※リクエストのお題 : 恋人同士のジョミブルで、日常のふたり。
※「日常」にはなったと思うんですが、「恋人」の「こ」の字も出てこない状態に………(苦)。
※ブルーが天然に腹黒いです。ジョミーが天然にお子様でややお間抜けさんです。
※たぶん、一番可哀想なのはハーレイとヒルマン教授です。
※一応、アニメ設定です。
※その辺をご理解頂いた上でお読み頂ければ幸いです………。
「おはようございます、ソルジャー!」 「………おはよう、ジョミー」 そう答えたっきり、ブルーは自らの上に覆いかぶさっているジョミーを見上げてしばし停止した。 |
― Crapula ! ―
どうしてこういう状態になっているのかな? と、寝起きのあまりよく働かない頭でブルーはのんびりと考えを巡らせた。 初めに思ったのは何か怒ってるのかなとか、起こそうとしてたのかな、ということ。 「どうしたんだい?」 たっぷり三分は見詰め合ってから、ようやく彼は問いを発した。 「すいません。ちょっとだけお願いします」 と、ブルーの頭の下―――より具体的に言うならば枕の下―――で、モゾモゾと手を動かした。 ああ、そうか。 つまるところジョミーはわざわざ青の間までやって来て何かを隠そうとしているようなのだが、さて、その何かが何なのかとなると現段階では硬いものであるとしか察しがつかない。 ほっとした表情で彼は身体を起こすと実に楽しそうに唇に人差し指を当てて見せた。 「秘密ですよ」 正面きって頼まれてしまえば、ブルーには頷くしか選択肢が存在しなかった。 ヒントは、『ひと』の形をしていた。 まずやって来たのはヒルマンだ。 「お久しぶりです、ソルジャー・ブルー。お身体に障りはございませんか」 「大丈夫だよ、ヒルマン。今日は気分がいいんだ。―――何かあったのかい?」 「いえ、その………」 珍しくも言いよどむ。彼とて永年に渡り仲間を率いてきた面子のひとり、思考を読まれるようなヘマはしまない。 くすくすと笑みを零せば何処か困った表情を返された。 「何か面白いことでもございましたか」 「君があたふたしている様は珍しいから」 意地の悪い言葉を告げれば、相手はいよいよとため息をついた。 「………ジョミーが此処に来ませんでしたか」 「どうだろう? 僕はほとんど眠っているから知らぬ間に来ていたら気付きようがない」 日常についてであれば嘘ではないが、今日の出来事に対してであれば嘘となるセリフ。 やれやれと首を振ったヒルマンは船内の状況を二、三、報告して場を辞した。 最近どうもジョミーが反抗的で困りますと呟きはしっかと耳に残ったけれど、でも、彼は頑張ってるじゃないかとやっぱり聞き流すことにした。 次いでやって来たのはハーレイだった。 だが、少し。 「ソルジャー、率直にお伺いしてよろしいでしょうか」 「いいよ」 「ジョミーに何か頼まれませんでしたか」 「頼まれてるよ」 にっこり笑って頷けば、船長は虚をつかれたような表情を浮かべた。 「………本当ですか?」 「勿論。長生きしてほしいとか無理はしないでほしいとか、みんなの心配ばっかりしてないで偶には自分の身体を労わってくださいとか、目覚める度に彼の思念に頼まれてばかりだ」 「からかわれては困ります」 む、とハーレイが唇を噛み締める。 そんなことぐらい先刻承知、ジョミーの強すぎる思念は時に船内に留まって多くのミュウの精神をかき乱す。最近では日常茶飯事になりすぎて話題にすらのぼらなくなったけれど、しかし、彼の一喜一憂が周囲に伝染するのだから困りものだとすぐに愚痴っぽい気遣いに切り替わる辺りは相変わらずの生真面目さだ。 「彼が今日、あなたの許を訪れたのは分かっているんです。ただ、その時に―――」 「何かを託されはしなかったかと訊きたいんだろう? なら、何を捜しているのか教えてくれないかな」 先ずはそれからだと至極まともに言い返せば相手が答えに詰まる。 (………なるほど?) ヒルマンにもハーレイにも共通して感じるのは悪戯を見咎められた子供のような後ろめたさ。 「安心したまえ。たぶん、そんなに悪い結果にはならないから」 笑いながらハーレイを追い返す頃には、ブルーの頭にひとつの答えが導き出されていた。 「ジョミー。事情を説明してくれるかい?」 「………」 「ヒルマンとハーレイが物凄く控え目に何かを探しに来たよ。一体なにを隠したんだい?」 それでも向こうは先の指導者たちと同じく、我侭を窘められる子供のように往生際悪く視線を彷徨わせるものだから苦笑を零すしかない。 「―――君が隠したのは」 当ててみせようか、と両手を胸の前で組み合わせ、揃えた人差し指で相手を示す。 「ワインだ。違うかな」 『当たってる………!』 言葉よりも早く漏れ出した思念に笑みを零した。 あたふたとジョミーが駆け寄る。 「どうして分かったんです? 見て、ないですよね」 「あのふたりが共通して探すものなんて比較的限られているし、それに、彼らの表情には見覚えがあったからね」 「そうなんですか?」 ほんの少しだけ頭を垂れて、やや恐れ入っている感じの子供を手招きする。 恭しくも手渡されたワイン瓶を見てブルーはちょっとだけハーレイたちに同情する。 「どうして隠したりしたんだい?」 答えを促してみれば。 「僕を子供扱いするからです!」 ………実に子供らしい答えが返ってきた。 再び受け取ったワイン瓶を片手で転がしながらジョミーは唇をとんがらせる。 「僕だってもう『目覚めの日』を迎えて随分経つんですよ? 一般的に考えれば成人扱いされていい年齢じゃないですか。なのに、事あるごとにやんちゃだとか落ち着きが足りないとか精神的に未熟だとか言いたい放題言ってくれちゃって!」 だからこれは正当な反抗なんです! 彼の主張は、こうだ。 ある日、彼は特訓をしてもらおうと珍しくもハーレイの部屋を訪れた。 娯楽の類にはそこそこ興味がある。アルコールだってもう飲んでいいはずだ、成人したんだし! と強請ってみたものの、「とある国では飲酒は二十歳からなんだよ」とヒルマンのよく分からない理論でかわされて、祝い事があったら封を解くことにしようとハーレイがとっととワインを片付けて、ジョミーの機嫌は一気に悪化した。 「だから、ふたりがブリッジにいる隙にこっそりと―――」 「………ジョミー」 がっくりとブルーは項垂れた。 それだけ腹に据えかねたってことなのかな、と思えば可愛くもあるのだが。 (………このままじゃふたりが可哀想すぎるか) 持ち主に返すのが筋だが、意地だろうと根性だろうと頑張って奪ってきた彼の努力をあっさり水泡に帰すのも悪い気がしてしまう。 それに―――ジョミーの役に立てば彼らとて文句は言わないだろう。 「ジョミー、貸してくれるかい?」 受け取ったワイン瓶の中身を重さと感覚で推し量る。 「ワインは何を楽しむものだと思う?」 「え………? 味、ですよね?」 戸惑ったような答えが返された。 ク、と右手の人差し指で手招けばまるで最初からそこにあったかのようにグラスはブルーの手に納まった。一番細い柄の部分を二本の指だけで恭しく摘む。 「味は一番のポイントだけど、ワインを飲むなら同時に色と香りも楽しまなければ勿体無い。日の光のもとの色、照明を弾き返す色、テーブルクロスの上に描かれた陰影、それぞれに異なりそれぞれに味わい深いものだ」 ゆらゆらとグラスを揺らす度に地面に落ちた影が同じように揺れる。 僅かな傾きをもたせたグラスを顔に近づけて目を閉じる。 こころゆくまでふくよかな香りを堪能した後に、ほんの少し、唇を湿らすようにして味を確かめる。 グラスの縁に唇をつけただけでそっと手を離せば、じっとこちらを食い入るように見詰めていたジョミーが何故かこくりと喉を鳴らした。 ………そんなに飲みたいのだろうか。 いつの間にか正座していたジョミーが「はいっ!」と学生の如く手を挙げる。 「あ、あのっ、僕も飲んでいいですか!?」 「いいよ」 さらりと返してから、僕は飲まないけど、と付け足した。 「ええっ!?」 「ただ、」 愕然としたジョミーが身を乗り出すのを手を出す仕草で押し留め。 中身が入ったグラスと、空のグラス。 半ばまで注がれた真紅の液体が微かな振動を感知してゆらゆらと揺れている。 「これから出す課題を君がクリアできたら、一緒に飲もうかな、とは思うよ」 成功報酬がこれなんて君には不服だろうけれど、と薄く笑うとそんなことありません! とやたら元気良く否定された。 「どんな課題ですか?」 「簡単だよ。グラスにワインを注いでくれたまえ」 ただし。 両手は使わずに、サイオンのみで。 告げるや否やジョミーの眉が情けなさそうに下がった。 言葉にすれば、サイオンでグラスが動かないよう支えつつ、瓶を傾けてワインを注ぐだけのこと。 隣のグラスと全く同じ量にしようと思うなら、予めサイオンでグラスに「これ以上は注がない」との意志を篭めた『ふた』をしておけばいい。 だがそれは、繊細なコントロールを苦手とするジョミーにとっては至難の業で。 例えばこれがグラスを割れとか瓶を粉微塵にしろとかだったら彼も肩を落としはしなかったろう。 「多すぎたり少なすぎたりした場合は飲み干していいよ。………空にするのはまずいから、そうだね、チャンスは3回にしておこうか」 ううう、とジョミーが下唇を噛み締める。 「挑戦しなかったらどうなるんですか」 「このままふたりにワインを返そう。勿論、君にも謝ってもらうけど―――」 「いまグラスに入ってる分はどうするんです?」 「君にあげる訳には行かないし、僕も進んで飲みたいとは思わないし………フィシスも嗜む程度だし。そうだね、どうせならハーレイにあげようか。ヒルマンでもいいけど」 何に拘っているのかと首を傾げれば密やかな彼の思念が伝わってくる。 流すなんて勿体無いし瓶に戻すのは認め難い。 「分かりました。この課題、絶対にクリアしてみせます!!」 僕の意地と名誉と後継者の名に賭けて!! と力一杯、叫ばれて。 そこまで意地を張るようなことだったかな? と、改めてブルーは首を傾げた。 ジョミーがじっと目を閉じて、精神を集中する。 「………ブルーッ」 「なんだい?」 ベットの端に腰掛けたブルーの態度は実に暢気なものだ。 「―――隣のグラス、どけるのって、ダメですかっ。もしくはグラスを床の上にっっ」 「隣のグラスをどけたら基準が分からなくなるだろう? ましてや、希少価値の高いワインを床に向けて注ぐなど論外だよ」 さらりと言い返せばグッと相手が答えに詰まる。後者は難癖に思えないでもないが前者が正しければ反論は封じられる。 (………肩に力が入りすぎてるな) 傍から見ていると何処に無駄な力がかかっているか分かり易い。 視線の先ではジョミーが注ぐ量を調節しようと四苦八苦している。そーっと、そーっと、と無意識に呟きながら瓶の傾きを調節している。僅かに隙間から覗いた雫がぽとぽとと実にじれったい速度でグラスへと吸い込まれる。 「ああっっ!!」 咄嗟にバランスを戻したから中身をぶちまけこそはしなかったものの。 「―――残念」 「う………」 ブルーが告げるまでもなく、グラスには溢れんばかりにワインが注がれていた。表面張力でかろうじて器に留まっている赤い液体は確かめるでもなく規定を超えている。 「得をしたじゃないか、ジョミー。さあ、飲みたまえ」 「………あの、ふと思ったんですけど」 「なんだい?」 「もしかして僕は、失敗し続ければ飲み放題なんじゃ………」 「三杯分だけだけどね。気にせず飲みたまえ。君が嬉しいなら僕も嬉しいよ」 あなたには何の利点もないのに、との声を軽やかに無視してブルーは笑う。 君が飲みたがっていたからこそ持ち出した策なのだと、失敗しても成功してもジョミーだけはワインを飲むことが出来る実に甘やかした課題なのだと、いい加減、彼も気付いたかもしれない。 「に、っが………っっ!!!」 「だろうね」 苦味の底に流れる旨みを感じ取れるようになるまでは、多少、飲み慣れる必要がある。 グラスを振り上げてジョミーが叫ぶ。 「物凄く苦いじゃないですか! ハーレイやヒルマンはどうしてこんなものを後生大事に飲むんです!? オレンジ・スカッシュの方が百倍も美味しい!!」 「うん、そうだね」 ―――少なくとも現時点の後継者にとっては前者のようだ。 そりゃあ、君にとってはオレンジ・スカッシュの分かりやすい甘さと柑橘系の香りの方が好ましいに決まっているとも。あれは『ママ』が君のために用意してくれたもので、飲み慣れたもので、過ぎ去った懐かしい日々を思い起こさせるもので、更に言うならば。 「………ずるい」 「じゃあ、やめるかい?」 「いえ、やります」 再度の問いに返されたのは否定だった。彼がやりたいと言うならば止める理由もない。 「………ジョミー」 「なんれすかっ!!」 グラスをすったーん! と勢いよく丸テーブルの上に戻したジョミーの目が据わっている。 え? だって、先刻飲んだばかりだよ? 流石に早すぎるよね? と、誰に向けたともしれない呟きを内心で繰り返す。 「ソルジャーっ! いーたいことがあるならはっきりゆってくだすぁい!」 「………君の言葉遣いが幼児化してる気がするのは僕の耳が遠い所為かな?」 「失礼な! あなたはキレイです!」 「―――ありがとう」 うん、ここは礼を言うべきところではない。話が噛み合ってない。 カタカタと震えた丸テーブルがふわりとグラスごと宙に浮かび上がる。 「ジョ、ジョミー。なにもテーブルまで動かさなくても………」 「こっちの方が入りやすい気がしますっっ!!」 たぶんそれ、君の思い込み。 なんてことをジョミーに甘いブルーが口に出来るはずもなく。 ゆらーりゆらーりと一定の高さで踏み止まりながらも丸テーブルとワイングラスと赤ワインの瓶は追いつ追われつを演じている。 いまや完全に瞳をふらつかせたジョミーが、正座していた己が膝をぽん、と叩く。 「ブルーっ! 僕、分かりました!」 「え?」 「瓶の中身を移動すればいいんれすねっっ! 移動対象がちっちゃいものなら僕でもできるんじゃないかってヒルマンがゆってました!!」 そうだね、確かにそれも回答のひとつではあるね、でも物質移動にはより細やかな精神集中とサイオンの制御が必要―――なんて講釈をブルーが垂れるより早く。 「えいやっ!!」 パチン! とジョミーが指を鳴らすと同時。 ワイングラスは中身を溢れさせた。 がっちゃん! と、いっそ割れないのが不思議なくらい盛大な音と共に丸テーブルとワイングラスとワインの瓶は床に落ちる。 ………まあ。 遠心力の余韻を残して派手に波打つグラスを見ていたジョミーの瞳が、途端に涙で満たされる。 「ジョ、ジョミー? ジョミー?」 一度はベットから腰を上げたものの、微妙に体力が足りなくて再び腰を落とす。 「僕はっ………僕はっ、ダメな奴らっ………!!」 がっくりとジョミーが両手を床につく。 「僕なんて………っ! 力は制御できないしミュウの歴史は長すぎて覚えらんないしいつまでも人間との和解を考えてるしワインが美味しいって思えないしぃぃぃ―――!!」 「え、あの、ジョミー? 他はともかく人間との和解はいい考えだと思うよ? それにほら! おとなでも子供っぽい味覚のひとはいるんだから別に君の舌が三歳児なみに未発達でも何も恥じ入ることは」 ブルーの言葉は。 何気に容赦がなかった。 「三歳児って三百歳の百分のイチぃぃぃぃぃ!!!」 ジョミーが床に崩れ落ちる。 だって君はまだミュウになって間もないし、ミュウとしての経験値だけで言えば赤ん坊も同然なんだから気にしちゃいけないよ―――なんて続けては駄目なんだろうなと、落ち着いた顔の下で物凄く慌てながらもブルーはかろうじて冷静な判断を下した。 にじにじとベットの端まで寄ってきたジョミーがすっかり涙ぐんでブルーを見上げる。 「―――ワインぐらい。そのうち飲めるようになるよ」 急いで成長する必要はないんじゃないかな。 「………っ、でも………!」 肩を震わせた彼はやおら立ち上がりると、ブルーにしっかとしがみついた。 「うわっ!?」 ただでさえ体力には難のある年長者が受け止めきれるはずもなく共倒れとなる。 抱きつかれたままの姿勢で薄青い天井を見上げる。 頭を撫ぜていた時と同じ感覚で背中を叩く。 至近距離からジョミーがじっと見詰めてくる。 「僕っ………ハーレイたちが、いっしょ、飲んだって………!」 「ジョミー?」 「って―――僕だ、って………っ!」 もはや自分でも涙を抑えきれないのだろう。力任せに抱き締めてくる腕からかろうじて逃れた右の手で、しゃくりあげる彼の頬に流れる涙をたどたどしく拭う。 ―――嗚呼。 悪いと思いつつも隠したのは子供扱いされたから、仲間に入れてもらえなかったから、意趣返ししてやろうという悪戯心から。 知らない過去の出来事を語る彼らが、おとなに成り切れない自身の曖昧さが。 参ったなあ、と苦笑する。 大切に、忘れずに、ひとつひとつを刻み込むように―――覚えていくのに。 「………ブルー」 ジョミーが瞬きを繰り返す。 「お願い―――す、から………と、いっしょに―――」 僕は。 あなたを支えたい。 僕は、―――『そう』なりたい。 「………」 「―――ジョ、」 聴き取ろうとした言葉は耳元を掠めて消える。 ほんの僅か。 しばしの沈黙の後、こんな時ですら速まる素振りを見せない己が鼓動に聊かの落胆を覚えつつ、そこだけは若干の赤味を宿した頬の熱がバレなければいいと思いつつ、上から覆い被さったまま動かなくなってしまった彼の様子を窺う。 「………ジョミー?」 「………」 「あの………ちょっと、重―――」 「………―――」 やがて、高性能の補聴器が捉えたのは。 この子は。 零れ落ちた溜息の大半は脱力で占められていたように思う。伝わった感情に想いを廻らせて。 正直、―――彼の望みを叶えてやれる自信はない。 「お互い様、かな」 苦笑した後にもう一度だけ強く彼を抱き締め返した。 「そんな訳って、ソルジャー………」 「説明になっていない気がするのですが」 あんまりにもあんまりな長のご説明に、一生懸命に背筋を張って耳を傾けていたハーレイとヒルマンは揃って顔を覆った。 楽しみながらチビチビ飲もうと思ってたのに、と常に無い愚痴をヒルマンが零したとしても一体誰が責められるだろう。 咳払いをひとつ。 「ところで、ソルジャー・ブルー。ジョミーは起こさなくて宜しいのですか?」 「久しぶりに深く眠れているようだから起こすのも悪いよ」 二日酔いにはならないだろうけど、あと数時間だけ眠らせてあげてくれないか、と重ねて頼まれれば前ソルジャーを敬愛しているふたりが断れるはずもない。 「ところで、ヒルマン。ジョミーの訓練はもう少し内容を変えた方がいいかもしれないね。防御を主体として教えているようだけど、それでは彼が苛つくばかりだ。時に攻撃をメインとしたメニューも組み込んでやりたまえ」 「しかしソルジャー。ジョミーの思念波に対抗できる者がおりませんので………」 「ならば僕が相手をしよう」 「ソルジャー!」 ハーレイの声も何処吹く風。 「いいじゃないか少しぐらい。それが駄目ならもう少しジョミーが肩の荷を降ろせるよう取り計らってやりたまえ。鬱屈した感情を抱え込んだままでは出来るものも出来ないし伝わるものも伝わらない」 「―――ソルジャー」 流石に付き合いの長いハーレイは何かを察したらしく。 「何か、あったのですか………?」 問い掛けてきたものの、ブルーが満面の笑みと共に「何も?」と返せば、僅かな沈黙ののち「もういいです」のぼやき声と共に素直に引き下がった。 ヒルマンと並んで辞去の意を告げる。 ふたりの背中が遠ざかったのを見届けてから、深い息と共に身体をベッドへと沈めた。こんなに長い時間、起きて喋っていたのは久しぶりだ。 「………君の所為だぞ」 ジョミーが感情を整理しきれないのはやるべきことが多すぎるからに違いないと、ハーレイに八つ当たりしてしまったではないか。 たぶん、二日酔いには至らずとも酩酊に等しかった彼は語った言葉も取った行動も朧気にしか覚えていないはずだ。百歩譲って課題を出されて杯を呷った時点までは記憶があったとしても、チャンスがあと一回残っていたと思い出したとしても、肝心要の出来事に関しては怪しいことこの上ない。 隣で幸せそうに眠る少年はしばらく起きる様子もなくて。 ただ。 (―――僕だけが覚えてるのは、不公平な気がする) だから、あの時。 微かに唇が触れ合ってしまったなんてことは、絶対、絶対、絶対教えてやらないのだ。 何かのきっかけで思い出したならその時初めて肯定してやろう。告白してきたら「実はね」と打ち明けてやろう。どちらにせよ彼は驚いて、どうして黙ってたんですか! と憤るに違いない。 ―――人は、ワインなんてなくても酔うことが出来る。 次の機会があったなら、他の手を借りること無く酔ってみたい。 その言葉に、想いに、眼差しに、彼の全てに、頭の天辺から爪の先まで余すところ無く。 ほんの一瞬の触れ合いだけで随分な手管を示したかと思えば、礼儀知らずにも先に寝てしまう。 |
こい………びと………??(もはや疑問符しかつかない)
す、すいませんすいませんすいません、恋人同士っつーかむしろ自覚の前段階
みたいな話にっっ………!!(猛省)
つまるところブルーさんはジョミーが精神的に成長して告白しに来るのを待ってるってことなんすヨ!
相変わらず黒いネ! ← 必死に誤魔化そうとしている。
タイトルはラテン語で「酩酊」とか「酔っ払い」の意味になります(たぶん)。
翻訳サイトで翻訳しただけだから違ってても責任持たないヨ☆
ワインの飲み方の礼儀なんて知らないので細かいところはスルーします。
ハーレイの飲み友達はヒルマンじゃなかった気もしますがスルーします(調べろよ)。
こんな感じになってしまいましたが、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです〜っ。
リクエストありがとうございました♪