アンケートの1位は「怒り心頭でブルーを問い詰めに行く」でした〜♪

 

故にその設定にそって話を練ったつもりだったのですが―――

何だか結局「全部乗せ」になったよ、みたいな(死)

 

ちょっ………アンケの、アンケの意味は………!!!

でも、アンケがなければこの話運びはなかったんですぜと苦し紛れに言ってみる。

駄目ですか。

そうですか。

orz

 

 

 

 


 勿論、何が一番正しいのかは分かっている。

 誰かに言われるまでもない。受け入れればいいだけだ、認めればいいだけだ、許せばいいだけだ、既に遠い過去となった出来事など。

 咎めたところで誰が幸福になるのか。
 責めたところで何が報われるのか。
 非難したところで何が戻ると言うのか。

 分かっている、分かっている、分かっている。
 誰が悪い訳でも何が悪かった訳でもなく、強いて言うならば『運命』がそうさせただけのこと。喩え自らの愚かさと無力さを見い出してもそれこそまさに過去の悪しき遺物だと彼は謗るだろう。

 嗚呼、だが、理性と感情は違う。

 理想と現実は違う。

 いますぐに悟りきった聖人の如く赦せるはずもないのだ。

 あの後の己は何を思って行動していたのか。恨みも憎しみも越えていたのか。あるいは―――。

 悩んだところで答えは出ない。

 そして。




 どれほどに悩もうとも時間は経過するのだ。

 


GE/BP(1)


 


 ここ数日の装いを覆すかのようにどうしたことか天候は下り坂だ。山の天気は変わりやすいとよく聞くけれど此処は一応海辺だろうと取り留めのないことを考える。
 午前中の強制労働のようなレポート作成から解放され昼食をとってから向かったのは最近の行き着けであるカフェテリアだ。今日も今日とて此処で会おうとジョミーと約束した。課題は? と問い掛けて、大丈夫! と胸を張られたのを覚えている。

(―――しかし)

 遅いな、と。

 ブルーは思った。

 彼が来てから飲み物を取ってこようと思っていたから真っ白のテーブルには何も置かれていない。周囲の喧騒を耳にしながらひたすらに窓の外を眺めるのはつまらないと言えばつまらない。

 いつもならジョミーはブルーを待たせることなく訪れていた。
 5分前精神で常に準備万端で待ち構えていた。目が合った瞬間に零れる笑顔にかわいい犬耳とふさふさ尻尾が見えたのは気のせいとは思えない。

 臨時放送が午後から雷雨の可能性ありと天候の不順を伝えている。

(どうしようか)

 待っているのもひとつの手ではある。
 だが、雨が降ってきてしまったら彼は間違いなくずぶ濡れだ。

(迎えに行こうか)

 いつもいつも元気な彼が今回ばかりやって来ないのも気になった。何か突発的な事態が生じて連絡を取るに取れない状況にあるならまだマシで、最悪なのは連絡を取ろうとすら考え付けない状況にあることだ。

 例えば、倒れているとか(あんなに元気な彼が?)
 例えば、足止めを食らっているとか(ならば思念のひとつも寄越すだろう)
 例えば、待ち合わせの時刻を忘れているとか(それこそ有り得ない)

 何らかの対外的原因から思念のひとつも紡げない状況に追いやられていることをこそ恐れる。己に向けられていた密やかな監視の目が彼にまで伸びたなんて考えたくもない。

(仕方が無い)

 偶には自分から会いに行こう。

 君の不在が心配だったのだと告げれば少しは安心してくれるだろうか。

 どうも彼は自らがブルーに対して抱く感情と、ブルーが彼に対して抱いている感情に絶対的な相違が生じていると―――おそらく間違いではないのだが―――つらい思いをしているようだから。

 こうと決めてしまえば話は早い。
 悪天候の予報を聞きつけて退避してきた生徒たちの波に逆らってブルーは席を立った。








 合同臨海学校の場に宿舎はふたつ。自分がいる東エリアと、彼がいる西エリア。間に他の施設やらグラウンドやらを挟んでいる関係で宿舎間の距離はかなりある。思えば彼にばかり歩かせていた、次に会う場所は宿舎の真ん中に位置するグラウンドにしてみようと考えながら。

 他校生との交流が目的とは言え共に過ごす面子はほとんどが同じ学校の生徒である。西から東へ、東から西へと渡り歩く者は稀で、事実、西エリアに近付くほど不躾な視線を投げかけられることが増えた。見慣れない人間、出自の明らかでない人間、敵か味方か定かでない人間に抱く感情など誰でも同じようなものだ。

 何食わぬ顔をして宿舎へと足を踏み込むと天候が悪い所為か人影は存外多かった。時に向けられる不審の目を綺麗さっぱり無視してブルーはきょろきょろと辺りを見回した。
 比較的、相談しやすそうな同年代の集団を見定めて近づく。

「あの、すいません」

「え?」

(なんだコイツ)
(やぼったい格好―――男? だよな、たぶん)
(メガネ分厚いなあ)

 振り向いた瞬間、ブルーの存在を認めた瞬間、零れ落ちる感情の切れ端。
 少し意識を集中するだけで意識下に飛び込む『声』も『映像』も格段に増える。「聞かない」と決めていれば支障はないのに、「聞こう」と僅かながらも努めた途端にこれなのだからなかなかにサイオンは厄介だ。
 その気はなくとも読み取ってしまう己に向けられた『評価』の数々は笑って受け流す。

「ジョミーくんに会いに来たんですけど、いますか?」

「ジョミー?」

「あいつに用事でもあったのか」

(最近あいつ付き合い悪いいつも出かけてる今日は一緒だったけど)
(ひょっとしてコイツが原因か他校生どうやって知り合ったわかんない奴)
(妙にしおれてた何かあったどうせそのうち元気になるどうでもいい)
(腹へった疲れた遊びに行きたい課題がイヤだ)
(遊びに行きたい天気が悪いめんどい部屋に引きこもるなんてあいつらしくないもしかして本当に具合悪いのか)

 打ち寄せる取り止めのない思考と共に閃く映像の数々。
 彼らの『記憶』の切れ端が、ほんの一瞬、連想した映像を特定の人間だけが認識可能な空間に描かれる。『声』として捉えたはずの情報に『絵』が付いてくるのは能力の妙か。 

 ジョミーの同級生と思しき少年たちはちょっと困ったように首を傾げた。

「あいつなら部屋で休んでる………と、思う。体調悪いっつってたし」

「伝言あるなら伝えておくけど―――」

「いえ、少し顔を見たかっただけですから。ありがとうございました」

 深くお辞儀を返して早々に踵を返した。
 彼らのセリフの合間から『視』えたのは日の下で調査に精を出しているジョミーの姿、一緒にふざけて遊んでいる姿、それから、何故か急に表情を曇らせて宿舎へ戻っていく姿。

 何かあったのだろうか。彼があんなにも沈んだ表情をするなんて。

 人影が途絶えた瞬間を見計らって廊下の角を折れ、彼らの『記憶』を頼りに道を辿る。追い駆けるのは『他者』の視点によるジョミーの後ろ姿だ。ぼんやりと軌跡を描くその背中はとある角部屋に吸い込まれて消えた。

 此処だろうかと、扉を前にしばし悩む。
 部屋のプレートに手を当てて慎重に中の気配を探る。誰かいることは間違いない。いるのが、見知った人物であることも。
 それでも、押し込めたような気配と胸を圧迫する重苦しい空気にいささか躊躇いを覚えないではない。

 そっとしておこうかとも思ったがここまで沈んでいる様を目の当たりにしては帰ることも出来ない。

「ジョミー………いるんだろう?」

 低く声をかけてドアノブを回せばなんの抵抗もなく扉は開いた。カーテンが締め切られ、灯りのひとつも点いていない部屋。

 ―――らしくない。

「………入るよ」

 巡らせた視線はベッドの上で固定される。部屋の主はシーツにくるまったまま反応を示さないが、僅かに覗く隙間から目映い金髪が確認できた。

 カーテンを開けようかと思い、どうせ外は曇りだと思い直す。
 電気を点けようかと思い、彼が嫌がるだろうと考え直す。
 ピクリとも動かず声のひとつもない相手に戸惑いながらもベッドに近付き、静かに枕元に腰掛けた。

 少しだけベッドが軋む。

「どうか、したのかい」

 ちらりと見下ろした右手後方、彼の頭とおぼしきところに手を伸ばし、深く被さったシーツはそのままに幾度か撫ぜた。
 右てのひらに当たる感触はあたたかくやわらかかった。
 ほんの僅か彼が身じろぎする。小動物みたいだ。

「………て………」

 今日、初めて聞く彼の声は少しだけ掠れていた。

 ほんの一拍。

 間を空けてから。

「………て、来たんですか………」

「君が来なかったから心配になった。―――何か、あったんじゃないかと」

 堆いシーツの山がぴくり、と震える。
 やがてオズオズと動き出し、おそらくシーツの中でこちらを振り向いてくれたのだろうが、ならば早く顔を見せてくれと言いたい。

「君の同級生も心配していたよ。頭が痛いとかお腹を壊したとか転んで怪我をしたとか理由があるなら」

「子供扱いしないでください」

 ようやく彼らしい答えを聞けて安心する。
 クスクスと笑いを零していたら、シーツの合間から抜き出てきた手に右腕を掴まれて驚いた。

 彼は未だ顔を見せてはくれないけれど。

「………ジョミー?」

「………」

「手が、熱いよ。やはり体調が」

「大丈夫です。それより―――聞きたいことが、あって」

 調子を取り戻したように見えて未だ沈んでいる声音。

 戸惑いと気遣いを極力内に秘めたままブルーは首を傾げた。

「何を聞きたい?」




「あなたが、死んだ時のことを」




 僅かに。

 囚われた腕が震えた。




「僕は地上の仲間を救うのに必死で」

「あなたの様子を探ることもあなたの声を聞くことも出来なかった」

「だから僕は、あなたがどうやって亡くなったのかを知らない」

「知りたいんです―――駄目ですか」




 瞳を隠したままでも伝えられる強い感情。

 けれど、読み切れない。

 普段は何を考えているか手に取るように分かるのに、こんな時ばかり彼の感情は読めなくなる。

「また、悪い夢でも見たのかい」

「いいえ。でも、聞きたくなったんです」

 答えて答えられぬことはない。
 しかし、どう伝えればいいのだろう。あの時の感情を、想いを、覚悟を、彼に。下手を打てば『死』の感覚を追体験させることになる。

「………君と別れて。戦艦の攻撃を潜り抜けてメギドを爆破した。それだけだよ」

「あなたの力はつきかけていたはずです。どうやって破壊したんですか」

「サイオン・バーストだ。力尽きようとしていた僕に取れる最後の手段がそれだったからね」

 穏やかに笑いながら左てのひらを見つめる。あの頃よりも更に白く頼りなく、絆創膏の巻かれたか細い手、それでもかつてよりはまだ健康だろうと思われる手。

 少し。

 右手首にかかる力が強まった。

「本当、ですか」

 本当だとも。そうするしかなかった。

 強い攻撃力を誇る己がサイオン・バーストを引き起こしたならば、メギドの爆発に巻き込まれたならば、戻ることはできないと分かっていても。

 でも、と。ジョミーが呟いた。

「―――サイオン・バーストは精神的、あるいは肉体的に、強力な『痛み』を受けなければ発動しないはずですよね? あなたは………自力で引き起こしたんですか」

「そうだよ」

 答えるのに若干の間が空いた事実は否めなかった。

 ………覚えている。

 確かに力の制御が利かなくなっていたが、最後の引き金を引いたのは自分ではなかった。中枢で対峙した人物、向けられた銃口、限られた時間。

 敵の攻撃を防いでいるだけでは目的を果たすことは出来ない。




 だから、『彼』の銃弾を敢えて受けたのだ。

 最後のきっかけとするために。




 その事実を『彼ら』に告げる気はなかった。己ひとりが胸に秘めていればいい役立たずの記憶だ。

「もとより僕の命は限界以上に引き伸ばされていた。張り詰めた糸を切ることは誰にでも容易い。ほんの少し手を加えるだけで―――」

 言いながらブルーは不思議な感覚に囚われた。

 実際に『あの時』を再現しているかのように目の前に光景が浮かんでは消える。空気のない空を舞う感覚、目の前を過ぎる攻撃、沈む敵艦、宙に張り付けられた巨大な十字架のような―――。

(………なんだ?)

 眉を顰めた。

 これ、は。

 ―――自ら引き出した『記憶』ではない。

 遠く望む管制室の人影、内部に侵入した折りの感覚、生身の人間をサイオンで跳ね除けた衝撃、断末魔の思念、恐怖、混乱、払い除けて進む、視界が霞む、足がふらつく、背後から攻撃を受けた、痛みは麻痺している、振り向き様に敵を吹き飛ばして中央の

 制 御 室 で 。




「やめたまえ!!」




 鋭い叱責と共に。

 脳内を巡る映像は途切れた。

 それに確証を得て僅かに唇を噛み締める。
 怒りよりも戸惑いが先に来た。
 かつての彼は、己の身勝手な振る舞いをこそ責めたのではなかったか。遠慮なしに内面に踏み込まれることを、断りなしに想いを読まれることを。

 ―――なのに。




「ジョミー、………僕の記憶を『読んだ』ね?」




「………あなただって僕の記憶や感情を読んでいる」

「少なくとも、再会してからは君の内面を進んで読んだ覚えはないよ」

 きっぱりと言い切った。

 風が出てきたのか、締め切ったカーテンの向こうで僅かに窓が震えている。幾許かの沈黙を挟んだ後に未だ蹲る相手が零したのは。

「どうして―――」

 ブルーが部屋に来た時と同じ言葉のようで。

 少しだけ違っていた。

「―――どうして、此処へ?」

「どう、してって」

 不思議に思われることこそが不思議で、微かに愁眉を寄せたまま静かに振り返り。
 シーツの合間から覗く視線の鋭さに息を呑んだ。

 まるで燃え盛る緑の炎だ。

 数度の瞬きの後に彼はゆっくりと上体を起こす。掴まれたままの右手首は痺れていて、引き摺られる形で僅かに身体を後方へ倒しながらも、彼に寄り掛かってしまう事態だけは意地で回避した。そんな影の努力を察したのかジョミーは微かに笑う。

 声ばかりは低く、落ち着いて。

「………僕自身がどうにかしなきゃならないと分かってたんです。だから黙って部屋に戻ってきたのに」

 冴え渡る瞳に覗く感情を読み切れない。

「どうして、―――尋ねて来たんです?」

 躊躇した。

 彼は、怒っているのだろうか。誰に? 自分に? 彼自身に?

 あるいは、此処にいない誰かや責めようのない何かに対して。

「………僕が君のことを心配するのは当たり前じゃないか」

「そうですね。確かに、あなたは僕を見捨てない。分かっていた。分かっていたのに―――僕は結局、最後の最後であなたに甘やかされている事実を信じたがっている」

 互いを心配するのに資格が必要かと問えば否定が返される。
 読み取れないまでも彼が妙な不安に追いやられていることが察せられる。内面を窺い知ることさえ出来れば傷つけずに済むだろうに、望む言葉を与えてやれるだろうに、こころの叫びのひとつも聴こえて来ない。

 正面から向き合う視線に心臓が押し潰されそうだ。

「なら、質問を変えましょうか。ブルー」

 緊張を孕みながらも表面上は彼の精神は凪いでいた。

 だから、より一層に。

 答えてください、と。

 澄み切った彼の瞳が僅かに細められ、探りようがないほど深くに感情を潜り込ませる。




「あなたを『殺した』のは―――、誰ですか」



 動けなかった。



 

→ (2)

※WEB拍手再録


 

ジョミーがブルーを問い詰めに行くとゆーよりは

ブルーがジョミーに問い詰められに行ってるミステリー。

 

執筆中BGMは宇○田ヒカルの『Beautiful World』でよろぴこ(ぴこ?)

理由などない。単にラジオで流れていたからである。

いっそバックに『宇宙戦艦ヤ○ト』でも流しておくがいいヨ!(地球から旅立ってどうする)

 

背景色が内容に反して明るい理由はラストで判明すればいいな、と。

 

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