「戦え! ボクらのコロクンガー!!」

53.confrontation

 


 夕闇の薄暗さに包まれて一時、場が静寂に覆われる。しかしそれも束の間、すぐに地を掘り返す激しい

振動とざわめく木陰、軋んだ音を奏でる打ち捨てられた木材や土台によって辺りは騒々しさを取り戻す。

「―――勝手なことしてるんじゃねぇよ」

 呟いて五右衛門は佇んでいた崖の上から身軽に飛び降りた。音もなく着地した足元で黄ばんだ草が揺

れる。遠く眺めやる山並みも崩れたまま放置された家屋も打ち捨てられた木材も見覚えのあるものばか

りだ。数年前………復興支援の半ばで投げ出された、そのままの。僅かに唇をかみしめて五右衛門は眼

前の人物を見やった。

 

 かつての友―――いまでも友と称せるかもしれないが、実は最も手強い敵かもしれなくて。

 

 BKが地を掘り返すのを横目に秀吉は薄っすらと笑っていた。受け止めたくないを片手でもてあそび、手

近な木に投げつける。鋭く突き立ったそれは傾く陽に鈍い光を放った。手はポケットに突っ込んだまま五

右衛門は返されるとも思わない問いを口に乗せる。

「ソイツに穴掘りさせて何の意味があるんだよ。ここは捨てられた村だぜ。用なんてねーだろーが」

 秀吉はただ笑い、やはり両手をポケットへと押し込めた。一見したところ関係なさそうな言葉を放つ。

 

「石川五右衛門は実在しない人間。その代わりに消えたのは蜂須賀村の子供ひとり………か」

 

 少しだけ聞き手は目つきを険しくした。

「何だよいきなり。いまはそんなん関係ねぇだろ」

「そうだな。俺が此処で何をしていようともお前に一切関わりがないのと同じように」

 明らかな嘲りをこめて秀吉が笑みを深くする。

「ひとひとりの過去なんて探ろうと思えば幾らでも探れる………政府が‘存在’そのものを消そうとしても

消えきらないのが‘人間’って奴さ。痕跡は必ず何処かに残る」

「で? だから? お前が俺の過去を探り出して何かイイことでもあるってのかよ」

「ないさ。何も」

 少し歩幅を広げて気を張り詰めて、いつでも斬りかかれるような雰囲気を滲ませて未だ彼は微笑む。争

いと諍いを受け入れる構え。

 

「俺たちに‘争う理由’が存在しないのと同じくらい、‘争わない理由’が存在しないようにな」

 

「上等………最初っからそういってりゃいいんだよ」

 以前とは比べ物にならないぐらい威圧的態度を取る元同僚に五右衛門は苦く笑う。戦いを躊躇う訳では

ない、そんなの村に秀吉が現れたと聞いた時に覚悟は決めていた。それでも尚僅かな惑いを心に抱くの

はひとえに己の甘さ故かと思わずにはいられない。あの憎たらしい師匠ならばそれがかつての同僚であ

れ上司であれ友人であれ、敵として対峙した瞬間に呆気なく斬り捨ててみせるだろうに。

「………とっ捕まえて改良してやらぁ。大人しく‘洗脳’技術のノウハウをこっちに伝授しろよ」

「殺せば楽なのにな。これだから正義を掲げる防衛隊ってのはやってらんねぇんだよ。………まあ、本隊

が到着するまでの暇つぶしにはなるかな。それに」

 

 ―――俺もお前に訊きたいことがあったんだよな。だから丁度良かった。

 

 蜂須賀村に来たのは目的のものがそこにあったからだけれど、偶々お前がこの村の出身で、しかもす

ぐに来るだろうと予測をつけるのが容易かったのは実に有り難い。

 そう、告げて。

 最後に秀吉はまた付け加えた。わざとらしく両の腕を天に掲げた後に、ゆっくりと懐に仕舞いこんで。

「………両手は使わねぇ。俺の武器は出さねぇ」

「舐めてんのか?」

「ああ。だから、本気出させてみろよ―――できるモンならな」

 お前なんざ余興なんだと。いわずと表情で嘲笑ってみせる。

 それが態とであれ性格であれ何であれ腹立たしいことに変わりはない。

 

 なのに―――。

 妙に居た堪れなく、切ない気持ちになるのは何故だろう。

 

 内心の揺らぎはかほども感じさせずに五右衛門は地を蹴った。抜き放ったくないが相手の眉間をかすめ

る。逃げ遅れた前髪の一部が舞い落ちて、舞い落ちたそれが地面に着くより早く二撃目が繰り出される。

また間一髪の距離で秀吉は攻撃をかわした。飛び退り、発掘作業真っ最中のBKの邪魔にならぬ距離ま

で歩を運ぶ。通り際に

 

 ガッ!!

 

 転がっていた木材を思い切り蹴り上げた。意外と軽く宙を待った物体を五右衛門も片手で跳ね除ける。

軋む木材は近くの鉄筋に衝突してへし折れた。

 薄く笑い、秀吉はクルリと背を向けた。積み上げられた鉄筋を駆け上り、あっという間に打ち立てられた

骨組みだけのビルの2階部分に達する。そのまま更に奥へ奥へと走り続ける。

(ちっ、上を取られたか)

 見失わぬよう地上から秀吉の後をつける。建設途中の木材や鉄筋やコンクリートがばら撒かれた地上

はかなり足場が悪い。それは壊れかけのビルの上でも同じことだけれど、見渡せるだけ上の方がまだマ

シだと言えなくもない。幼い頃から過ごしてきた土地勘を頼りに五右衛門は敵の向かった先に見当をつけ

る。おそらく彼は建物の解体作業が中途で放り出された商店街に向かっている。

 言葉を投げつけた。

「てめぇ! 逃げてんじゃねーよ、戦う気あんのか!?」

「はっ! 言っただろ? 俺にとっちゃただの‘暇つぶし’なんだよ!」

 真剣に斬りあってなどやるものか。だからこそ自らの両腕を封じ、相手の出方を窺うのだ。

 視線を鋭くした五右衛門がくないを投げつける。鉄筋の影に隠れてやり過ごした秀吉だが、その間に向

こうも柱を登ってきたのを見て不機嫌そうな顔つきになる。地上から約10メートル、幅20センチの足場で

睨みあう。ニィッ、と五右衛門が笑みを深くした。武器を手放し、軽く構えて言い放つ。

「………やる?」

「―――相手してやってんのはこっちだろ」

 愛想のない秀吉は未だ両の手をズボンから出そうとはしない。

 五右衛門が一歩踏み込んだ。勢いよく突き出された拳を寸でのところで交わし、秀吉が仰け反る。追い

討ちをかけるように足元を狙ってきた蹴りは軽いフットワークで回避した。続けての回し蹴りも屈みこんで

避ける。

 蹴りと拳が交互に来るのを絶妙のタイミングで交わしながらも秀吉はジリジリと後退を余儀なくされてい

た。足払いをかわしたところで背中が鉄筋に突き当たる。これ以上は下がりようがないぜ? と五右衛門

が指先で背後を示しても動揺は見せない。

 逆に追い詰めたはずの人間が迷っていた。

(なーんかあっさりしすぎてるっつーか何つーか………)

 防衛隊にいた頃の組み手練習でさえコイツはもっとしぶとかったのに。遠慮する謂れもなくなったいま、

こんなしおらしい態度を取る訳ないではないか。

 ちなみに組み手の戦績は0勝0敗53引き分け。どっちも中途からふざけてしまう為まともに決着をつけ

た験しがない。

 

 ………悪いケド。

 一度ぐらいは本気で殴られて頂こう。

 

 眼前の人物ではなく置いてけ堀を食わせてしまった実働部隊唯一の女性隊員にだけ内心で謝罪して。

 ある意味で覚悟を決めて手刀を繰り出した。

 ―――のに。

「おっと!」

「あ―――っ!」

 避けられて五右衛門が振り仰いだ。この時とばかりに手を懐から出した秀吉はあっさり‘上’の鉄筋に

取り付いて事なきを得たのだった。そのまま足をかけて這い登り2メートル上の鉄筋を伝い去る。

「きったねぇっ! 手は使わないんじゃなかったのかよっ!?」

「逃げる時は別だろ」

 適当な口上を呟いて不敵な笑みもそのままに秀吉はすぐ脇に控えていた木に飛び移った。そして地上

までスルスルと降りていく。危うく素手で鉄筋をぶっ叩いてしまうところだった五右衛門は少しだけ唇をか

みしめて何も伝わずに飛び降りる。着地した真下で砕けたコンクリートの粉が舞った。

 相手の行く先を見定めるのはコンマ数秒、駆け出す黒い制服姿を視界の隅に捉えて即座に追い縋る。

あれは住宅地裏手から商店街へと進む道筋だ。角を曲がったところで螺旋階段を上る音が響いた気がし

た。が、そちらには向かわずに真正面の半倒壊のビルへと走る。案の定、壊れた壁を伝い渡る秀吉の姿

を望むことが出来た。回り道に惑わされてなるものか、この道は幼かりし自分が散々遊びまわった場所で

ある。

「―――逃げんなっ!!」

 一喝、閃かせたくないの先端が秀吉の鼻先数ミリの壁に突き立った。さすがに走り回っていた秀吉の動

きが止まる。いつの間にか再び懐に仕舞いこんでいた手は尚も戻さず、笑みも浮かべたままに彼はゆっ

くりとこちらを振り向いた。苦虫を噛み潰したような顔で五右衛門は出迎える。

 ああ全く本当に、こんなこと口にしたくもないというのに。

「………此処は俺の住処だぜ? 逃げ切れるとでも思ってたのかよ」

「まさか」

 ますます皮肉げに秀吉は口元を歪める。漸く手をポケットから解放してのんびりと両腕を高く上げる。

 

 降参?

 ―――それこそ‘まさか’だ。

 

 首を傾げる様はやはりどこか彼の双子の妹に似通っていて頭が痛くなる。だが、頬に刻む笑みはもうい

までは似ても似つかない。お前こそ、と嘲笑い。

「お前こそ、俺がただ逃げ回ってたとでも思ってんの?」

「ん?」

「言っただろ―――‘暇つぶし’だって。でも聞きたいこともあったってさ」

 確かにそんなことを言っていた覚えはあるが、あんなのはこういった戦いにおいての常套句なので大し

て気に留めていなかった。裏世界に慣れてしまっていることが五右衛門の不利といえば不利だった。

 

 例え素直に秀吉が何かを語っていたとしても、その真偽を見極める術がない。

 あまりに多くの嘘を見すぎたが故に。

 

 彼が語る。

「此処はお前の故郷。だから、目的地が此処だと分かった時にお前が一番に来るだろうことはすぐ、想像

がついた………なのに、お前を出迎えるために俺が何の用意もしてないって?」

 薄く笑う。

「放り出された家屋や木材や鉄筋―――爆破のための火薬やら何やら、工作に必要なものが全て揃っ

てるこの場所で?」

 冷徹な瞳で。

 五右衛門の面を不吉の影が過ぎるのを何処か楽しげに眺めながら笑みを深める。高く掲げ、しかし閉じ

たままだった両のてのひらを開く。

 楽しそうに目を細めた。

 

「さーて………逃げ切れるかな」

 

 多くのスイッチを備えた起爆装置を翳して。

 

 刹那。驚愕した五右衛門が身を引くのと、安全圏である背後のビルに秀吉が飛び込んだのはほぼ同時

だった。

 躊躇いなくスイッチが入れられて秀吉の佇んでいた一歩手前の店が大音響と共に崩れ落ちる。

「くっ!」

 飛来したガラスの破片から目元を庇い、見失った相手の行く先を追うのは不可能と判断を下した。

 全速力でいま来た道を駆け戻る。もともと倒れかけていたビルの爆破をきっかけに連鎖反応的に商店

街が破壊されていく。

 背後から迫る破砕音と爆風。背を煽られて舞い上がる粉塵にむせ返りそうになる。呼吸をほとんどしな

い状態でどうにか避けきった。滑り込んだ後ろ側で砕け散った塀の欠片が道路を埋め尽くす。

 だがゆっくり休んでいる暇もない。駆け込んだ丁度隣の電信柱が揺らいで彼を押し潰そうと傾いでくる。

どんな力学と建築学を応用したんだが知らないが、ここまで見事に計算してあるといっそ「天晴れ」といっ

てやりたい。

 ギリギリで電信柱をかわし、降り注いできた看板の嵐をやり過ごし、襲い来る壁と塀から身を守る。右手

か左手に逸れたくとも両側の道はどんどん爆破で崩されてしまい、ひたすら直線疾走するしかない。思い

出の町並みがと嘆いている場合でもなく、追い討ちをかけられて結局最初の決闘現場・建設途中の地点

まで逆戻りだ。爆風で飛来した欠片に擦り傷を作り呼吸もままならずに舞い戻ってきた彼は、しかしゴー

ルを目前にして立ち止まらざるを得なかった。

 先の決闘現場をゴールとするならば、の話ではあるが。

 

 ………目指していた場所まで前方から倒壊を始めたらどうしようもないではないか。

 

 後ろから追いかけてくる爆風と倒壊物、前方から覆いかぶさってくる鉄筋の山。

 右手も左手も疾うに崩れてうず高い山となる。

 

「あんの、性悪………っ!!」

 

 うめく頭上へ無情にも鉄筋が降り注いだ。

 

 

 

 爆音と爆風が止むまで数分。工事現場に置き忘れられた旧式の火薬は充分すぎるほど役に立ったよう

だ。仕掛けてはみたものの思惑通りに動いてくれる可能性など実はほとんどなかった。カッコつけてはみ

たけれどこれで何の反応もなかったら態と逃げて直線の大通りに誘い込んだ側が無様というしかないで

はないか。

 ひとり安全な店内に身を潜めていた秀吉は爆破がおさまったのを見計らって顔を覗かせた。周囲の壊

れっぷりに自分でも呆れる。まさかこうも見事に壊れてくれるとは………余程、10年前の戦いでガタがき

ていたようだ。土木作業を続けるBKまで視界が開けてしまっている。

 ゆっくりと倒壊現場まで歩み寄る。相変わらず地面を掘り返す掘削音と振動のみがこの界隈で納まるこ

となく続き、積みあがった鉄筋とコンクリートと木材の山が辺りを席巻し、未だ微小の粉塵が漂っている。

じっくりと周囲を見渡した彼は足元で少し蠢いた黒い影に目を留めた。驚愕の後、感心したように目が見

開かれる。

 口元に不吉な笑みを刻んだまま足元の小石を踏み砕いた。

 

 ―――そう。

 こうでなくてはならない。

 

 まだ彼には、確かめたいことがあるのだから。

 

 

 

 胸の奥底まで吸い込んでしまった粉塵にむせかえる。ああ、ドジをした―――悔やむまではいかずとも

我知らず舌打ち。この様を見たならば例のいけ好かない師匠は何と言うだろうと痛む身体を抱えて五右

衛門は眉をしかめた。きっと「山へ戻れ」と命じられるに違いない。

 襲い来る木材や瓦礫に潰される事態だけはどうにか免れたもののあちこちに手傷を負ったことに変わ

りはない。両足はひきつれて動かないし肺は痛むし、肋の何本かはイカれているかもしれない。割れた額

から血が滴り地面に染みを形どる。小刻みに痙攣する腕をつっぱって立ち上がりたいのに、情けないこと

に下半身がついてこない。下手したら骨盤に亀裂も走っているだろうか。

(そこまではいってねぇ―――な、この痛みなら)

 冷静に判断を下しつつも鬱陶しいのは視界の半分を埋めんとする流血だ。頭部の傷は浅くても出血が

多くなる。

 咳き込みながら上半身を起こした五右衛門の視界前方に黒い影が広がった。誰かなんて考えるまでも

ないからますます頭が痛くなる。その人物は思ったとおり無傷で、変わらぬ笑みを浮かべたまま情感の篭

もらぬ感嘆の科白を口にした。

「へぇー、まだ生きてたんだな。流石というべきか?」

 地面に這いつくばった体勢のまま睨みつける。秀吉はそんな旧友の様子など気にも留めず、

「………生憎としぶとい性格してるんでね」

「全くだ。害虫なみだよなぁ、諜報員てのは」

 大きく足を振り上げた。

 

 ドガッ!!

 

「ぐっ!」

 顎を蹴り上げられて後ろの瓦礫に激突する。仰向けに倒れこんだ胸を思い切り踏みつけられて呼吸が

止まる。軽く力を込められただけで脳天を貫くような痛みが走った。加害者は淡々と腰の刀を抜くと白刃を

五右衛門の首の皮一枚となりに突き立てた。磨きこまれた刃に己の瞳が鈍く反射する。利き手ではない

右の手で刀を取り扱う秀吉はまだまだ余裕だ。

 ―――ざまぁねぇ………。

 自嘲の呟きを外部に覗かせる訳にはいかなかった。

「さて、あまり時間もないんでね。とっとと聞かせてもらおうか」

 先刻から穴掘りを続けているBKの背中はかなり小さくなってしまっている。どれだけ掘り進んだのかは

知らないが横にうず高く積み上げられた土と下水管の山が生々しい。

 少しだけ刃を肌に食い込ませ、屈んだ膝で喉元を圧迫しながら敵は問い掛ける。

 

「………‘望まれた死’とは、何だ?」

 

 一瞬、覗き込んでいる相手の瞳を素でまじまじと見つめ返してしまった。背景に夕闇を従える相手の表

情はよく分からない。真意を読めぬままに意地で五右衛門は言い返した。

「禅問答か?」

「はぐらかすな。お前は知っているはずだ、その答えを」

 精神論でもふざけて吹っかけているのかと思ったが意外なほどに秀吉は真面目だ。本気で問い掛けて

いるのだろうか―――しかし、残念ながら自分には皆目見当がつかない。‘望まれた死’だなんて、政府

機関のかなり奥底まで関わっている己でも噂にも聞いたことがない。新しい宗教か未来に悲観しての悩

みか哲学的解釈でもしたいのか。

 反応のなさに明らかに相手が失望の色を浮かべた。敵対関係にあるためかやたらそれがムカつく。

「役立たずだな、ブルー。その分じゃあ‘黒騎士の血’すら知らないんだろう?」

「何のことかさっぱりだね」

「自分ばかり裏の事情に通じてる顔をしてたってのにな。期待外れもいいところだぜ」

 胸を踏みつける足に更に体重をかけられた。骨が軋むのがわかる。真下の心臓が悲鳴を上げる。こん

なところで窒息死もないだろうと思いつついまの状況はまさしくそれ寸前だ。

 必死で考えを巡らせる。この場から逃れる方法は勿論、彼の言葉に対しても。

 

(‘望まれた死’………‘黒騎士の血’………?)

 

 全く思い当たる節がない。確かに自分は一般の隊員よりかは内部事情に通じているだろうけれど、こう

まで心当たりのない事を尋ねられると悔しくなるではないか。

「喋る気がないんならそれでいいさ」

 眼前の人物は黙りこくる五右衛門にどんな感想を抱いたのか、あっさりと問いの矛先を引っ込めた。代

わりと言うように刀の柄を握り直す。

 

「―――此処でひとりの人間の首が落ちる」

 

 笑みは幾分やわらいで見えた。

 

「それで、終わりだ」

 

 握り締めた左手に力が加わった。

 瞬間。

 

 ―――ッ!

 

「!」

 突如飛来した物体に慌てて秀吉は五右衛門の上から飛びのいた。第二撃を弾き飛ばせば周囲の瓦礫

に当たって砕け散る。それがくないであると認識するのにさしたる時間は要さなかった。一番最初に投げ

つけられたのが、隊員にしては珍しい仕様の槍であることも。

 遠ざかりそうになる意識を何とか整えて五右衛門は苦々しげに後ろを振り向いた。嬉しいような嬉しくな

いような………見せる顔がない、というのが正直な感想。秀吉は秀吉でやや高い足場に突っ立ち抜き放

っていた刀を左から右へと持ち替えて呟く。

 

「ようやくお出まし、ってか………」

「うっせーな。てめぇこそこんな処で何やってやがんだよ」

 

 背後に実働部隊を従えた信長は憮然として答えた。

 

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何だか呆気なくゴエがやられてしまいました。ごめん五右衛門、作者の力量不足だ………(涙)。

本当は秀吉に足蹴にされたゴエを描きたかったんだがそれは何だか色々と倫理的に

ヤバそーな絵になる予感がしたのでやめておいたよ(笑)。

 

しかし負けるのも仕方ないよふな。五右衛門はまだどっか「知り合いとの腕試し」って感覚が拭えない

みたいだけど、秀吉はしっかりはっきりばっちり殺すつもりでいますからネ! すれたゴエのが

非情な態度とりそうなモンだが、どうやら『コロクンガー』ではゴエのが秀吉より純情らしいっす(笑)。

てゆーかひよピンへの未練っつーかなんつーか。

「お兄さん傷つけたら悲しむよなぁ。おトモダチ付き合いも許してもらえなくなっちゃうかもっっ」

などと余計な思考が戦いの最中にゴエの脳裏をかすめていたかもしれません(それは問題だ)。

 

よーやくラストで本隊が到着しましたので次回はお久しぶりに殿やいぬちーがお目見えする予定です〜。

でも注目すべきはひよピンでも司令でもないんだよ………実にさり気なく登場してる人物が

とんでもねー事態を引き起こして下さいます。

それが誰なのかこの時点でわかったアナタに3000点。倍率ドン、更に倍☆ ← 大いに謎

 

そしていい加減話を進めようとこころに誓うのでした(汗)。

 

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