銃を構え直して注意深く信長が後退りする。
「スッパ、どっから来るか分かるか」
「音が反響して分かりにくいんだよ。でも来るとしたら右手前方だな。ちょーどあんたが来たのと同じ方向だぜ、お殿様」
 跡でもつけられた? 何か怒らせるようなことでもしたんじゃないのと茶々を入れつつ。
 身構えるふたりの影になった藤吉郎も慌てて懐の武器を取り出した。臨戦態勢に入った他の面々より多少動作が遅れてしまっている。
「あ、あのー………戦うんです、か?」
「たりめーだろが、バカザル」
「たっ、戦うより先に逃げた方が早いんでは………?」
「出口も分からないのにか?」

 ―――確かに。

 地中においてはこれから訪れる『モノ』の方が有利だろう。調査に乗り出したばかりで構造をろくすっぽ理解していない彼らに比べ、追いかけてくる足音には何の迷いも見られない。藤吉郎の暗記していた密偵の地図は役に立たなかった。あの地図は『第一階層』の見取り図に過ぎず、いま彼らがいるのはひとつ下におりた『第二階層』に相当するのだろうから。

 ゴォン、ゴォン、ゴォン………!

 連続して響く音と振動により剥がれ落ちる壁の飾り。信長が呟いた。
「来るぞっ………!」

 ゴォン………………ッッ!!!

 狭い出入り口が無理にこじ開けられた。自らの体格より狭い穴を強引にすり抜けてきた印象を受ける。
 現れた第三者に五右衛門が呻く。
「何だぁ? あれ」
 アレというか、ソレというか、コレというか。
「………人間?」
 恐る恐る藤吉郎が同意を求める。
「―――悪いがありゃあ、バケモンだ」
 信長が断言した。
 天を衝くほどの巨体。盛り上がった筋肉が泥と土で黒光りする。落ち窪んだ眼窩に爛々と光を湛え、両の手足に鉄球がくくりつけられている。地面にそれが擦れるたびにゴォ………ンと聞きなれた音を出すのだ。

 四肢を供えた普通の人間―――背丈が並ではないが。
 逞しい身体をした人物―――男か女かも身につけたボロボロの衣服では不明。
 手足を拘束される様は囚人―――鉄球に怪しげな呪符が取り付けられようと。

 声も言葉もない。ただあるのは、相手から吹き付けられる例えようもない敵意だけだ。
 ―――邪魔だ! 出て行け! 来るんじゃない!!
 虚ろなまなこの奥底が訴える。
 ジャリ、とそいつは己の右手を拘束する鎖を握り締めた。十貫はありそうな鉄球が揺らいだ。そして。

 ゴッ!!

「うぉっ!?」
 投げつけられた衝撃に三人が散った。被害にあった棚がバリバリとひしゃげて崩れ落ちる。青銅製だろうが鉄製だろうが逃れようはない。即座に信長が火縄銃の一撃をお見舞いするがキン! と硬質の音を響かせるのみでかすり傷ひとつ負わせられない。
「ちっ! いきなり仕掛けてくる上に銃も効かないってかぁ!?」
「刀も効かねぇよなー、多分」
 天井の電球にぶら下がりつつ五右衛門が舌打ちする。小脇にはしっかりと藤吉郎を抱え込んでいた。
「ご………五右衛門………下ろしてくれないかな………」
「ああ、悪い」
 すぐに近くの梁の上に飛び移った。危なっかしい足取りですぐに藤吉郎は床へ直行する。下では信長が火縄銃で応戦中だ―――全く敵に効き目はない上に、相手が鉄球をブン回してくるので危険極まりない。真横の柱が鉄球の一撃を食らって大破した。
「五右衛門! お前はそっちから!!」
「おう!」
 急いで二手に分かれると降りかかる木屑を払いのけながら武器の側へ駆け寄った。
(試作品だか何だか知らないけど、それに頼るしかない!)
 無言で襲ってきた相手が悪や敵とは限らないけれど、実際問題として攻撃されている以上、反撃しなければやられるだけだ。ましてや奴は自分たちを追って来た。おそらくは―――排除するために。
 そして自分も。
 誰が相手だろうと主君を殺されることだけは許せない。認められない。
 一方。
 撃っても撃っても堪えない相手に信長は舌打ちした。撃ち終えた後の火縄銃で殴りつけてみても結果は同じで、むしろ鎖で絡め取られた上にひん曲げられたりするから手に負えない。
「ったく! これだから連弾じゃない銃はイヤなんだよ!!」

 バン!!

 耳の真横を鉄球がすり抜ける。鼓膜が破裂したらどうしてくれよう。
 スラと腰の刀を抜き放ち、決して素早くはない相手の懐へ飛び込む。思い切り下から切り上げて、肌の表面を掠めて終わる。黒光りする肌は単なる汚れ以上の役目を果たしているようだ。滑って刃がほとんど食い込まない。まぁ銃弾を弾く時点で常識ハズレの肌だと思ってはいたが。
「めんどいんだよ! このクソッタレ!!」
 ならば目でも潰してくれよう。
 瞬間、刀を引いたところで

 ブンッ!!

「何っっ!!?」
 直下で起こった衝撃に身を屈めるのが精一杯。

 キィ………ン!

 弾き飛ばされた刀が甲高い音をたてて壁に突き刺さった。武器をもぎ取られた右手がジンジンと痛む。
「こっ………の、野郎!」
 鉄球は両の腕と足に全部あり。
 コイツが右利きとも限らぬのに左手への注意を怠っていたのは自分の落ち度だが、いきなり動きも早くなるし本当に詐欺みたいなモンだと信長は言いたい。右手で攻撃を防ぎつつ左手で刀を弾き飛ばした相手は巨躯を揺らめかせながら再度腕を振り上げる。
 衝撃を予測した防御を実行することはなかった。
「信長様! 伏せてください!!」
「!?」
 声の主を確かめるまでもなく反射的に体が沈んだ。真上を弾丸の嵐が通過する。

 ガガガガガガッッッ!!!

『―――! ―――、―――!!』
 予期せぬ攻撃に怯んだ巨体が激しく腕を振り回す。鉄球の先が掠め、急ぎ後退する。援護するように宙に描かれた光跡が敵の頭部を直撃した。
「おら! ぼーっとしてねぇでとっとと下がれ!!」
 叫ぶ五右衛門の肩には試作用バズーカが担ぎ上げられていた。使い慣れない武器に戸惑いながらもどうにか第二弾を装填し、狙いを定める。
 ぐるりと巨大な身体を旋回させて五右衛門に掴みかかろうとした動きは、しかし、背後からの攻撃によって阻まれる。
「ふたりに手出しはさせないっ! 早くここから立ち去れ!!」
 言い様、藤吉郎は仕掛けを外して回転式拳銃を作動させた。撥ね散る薬莢がきな臭い匂いを出して神経を逆なでする。重たい銃の先端はちょっとでも気を緩めると狙いを違えてしまいそうだ。未だ信長は安全圏にいるとはいえず焦燥が募る。
「殿! 早くそこから離れ………うわぁっ!!?」

 ガン!

 突然、武器に衝撃が走った。平衡を保っていた台座の螺子が外れて銃身が空を向く。しかし射撃は止まらず、打ち抜かれた電球が細かな破片をバラバラと散らした。右から左、左から下へと弾丸の嵐が降り注ぐ。反対に位置していた五右衛門は慌てて棚の裏側へ飛び込んだ。
「ばっ………! とっととその機械を止めろ――――――っっ!!」
「止まらないんですっ! し、仕掛けが壊れてっ………弾を撃ちつくすまではとてもっ………!!」
 ましてやこの武器を製造したのは藤吉郎ではない。しかも試作品の段階で。
「ちっ! バカザル!!」
 荒れ狂う弾丸と勢いに押されて後退する敵が振り回す鉄球と、降り注ぐ電球の破片で最早収拾がつかない。隙を見て部下の近くへ駆け寄った信長が激しく回転式拳銃の土台を蹴り上げた。螺子が弾け飛ぶのに合わせて飲み込まれかけていた弾薬を引き千切る。カラカラと回転を続ける銃身が地に叩きつけられて動きを止めた。
 未だ周囲は濛々とした土煙に包み込まれている。
 荒い息をつきながら信長は部下を叱咤した。
「この馬鹿が! 慣れない武器を使うんじゃねぇ!! 却って危険なんだよ!」
「で、でも………そうするしか―――あいつには銃もろくすっぽ効かなかったじゃないですか!」
 救われた立場でありながらも減らず口を叩いているのはどちらなのか。だが漫才のような喧嘩を続けられる状況下でもなく。
 ふたりの頭上を薙いだ一閃が壁にめり込んで皹を生じさせる。砂塵の彼方から姿を現した相手も、さすがに無傷という訳にもいかなかったのだろう―――全身から血を垂れ流している。しかし未だ眼光衰えず、両手足の鎖に真紅の液体を滴らせながら何事かを呟いている。

『………ノ………………メル――――――チ、カラ………!!』

 振り下ろされる鉄球を防ぐ術がない。信長の武器はすべて戦いの中で遠ざけられてしまっている。何がしかの武器を入手するより前に、小柄な部下が前方へ飛び出した。有り得ないほどの体格差をものともせず懐の刃を煌かせる。
「この方に手を出すな!!」
 抜き放たれた白木作りの鞘を持つ刀の銘は<神薙>。
 刀身に刻み込まれたは呪い文字。
 迷う事無く突き上げられた刃が落ち窪んだ眼窩に吸い込まれる。

『―――! ――――――ッッッ!!』

 声にならない甲高い悲鳴。吹き出た鮮血が柄と手首を容赦なく染め上げた。顔にまで降りかかったそれを拭い去ることなく藤吉郎は食い入るように相手の顔を見つめる。ふ、と目が見開かれた。
「………っ!? 抜けない………っっ!」
 瞬間、「刀を捨てる」という選択肢が思い浮かばなかった。

『――――――タ!』

「!?」
 身体に見合う巨大な掌が藤吉郎の腕を捕らえる。捻じ切られそうな勢いに藤吉郎の顔が苦痛に歪む。攻撃のための刀は眼窩から外れず、掴まれた肩が熱を持って暴れだす。
 引き千切られる!
 覚悟を決めた瞬間、相手は予想外の行動に出た。腕に獲物をひっ捕らえたままあらぬ方へ走り出したのである。狭い入り口に激突し、肩で両脇の土を削り取りながら激走する。時に理解不能な呻き声を上げながら。
 邪魔な砂塵を腕で払い除けて信長が苛立たしげに叫んだ。
「あほが! 何回はぐれりゃあ気が済むんだよっっ!!!」
 追い込まれていた身体を壁際で立ち上がらせたところで
「信長! 受け取れ!」
 癇に障る声と共に筒状の物体が飛来した。かなりの重さがある銀色のそれを受け止めて、しげしげと眺める。巨大な筒に重たい弾薬を詰め込んで、肩に当てる支えと引き金が装着されている。訝しげに振り向けば似たような武器を担ぎ上げた五右衛門が不敵な笑みを浮かべていた。
「捜してたら遅くなっちまった。こんぐらいのじゃなきゃあいつの肌には効かないっしょ?」
「―――悠長なもんだな」
「先を考えてると言ってほしいね。俺だって好きで藤吉郎に戦わせてる訳じゃない」
 本当は戦わせたくないぐらいなんだ、と笑みもそのままに呟いて。
 鉄球を引きずる音を頼りに方角を定めつつちょっとだけ付け足した。
「怒るより先に、偶には褒めてやったらどうだ? 少なくともあいつは助けてくれた相手にゃ礼を言うんだぜ」
「喧しいっ」
 常よりは弱い言葉を返し、苦虫を噛み潰したような顔をしながら信長は武器を改めて担ぎ上げた。
 行く先が紛れる前に追いかけなければならない。
 これ以上、引き離されるのは御免だ。




 坑道内を無茶苦茶に走りぬける振動が身体に堪える。叫びそうになるのを耐えて、舌を噛みそうになるのを注意するしか術がない。相変わらず突き立ったままの刃は抜けないし相手も離してくれそうにない。

『―――! ―――、―――、―――!!』

 声にならぬ声が誰かを呼んでいる。
 痺れだした右肩に歯軋りしながら藤吉郎はそんな印象を受けた。しかし、どうにかせねばこのままでは仲間と離れる一方だ。下手したら削られる土に巻き込まれて埋もれてしまう。揺れる視界の中で必死に考えを巡らせる。
(何処を………目指してるんだ?)
 現れた時も、鉄球を振り回してきた時も、『こいつ』に格別な意思は感じられなかった。
 物音がしたから来てみた。侵入者がいたから排除しようと思った。その程度の感情しか読み取れず。
 だがいまは違う。何らかの明確な意思を持って『彼』は何処かを目指している。
 何らかの解決策は見い出せないかと頭をひねり出した直後、冷静な思考は扉を吹っ飛ばす音に掻き消された。何が起きたと確認するより先に回転する世界、眼窩から抜け落ちた短刀、叩きつけられる背中。衝撃に意識が遠のきかけたのをどうにか踏み止まる。全身を激しく揺さぶられ続けた所為で吐き気がする。
 でも、状況を見極めなければ。
(目的地―――に、着いた、のか………?)
 うすぼんやりとした世界に目を凝らす。壊した扉の向こうに藤吉郎を投げ込んでおいて、以降無関心になった『彼』が室内で所在投げに佇んでいるのが確認できた。何と言うか………途方に暮れている、みたいな?
 素早く周囲に気を配る。
 ―――不思議な部屋だった。まるで、つい最近まで誰かが存在していたかのような。
 同時に、ひどく殺風景な。
 壁には重たい手枷と足枷、ギタギタに引き千切られた襤褸切れ。突き立てられた幾本もの剥きだしの刃に打ち付けられた釘と陶器。足元に散らばるのは木製の玩具に折り紙と結い紐。ばら撒かれた和紙に一文字、二文字、曲がりくねった言葉が書かれている。半ば崩れた葛篭から絹が顔を覗かせて寂しく煌き、笛や小さな太鼓、鈴は明らかに『誰か』を楽しませるために用意されたものだろう。棚の上に積みあがった薬方の数々が虚ろな影を刻んでいる。
 確かに、此処に、『誰か』がいた―――拘束された状態で。
 藤吉郎を連れてきた張本人はゆったりと首を回して室内を改める。そこに誰もいないということを、求める姿が見当たらないということを、信じられぬような面持ちで。強張った頬の筋肉では喜怒哀楽も測りようがなく、密やかに漏れ聞こえる哀切の念が空気を震わせる。

『イナイ………不動………』

 小刻みに震える両手を、己が面へと近づけつつ。

『イナイ………連レテ、来タノニ―――オ前ノ………求メル、………持チ主………』

 泣いていた。
 流れるのは貫かれた眼球から下る真紅の液体だったとしても。

 そこにいる『人間』は、いま、確実に泣いていた。

 極力息を殺しながらそれでも後ろに後退り、壁に背が突き当たって硬直する。手にしたままの刃は力なく鞘に納められる。早くこの部屋から出たいと思うのだが、生憎と出口は『彼』の向こう側だ。かさり、とてのひらに乾いた紙が触れて無意識に目線を落とす。たどたどしく書き連ねられた細かな文字、あるいは大きく一文字だけ記されたもの、そして一番上にある紙には一言だけが記されていた。

 ―――『ミツケタ』

 言葉の後は全面漆黒に塗り固められている。背筋に怖気が走った。一体『誰』が、『何』を、『みつけた』のだ………悪い予感ばかり掻き立てられる。
 ゆっくり顔を元に戻した藤吉郎は再度動きを止める羽目になった。いつの間に振り向いたのか、悄然としていたはずの『彼』がこちらを黙って見つめている。何度か唾を飲み込んで平静を保ち、震える手先に例の紙を握り締め、どうにかこうにか言葉を紡ぐ。
「も、もう………みつけた、らしい、ぞ。あんたの、知り合い………」
 返事はこない。
 心臓が凄まじい速さで脈を打つ。頭に血が昇ってどうにかなってしまいそうだ。ああ、あの鉄球をいま振り下ろされたら、もう逃れようがない。確実に殺される。何もしないままに。あの人の役にも立てないままに。
「何を―――捜してたんだ。あんた達は。天回………の、命令か? 銅鐸とか、トキヨミの末裔とか、そーゆーモンか?」
 相手の顔色に微妙な変化があった。いまの言葉のどれかに反応したらしい。鍵となる単語は幾つかあって、果たして『彼』はそれを自身で認識しているのかすら判断に苦しむ。
 しかし出来るだけここで情報を引き出しておかなければならない。この紙に残された伝言は、ひどく、嫌な感じを受けるから。
 再度言葉を投げかけようとおもむろに口を開いた時だった。

「サル!! 伏せろ――――――っっ!!」

 何のことかと疑問を浮かべる暇もなかった。反射的に腕が跳ね上がり両の耳を塞ぐ。
 そして。

 ――――――ッッ!!!

 眼前を紅蓮の塊がぶった切る。余熱と火の粉を撒き散らしながら飛来した弾丸は見るも無残に佇む人物の腹を貫通した。
「………っっ!?」
 一体、何が………。
 凍りついた思考の傍ら、第二撃が打ち込まれる。青い炎を孕みながら打ち出された鉄球がよろめく影にとどめを刺す。すぐさま炎は辺りの棚に、木箱に、紙に燃え移り、くすんだ煙と熱さを訴え始める。
 目と鼻の先ではつい先刻まで動いていた人物が声もなく斃れ付している。もの言いたげに伸ばされた腕が真っ直ぐに天を指して固まっていた。火に照り返される肌の黒さは土と泥のためだけではなく。
 己が身体を焼き尽くす、炎がもたらす灰と死臭。
「………………!」
 さっきまで。
 つい、さっきまで。
 動いていたんだ息があったんだ生きていたんだ。
 何か喋ろうとしていたんだ何か伝えようとしていたんだ何か探していたんだだってその証拠に伸ばした腕の先は指差すように折れ曲がっているし斃れ付した口元はいまにも語りだしそうに薄く半開きで生焼けになったその中身が中身が中身が。
「………………っっ!」
 煙が目に染みる。口元を強く抑えて吐き気を堪えた。
 激しく咳き込む彼の襟首を誰かが無理矢理引き上げる。
「なに、ぼーっとしてやがんだ!! とっとと行くぞ!」
「―――と、の………?」
 くすむ視界でどうにか主の姿を捉えた。泣き出しそうになっているのは煙の所為なのか、無事な姿を確認できたためなのか、それとも他の理由があるのか、もう藤吉郎自身にすら分からない。
 このまま立ち去っちゃいけない、あと少しだけこの場に居させて欲しいとの思いが強まるばかりで。
 主が見慣れぬ武器を現場に投げ捨てるのを横目に。
「あ………と、殿。待って下さい。俺、調べないと―――だって、いまあいつが………何か―――!」
「―――もう動かねぇ。此処には何も残らねぇ。行くしかねぇんだ」
 真っ向から部下の視線を受け止めた信長は視線をきつくするとすぐに顔を背けてそういった。おさまらない炎で火傷を負いそうだ。
 少し離れたところで友人が声を荒げる。
「何やってんだよ、急げ! 武器を乱用した所為で坑道自体がヤバい! 早く!」
「………行くぞ!」
 再度、首元を引きずられて身体がそのまま動いてゆく。放心したような顔で最後にもう一度藤吉郎は室内を見渡した。燃え盛る炎と、燃え尽きた紙と、燃えつつある人体と。鼻をつく異臭にすらいまは意識が行かなかった。
 ふらり、と力ない彼を主が引っ立ててゆく。




 いい加減、場所そのものに寿命がきていたということなのか、部外者が暴れすぎた故なのか。
 坑道は洒落にならないほど皹が入ってしまっている。電球は揺れて落ち着きないし徐々に壊れて足元を暗くする。脇から襲い来る棚や扉はもはや凶器だ。命がけの障害物競走を切り抜けるには動きのトロい部下が足手まといでならない、とはいえ手放すつもりなど全くない。先刻からやや放心状態にあった部下はようやく我を取り戻したのか必死の形相で付いてきている。
 一歩先を行く五右衛門の背に声を叩きつける。
「スッパ! どこ向かってるかわかってんだろーな!?」
「わかるわけないだろ! 崩れてない道っつーとこっちしかないんだからしゃーねぇじゃん!!」
 流石に地崩れまでは操作できない忍者である。とりあえず足の速さにものをいわせて曲がり角を覗き込み、崩れかかっている道は避けて比較的丈夫そうな回廊ばかり駆け抜けてゆく。しかしそれとて大地震の最中の如く亀裂が走っているのだから気が急いて仕方がない。早く地上へ脱出したくても全然出口が見当たらないのだ。こんなところで生き埋めになるのは真っ平御免だ。
 ついに回廊が行き止まりになってバン! と五右衛門が壁に両腕を叩きつける。
「ああっ! もう! 抜け道のひとつも用意しとけよ天回の野郎!!」
 八つ当たりもいいところなのだが。
 残されたのは両脇の扉がふたつ。しかし今までの探索結果からいうと個室でしかありえない。そして背後からは地鳴りと地崩れが迫ってくる。
 八方塞だ。
「とりあえずどっかの部屋に入るぞ! 崩れなければそれでいい!」
「この震動で崩れない方が無理っぽいけど?」
「じゃあお前が揺れを止めろ! この揺れを!」
 キレた上司と冷めた忍びの不毛な会話である。
 いまのいままで呆けていた藤吉郎がようやっと目が覚めたように辺りを見回してハッと息を呑んだ。驚くと同時に、「ひどくヤなことに気付いちゃった」という感じで。
 迷いは一瞬、決断は瞬時。
「信長様! 五右衛門! 早くこっちに!!」
 迷わず右手の扉を蹴り倒した。地響きで歪んでいた扉は若干の抵抗を見せたものの敢え無くへし折れて木屑と化す。倒れる間も惜しく踏み倒した藤吉郎は雑多な部屋に飛び込むと天に向けて叫んだ。

「―――秀吉! 此処だ――――――っっ!!」

 途端に。
 反応を見せた天井の一部が崩れ去る。ひょいと逆さまに頭を覗かせた人物が地中の姿を認めて叫び返す。
「藤吉郎!」
 血相変えた秀吉の隣から縄が投げ込まれて揺れた。
 あとは説明するまでもない。身軽な五右衛門が縄に飛びついて強度を確認すると仕事人の常として信長を一番に上へと導いた。彼には一益や光秀らの腕が差し伸べられ、昇るのもたどたどしい藤吉郎はこれまでと同じく友人に腰を抱えられて地上へと這い出した。
 地鳴り、土崩れ、崩壊。
 秀吉たちが発見した出入り口から何とか地上へと逃れた三人は泥と土煙の中で切れた呼吸を整えることに専念する。
 ………この入り口は、閉ざされた。
 武器の数々も、『彼』の撃たれた小部屋も、残されていた品物も焼き尽くして。

 ―――叡山からの地鳴りは数時間に及んだという。




「ふぅん………ここか」
 先の騒ぎより間を置くこと数日。懲りない根性の持ち主である織田家当主は再度、叡山の麓に訪れていた。因みに此度の探索を行ったのは直属の家臣ではなく、どちらかといえば新参者に過ぎない双子の兄弟であった。半端にせよ内部構造を覚えている者たちに任せた方が効率よかろうという話になったのである。
 ふたりが探し出してきたのはかなり東方に位置する小さな穴であった。崩落したのか、中に居た者たちが掘り進んだのかまでは分からないが、穴の奥には何者かが住まっていた形跡があった。更に奥は例の坑道へと続いていたのだろうが生憎とそちらの道は潰れてしまっている。
「此処で何が行なわれてたって?」
 入り口さえ乗り越えてしまえば意外と中は広い。答えを促す主君に対してどうも藤吉郎は歯切れが悪い。秀吉も進んで答えたくはないようだ。仕方ないなぁというように自主的にふたりの探索を手伝っていた五右衛門が前に進み出る。差し出したのは分厚い冊子だ。
「はい。―――研究結果」
「研究?」
「この部屋見ればわかるだろ。かなりの人間が閉じ込められてたことぐらい」
 壁に取り付けられた錠の数々。足元に転がるのは力ずくで壊された鎖や手枷や足枷ばかりだ。と、同時に机が数卓と上に散らかった書類や薬方の数々。
「俺は知らんけどね。この薬ってお前らは見覚えあるもんなんだろ?」
「天回衆が飲んでたヤツだな」
 ひとつをてのひらに取り上げて日に透かす。もともとは大量にあったのだろう。棚がひっくり返され、引き出しが壊されているのでそもそもの絶対量を知ることが難しいが。
「薬ってぇのは副作用がつきもんだからさ。天回に拾われて進んで部下になった奴も多かったみたいだけど、必ずしもそうじゃない場合もあったみたいでさ」
「―――丸太、一本」
 ポツリと秀吉が呟いた。淡々とした穏やかとすらいえる口調で言葉を続ける。
「その冊子には個人名なんざ載っていません。全部本数で数えてあります。何月何日にどれだけの薬を丸太に『植えつけた』のか………書いてあるのはそれだけですよ」
 信長が顔をしかめて受け取った冊子を睨みつける。
「結果が芳しくないものはすぐに『捨てられた』ようです。ただ、『捨てられた』側がそのまま生き延びたか野垂れ死んだかまではわかりません。幾人かは『昇格』して中枢に加えられた形跡があります」
 五右衛門が言葉を次いだ。
「俺らが突入するギリギリまで此処に篭もってたのは一番成果が出ていた連中かもしれないし、そうでないかもしれない。個人名も特徴もないから捜しようもないけど奴らが薬を持って逃げたのだけは確かだぜ? 天回の意志を継ごうってんなら厄介だけど、違ったら何も関係なく済むかもしれない」
 後者なら薬を持ち逃げする理由もないんだけどな、と付け足して。
 藤吉郎が躊躇いがちに問い掛けた。
「………追います、か?」
 追う必要はないのかもしれない。
 自分たちを襲ってきた『彼』すら実験に使われた成れの果てだったのだとしたら―――彼らこそ庇われる立場で。
 何処までも加害者と被害者の線引きが曖昧だ。
「もし追えるとしたら―――俺たちだけ、ですよ」
 根拠もないのに言い切れる事実。それは関連があるからとか、奴らと戦ったことがあるからとか、面識や認識に由来するものではない。
 自分たちはあの『空間』に入り込んだから。
 そこだけに通じる空気を覚えている………実験に使われた彼らと似たような感覚を共有しているだろうと何故だか予測がついた。『彼ら』と会った時に互いが互いを『当事者』と見抜くだろう。予感ではなく、それは確信だ。
 追おうと思えば追える。例え彼らが、ある意味では被害者に過ぎなくとも。
 振り切るように信長は言い切った。
「追いかける」
 断固とした表情で地上を見上げる。差し込む日の光によって背後に影が長く伸びる。
「でなきゃ、終われねぇ」
 最後の一言だけは少しだけ冷笑を含んで聞こえた。

「でなきゃ………………俺も、眠れねぇ」

 以来、織田信長は天回衆の生き残りを追っている。




 月夜の晩の酒飲み話にしては聊か重すぎる内容を語り終えた相手が答えを促す。
「さて、お前はここに何を見る?」
「―――信長公の真実みたり」
 空惚けた顔で青年は語る。

「追えるのがあなた方だけならば、追わなければ良いのです」

 どこかで元天回衆が蜂起しようと、薬を使った事件が起ころうと、それはその時ごとに対処していけば済む話ではないか。
 あえて追いかけて身元を割り出し、場合によっては処罰を加えて『彼ら』の現在を抹消する。
 それは関わってしまった故の責任感でも『彼ら』が暴走する危険を封じる為の正義感でも何でもなく。

 ただひたすらに。
 いつかと同じく果てと果てに『引き離される』ことを恐れている。

 恐れるからこそ『彼ら』を追い詰める。『彼ら』を見つけられるのは自分たちだけだから追い詰める。
 結果、『彼ら』が暴走して捜しに行った人物が危険に晒されるとしても―――。

 離れるよりは見知った世界で果てろと願うのか。

「探し出す理由も殺す必要もないでしょう。彼らは彼らで穏やかな生活を営んでいるかもしれない。あなた方が追うことで却って過去を想起させているのやもしれませぬ」
「けどな、いままでの傾向からいって優秀な奴ほど上手いこと日常に紛れ込んでるんだ。それでいざ暴走してみろ。痛い目みるのはこっちなんだぜ?」
「危険因子というだけで滅ぼすのは性に合いませんね」
 藤吉郎殿は信長公の本心に気付いておいでなのか、と問えば。
 気付いていても無意識の内に目を逸らすだろう、敬愛は盲目だと語り手が返す。
 重たくなってしまった空気を掃うように彼は言葉を続けた。
「………で、結局」
「ん?」
「しょっちゅうふたり旅だの三人旅だのしている訳ですが―――聞く限りでは十年以上も関係に変化は見られないようですね」
 らしいと言えばらしいけれど。
 思わず笑みを零した秀吉がフと真面目な顔をして切り返す。

「なぁ………ひたすら敬愛されてるのとひたすら信頼されてるの、お前ならどっちがマシだと思う?」
「―――」

 惚れた相手からならばどちらも遠慮したいと思う半兵衛だった。




 空に浮かぶは有明の月。皓々と照らす白い光に対して、いまの状況はあまり相応しくないなとぼんやり藤吉郎は考える。
 両のてのひらは血で濡れて、懐に仕舞った刀も真紅に染められて、背後の村は火の赤と悲嘆に満たされて。
「―――今度こそ、って思ったのにな」
 呟く。
 見つけ出した人物は穏やかな暮らしを営んでいたから、そっとしておきたかった。だが自分たちと出会ったが最後、何を見たのか知らないが信じられないくらい戸惑って取り乱して慌てふためいて。
 危害は加えないと説得するより先に『薬』に手を出して暴走した。
 その後はこれまでと同じ軌跡を描く。
 しなければならない、そう理解していてもとどめを刺す瞬間は躊躇いが生じる。故に、今日も負わなくてよい傷を負ったけれど、これは『彼ら』の平穏ないまを叩き壊した己に対する当然の報いなのだ。
「次こそは―――って考えろよ。な?」
 励ます友の声が耳に痛い。常に前を見ろと促す声のおかげでどれだけ自分が救われてきたかわからない。彼の言葉があるからこそ、自分は未だ笑顔を浮かべることができる。
「うん………悪いな、五右衛門。お前だってこんな仕事に付き合わされてつらいだろ?」
「なに言ってんの。俺だって時空に飲まれた当事者だぜ? こんぐらい当たり前でしょ」
 同行させてくんないなら無理にでも付いてくぞ、と脅し半分からかい半分、全部が本音。
 俯いていた藤吉郎がようやく面を上げた。
「そう。そうだよな。今度こそ上手くいくよな。別にみんながみんな暴走しちゃうって決まった訳でもないんだし」
「そうそうv」
 励ます側の心境はかなり複雑だ。
 こうして「次こそは」と思い続けて―――何回、裏切られたか覚えているのだろうか。
(なぁ、知ってるか? 藤吉郎)
 自分たち自身が探索している限り、出会った『彼ら』は必ず暴走するのだということを。
 かつての経験故に所有している空気が『彼ら』の精神をそちら側へ追いやってしまうのだということを。

 だからこそ、信長が藤吉郎を現地に派遣するのだということを。

(気付いてるよな………お前だって)
 それでも命に逆らわず付き従う。
 明け方の道を最も親しい者と並んで歩きながら月を見上げる。五右衛門がそっと手を差し出すと、藤吉郎は小首を傾げて、やがて静かに握り返した。伝わる体温がゆっくりとこころをあたためる。ゆるゆると浮かべた笑みにどのような命が下されても信じ続ける決意を添えて。





残酷な貴方に絶対の信頼を。




一義威令―――残敵殲滅。




 

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一体、何だったんだこの作品は………(遠い眼差し)

あああ何だかこんな話でごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
今回の話は人気投票結果をモトにしておりますので本来はゴエヒヨで決まりのハズなのに―――
殿も秀吉も半兵衛もいるし、他にも脇キャラは登場しまくるし、
肝心のゴエと日吉が全然絡んでなくてごめんなさい(懺悔)

『一義』は「ひとつの道理、一理、ひとつの意味」、
『威令』は「威力のある命令」のことです。
ふたつ合わせて「ある意味では正しいのかもしれない罷り通った命令」という意味に
―――なればいいけれども所詮は造語なので信用なさらないよーにv

まぁあんまり謝り続けるのも潔くないかと思いますので、どの辺の設定がどの世界観に続いてたのか
『全設定クロス・ストーリー』を標榜するからには書いてみましょうみせましょう☆(誰にいっとんじゃい)

1.『まよひが』の伏線

 <神薙>という刀 / 薬を飲んで暴走する人間の存在

 原作が続いていればもっと話に絡めて行くはずだったんだ………(哀)

2.『きつねつき』の伏線

 半兵衛の存在(笑) / 「不動」と呼ばれる人物の存在

 だって「不動」は『きつねつき』におけるラスボ(以下省略)

3.『コロクンガー』の伏線

 今回の舞台である叡山の地下坑道 / 密かに日本刀おいてっちゃってる信長

 そのうち出てきます☆

今回の話は自身で考えてたよりも暗くなっちゃってまずかったですね………リアルタイムで戦争されると
戦国時代は描きにくくてならんですよ。
おかげで信長やゴエですら非道な一面があるっぽい描写が自然と入っちゃったし。
人間を「丸太」と呼ぶのはまんま戦中の某部隊だし。

無駄に長い作品にお付き合い頂きましてありがとうございました〜。

今後も『人生万事塞翁が馬』をよろしくお願い致しますv(お辞儀)

 

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