石たちの思い出


 

 ゆらゆらと揺れる視界の中、徐々に地面が近付いてくる。このまま真っ暗な坑道の中に足を下ろせば即座に闇に包まれることは確実だ。
 地面までの距離に大方の目安をつけて刹那はロックオンから手を離した。ペンダントが放つ光が消えない内にと腰に下げたザックから取り出した手持ちランプに火をつける。間一髪で間に合ったことにほっと息をついた。
 刹那よりやや遅れて地に足をつき、ペンダントを摘み上げてしげしげと眺めていた青年が。
 上を見て、こちらを見て、微苦笑を浮かべる。
「………のぼるのは無理そうだな」
「ああ」
 ランプで周囲を見回す。幸いにして道は続いている。下りてくる時に見た町並み、線路や山々との位置関係から凡その現在地を推測する。
 刹那は少しだけ青年のことを仰ぎ見た。
「―――同じだった」
「あ?」
「お前が、降りてきた時も同じだった」
 昨晩もこのペンダントが、お前が落ちるのを防いだのだと告げれば相手は僅かに目を見開いた。幾度かの瞬きの後、喜ぶのかと思いきや浮かべたのは何とも言いようのない曖昧な寂しさが滲んだ表情で、刹那はそれを不思議に感じた。
 さて、どうするかとあらためて考え込む。
 先刻の様子では軍も警察もきな臭いが、他に確たる宛てがある訳でもない。いずれにせよ此処から抜け出さなければ始まらないと、刹那は右手奥の坑道へと相手を誘った。
「此処がどこか分かるのか?」
「大体はな。………むかしの坑道だ。いまはもう、使われていない」
 広い洞では互いの声が木霊する。微かに囁くような地下水の流れる音が響く。時に視界を掠めるのは此処を住処とする小動物の類か、ランプの灯りではどうしたって全ては照らし切れない。何度も足を縺れさせながらどうにか進んで行く。
 広い空洞に出たところで休憩を取ることにした。宛てもなく歩き続けることは精神的な疲労を伴うし、それに、朝からまだ何も食べていなかった。
 壁沿いに並んで腰掛ける。流石にあたたかい食事は無理だったが、あれだけ暴れたにも関わらずバックの中の食料が潰れてなかったのでほっとした。パンの上に目玉焼きを乗せて青年に手渡す。出来れば塩か胡椒で味付けしたかったが多くは望むまい。
「ありがとな。腹へってたんだよ」
「他にりんごと、飴玉がある」
「そっか」
 ぼそぼそとパンを食べていると、やたら感心したような眼差しで見詰められた。
「………なんだ」
「ちゃんとしてるなあと思ってさ。オレなんか咄嗟に何を持ってくることもできなかった」
「オレの家の物を勝手に持ち出していたら、それはそれで問題がある」
「ははっ、違いない! けど、感心したのは本当だぜ。よくそんな小さなバックに色んな物を詰め込めたよな」
 ランプも火打石もあるし食料だって入ってる。魔法のバックだとでも言えば、町で会ったあの女の子なら喜んでくれるんじゃね? と告げられる。本心なのかからかっているだけなのかイマイチ判断がつかないが悪い気はしなかった。
 青年の体格を考えるとこの量では絶対に足りない。自分のパンも渡そうかと考えたが、きっと、そんなことしたってロックオンは受け取ったりしないのだ。
 指に絡んだ黄身を舌で舐め取りながら隣人は憂鬱そうな表情になる。
「………逃げて来ちまったけど、大丈夫かな。あの、おやっさんとか、汽車のひととかさ」
「問題ない」
 断言すると困ったように笑われた。関係のない人物を巻き込んでしまったと悔やんでいるのだろう。刹那にしてみれば、ここまで来た以上はもう無関係なんかじゃない。遠慮など他人行儀に過ぎるからやめてもらいたかった。
「―――ロックオン」
「ん?」
「お前は、どうして此処へ来た。軍に所属していたのか」
「それは―――」
 口元に手を当ててしばし青年が考え込む。
 やがて、「話さないのも返って失礼だよな」との呟きの後に、ぽつぽつと事情を語り始めた。
 もともと彼は此処よりも更に北の地方に住んでいたらしい。両親や祖父母は彼を残して先に逝ってしまったが、家や家畜、ちょっとした金銭を残してくれたのでどうにか暮らしてこれたのだと語る。
「贅沢したい訳でもなかったからな………ヤクたちの世話をしてたらそれだけで一日が終わっちまうような毎日だ。山奥だから近所付き合いもなくて多少は寂しかったが、やっぱ、家は大切だし」
 思い出が詰まってるからなあとゆるゆると笑う。彼としては平凡でいいから、とにかく静かに暮らして行きたかったに違いない。
 しかし、その願いは黒服の男たちの来訪で破られた。
 前触れもなく訪れた男たちは特務機関の者だと名乗った。
「政府―――、軍の関係者か?」
「ゲイリーって名乗ってたな。赤毛の奴は。たぶんあいつがリーダーだ」
 刹那の脳裏を赤毛の男の面影が過ぎる。
 妙な不吉と不安を感じさせる、存在感が強すぎる男。誰かに従うよりは誰かを従えるのに相応しい迫力を備えていた。
「敬えとばかりに手帳を見せ付けられたよ。けど、実際にあいつらがやったのはオレを捕らえて、家ン中を引っ掻き回して、ヤクたちを怯えさせたことだけだ」
 政府の代表が聞いて笑わせる、と珍しくも青年は冷たい色を瞳に浮かべる。
 ペンダントは古い暖炉の裏に隠してあった。大切に仕舞われていたそれは一族の冠婚葬祭など特別な日しか持ち出されることもなく、只管に静かな時をまどろんでいたのに。
 知らなかったのだ、と彼は自嘲する。
 あんな―――輝いたり、ひとを空に浮かせたり、誰かに付け狙われたりするような、変な力を持ってるなんて思いも寄らなかったんだ、と。
「決してひとに見せたり渡したりするなってガキの頃からずっと言われてたのにな。オレがちゃんとしてれば………お前だって、町のひとたちだって、巻き込まずに済んだのに」
「―――」
「すまん」
「それは違う」
 反射的に告げた言葉は周囲に反響して不思議な余韻を残した。驚きに目を見開いている相手に訳も分からずに先を続ける。
「お前が空から降りてきた時、胸がざわつくのを感じた。何か大変な―――何か、素敵なことが始まったに違いないと」
「………」
「だから、迷惑をかけたなどと言わないでくれ」
 無表情な少年の瞳に浮かぶ真摯な色に青年が瞬きを繰り返す。それでも尚、彼は相手を諌める何事かを告げるべく口を開いた、が。
「―――!」
 小さな足音を聞きつけ揃って振り返る。
 音が反響して方向が定めづらい、が、遠目に見えるあの光はランプの灯火に相違あるまい。こちらから光が見えるということは、向こうからも見えているということだ。
 緊張を孕んだ表情でロックオンが立ち上がる。
「追っ手か」
「いや、それならもっと大人数で来るはずだ」
 ひとりなら返り討ちにした方が簡単に済むかもしれない。
 物騒なことを考えながらランプを不意の侵入者へ向けて高々と掲げた。
 コツコツと響く足音と共にぼんやりとランプの持ち主が浮かび上がる。古びた軍服と軍靴、ほつれた帽子に大きなザック。
 幾度か眩しそうに瞬きをした後で相手はぼそりと呟いた。
「―――驚いた。刹那にそっくりな小鬼がいるようだ」
「セルゲイ・スミルノフ!?」
 馴染みの顔に刹那の肩から力が抜けた。青年を振り返り、「知り合いだ」と説明する。
 一方のセルゲイはしげしげとこちらを眺めている。
「ふむ。不思議なことだ。刹那にそっくりな小鬼がいたかと思えば、おとなの鬼までいる」
「セルゲイ。オレたちは悪漢に追われている」
 その言葉に退役軍人が眉を顰めた。
「―――軍隊にも追われている」
 更に続けると、今度は穏やかに笑われた。
「方々から追われて大変なことだな。敵を撒くために此処に逃げ込んだのか?」
「そんなところだ」
 空から降りてきましたと素直に答えるのは少々躊躇われる。
 安全圏まで抜けたいのだと告げると先導役を買って出てくれた。常日頃から放棄された炭鉱に出入りしている変わり者の軍人上がりである。彼の案内があれば迷子になることもあるまい。ランプの灯が尽きる前に脱出できる見通しが立って刹那たちは胸を撫で下ろした。
 セルゲイが先頭になって道を進みだす。
 歩きながら、この炭鉱がいつ頃できたもので、いつ頃に閉山したのか等の歴史を聞かされた。刹那にとっては耳にたこができるぐらい聞かされたその話もロックオンにとっては非常に興味深いらしく、しきりと相槌を打っていた。鉱山の話が珍しかったのかもしれないが、単にこの青年が他者との会話を好む性質をしている点が大きいのかもしれない。
 幾らか歩き続け、地下水が流れている辺りで小休止を取ることにした。
 汲んで来た水でコーヒーを沸かす。焚き火の傍に車座になって頭上を見上げたが、相変わらず、ランプの灯が届かない部分は黒一色だ。
 カップをゆらゆらと手で回しながらロックオンが口を開く。
「セルゲイさんは此処に住んでいるんですか?」
「まさか。昨夜から石たちが妙に騒いでいたから様子を見に来ただけだ」
「騒ぐ?」
「石が喋るのか」
 刹那も会話に乗った。
 試しに耳を傾けてみるものの、聴こえてくるのは自分達の息遣いと水の流れる音ぐらいのものだ。どうやったら聴こえるのかと訝しげに首を傾げるふたりを見てセルゲイは軽く笑った。
「―――石たちの声は小さいからな」
 ランプを持ち上げてそっと灯を吹き消す。
 暗闇に閉ざされて周囲が確認できなくなる。光に慣れた目は闇への順応が遅く、元より坑道内に差し込む光などごくごく僅かなものだ。
 しばしの戸惑いを余儀なくされるかと思った時に、辺りがぼんやりと光っていることに気がついた。
 岩が、光っている。
 足元の岩だけではない。岩壁も、水底も、周囲すべてがほのかな淡い緑色の光を放っている。
 呆気に取られている間にもポツポツと光は辺りに広がる。ランプなど無くても充分に周りを確認できるほどに。
 うろたえていると肩を叩かれた。
「刹那、―――上を見てみろ!」
「………!」
 視線を上向けて、息を呑む。
 夜空もかくやとばかりの輝きが広がっていた。遠く、果てまで続くようなほのかでやわらかい光の列は真実、空に瞬く星のようでもある。
 セルゲイが金槌を片手に近くの石を持ち上げる。
「見ていたまえ」
 ロックオンと刹那がそれぞれセルゲイの両脇に回り込む。
 金槌が振り下ろされ、甲高い透き通った音と共に石がふたつに割れた。瞬間、淡くほのかな緑の光が溢れ出し、数秒の後に。
「………消えた」
「この辺りの石には太陽石が含まれているのだ。空気に触れるとすぐに消えてしまうがな」
 更にもうひとつ、手近な石を取り上げて割ってみせる。それもまた先刻と同じように僅かに光り輝いたのちにただの黒い石へと戻ってしまう。
 す、と何故か青年が息を呑んだ。
 セルゲイの手元を見詰めていた少年の視界に、暗がりでは目映く感じられるほどの光が届く。周辺の石と同じくやわらかい緑の、けれど、それよりも遥かにしっかりと。
「―――光ってる………」
 胸元から取り出したペンダントの輝きを前に、青年は表情を強張らせた。
 間違えようがない。
 周囲の光とペンダントの輝きが同種であることは誰の目にも明らかであった。
 石たちの「声」とやらに同調したのか。単なる暗がりであったならペンダントも然程の輝きを示さなかったのかもしれない。周囲が暗くなることだけが条件ならば夕べの段階で刹那が目撃していてもよさそうなものだし、何より、青年とて普段の暮らしの中で暖炉の裏から零れる光に気付いているはずだった。
「驚いた………それは、太陽石の結晶だ………! 私も、見るのは初めてだが―――」
 セルゲイが珍しくも動揺を露にしながら、震える手を淡く輝き続けるペンダントへ伸ばす。
「かつて、シュヘンベルグの一族だけが結晶を石にする術を知っていた………そして、石の力を使い巨大な島を空に浮かばせたと―――」
「シュヘン、ベルグ………」
 何処か遠い声音でロックオンが呟いた。
 指がペンダントに触れる直前、何かが傷んだような色を残してセルゲイは面を伏せた。両腕を胸元へと引き寄せて幼児のように縮こまる。
「―――すまん。それを仕舞ってくれないかね。私には強すぎるようだ………」
 慌ててロックオンがてのひらでペンダントを包む。
 が、彼の大きなてのひらでも隙間から零れる光すべてを閉ざすことはできず、結局は元通り上着の中へと仕舞いこんだ。
 震えるてのひらでセルゲイがランプに再び灯をともす。
 途端、先刻までの輝きが嘘だったかの如く周囲はもとの静けさを取り戻した。岩はただの岩であり、石はただの石であり、水もまたただの水である。いつの間にか詰めていた息を深く吐き出して刹那もその場に座り込んだ。
 深い溜息と共にセルゲイは顔を覆う。気まずいものを感じているのか、躊躇う気配を滲ませたロックオンも元通りの位置に腰を下ろした。
 誰に聞かせるでもなくぶつぶつとかつての軍人が言葉を零す。
「聞いたことがある………石たちが騒ぐのは上空に『ガンダム』が来ているからだと………」
「本当か!?」
「あくまでもむかしの話だ。確証のない、噂話に過ぎん」
 身を乗り出した刹那を嗜めるように相手は低い声で語る。それでも、刹那は気分が高揚してくるのを感じていた。
 いままで誰に言っても信じてもらえなかったし自らの目で確かめることも難しかった。空さえ飛べればと幾度悔しさに歯噛みしたことか。それがいま、たとえ噂話や伝承等の不確かな形をとってはいても、初めて『ガンダム』に繋がる道が見えたのだ。あのペンダントが不思議な力を持っていることは充分に体験した。ペンダントは太陽石の結晶で、太陽石を結晶にできるのはシュヘンベルグの一族だけで、シュヘンベルグの一族が巨大な島を空に浮かべたのであれば。
「君」
「はい」
 セルゲイの声にロックオンが顔を上げる。
「あまりこういうことは言うべきではないのだろうが―――力のある石はひとをしあわせにするが、不幸を招くこともある」
「―――はい」
「ましてやそれはひとの手が作り出したもの。少々、………気になってな」
「そんなことはない!」
 青年当人ではなく、何故か刹那が否定の声を上げた。
 呆気にとられたような表情でふたりがこちらを振り返る。
 確かに、世の中には不幸を招く道具とてあるだろう。血塗られたルビーの伝説や持ち主を渡り歩く呪われた剣の逸話ならば刹那とて聞き及んでいる。
 だが、『これ』がそうだとは到底思えない。
「その石はもう二度もロックオンを救っている。不幸になんてしない」
「刹那」
「石があるなら島だって―――そうだ………すごいぞ、『ガンダム』は本当にあったんだ!!」
 確かな興奮を含んだ少年の純粋な叫びを、ひどく哀しげな瞳で青年が見詰めていた。




「あーあ………逸れちゃいましたねえ」
「だな」
 線路脇の細道で空を見上げながらリヒティがぼやく。隣に佇むラッセも何となく疲れたように見える。
 それはそうだろう、何せつい先刻まで軍から必死こいて逃げ回っていたのだから。
「どうするかね、スメラギ女史!」
 ひとり元気なグラハムが背後を振り返る。トレミー一家の舵取りを任されている女性はしばし考え込むと、ひらひらと右手を振った。
「出直しましょ。静か過ぎるわ。こういう時は動かない方がいいのよ」
「その旨をよしとする!」
 くるりと踵を返した彼女の後にグラハムが続く。
 やれやれと肩を竦めたリヒティとラッセも歩き出す。
 トンネル内で見事に一撃をくらったコーラサワーは、未だ痛む額を抑えながら何とはなしに空に視線を転じて。
 青い空を過ぎる影に首を傾げた。
 黒く、巨大な、翼を広げた―――。
「なんだあ………あれ」
 鳥、だろうかと。
 呟いた声は誰に聞かれることもなく他の雑音に紛れて消えた。




 地上に至る出入り口の前でセルゲイと別れた。暗闇の中にひとり佇み、手を振ってくれる退役軍人の姿は奇妙な寂しさを湛えていた。
 けれども先刻『ガンダム』に繋がる話を聞かされたばかりの刹那は無表情ながらもひどく上機嫌であり、ともすれば止まりがちになるロックオンの手を引いて歩く勢いも確かなものだった。
 外は未だ太陽が中天にかかろうかという頃合だった。町並みが遠くに霞んで見える。
 見上げた空には白い雲がその峰を連ねていた。
「あの雲の峰の向こうに、見たこともない島が浮いている………」
「―――ああ」
 答える青年の声や表情には影が滲んでいる。
 それに気付かぬまま刹那は高々と拳を突き上げた。
「―――やるぞ。オレはやってやる。きっといつか、『ガンダム』を見つけてみせる!」
 父の正しさを証明するためだけではない。
 もう既に、己自身が『ガンダム』を見たくて仕方がないのだ。はるかむかしの伝説として語られるだけの巨大な城。宙に浮かぶというその島を見ることができたなら、直に歩くことができたなら、どれほどに喜ばしいことだろう!
 当然、その時はこの青年も隣にいるのだと根拠のない確信を抱いたまま隣を振り仰いだ少年は、予想外に沈んだ表情に迎えられて驚いた。
 何をそんなに落ち込むことがある。
「ロックオン?」
「刹那。あの、な」
 黙ってたことがあるんだ、と呟いた後で彼は俯く。
 すり抜ける風が強さを増している。
「オレの名前―――ロックオン・ストラトス。ってのは本名じゃないんだ。隠し名っつーか、その………偽名みたいなもんで」
 それはそうだろうな、と。ちらりと思った。
 偽名にしては目立ちすぎだ、とも思ったが口にするのはやめておいた。
 遠い空を黒い鳥が過ぎる。
 一族に伝えられてきた古い名前がある。両親が死んだ時にその名も継いだ。意味なんてわからなかった。知らずにいたかった。ペンダントに不思議な力があることを理解していなかったように、名前の意味すらも分からずにいられたら良かったのに。
「参るよな。無知こそが罪だって言われたら、いまのオレには反論できねえ………」
 彼が苦々しく吐き捨てる意味が分からない。
 何を勝手に自問自答して自己嫌悪に陥っているのか。言いたいことがあるなら言えばいい。
 少年の真っ直ぐな視線に押されたかの如く、青年が重い口を開いた。
「オレの名は、ニールだ」
 普通の名前ではないか、と刹那が言い返そうとした瞬間。

「―――ニール・トエル・ウル………シュヘンベルグ」

 続けられた名にはっと息を呑んだ。
 それは。
 その名は、太陽石を結晶化する技術を持ち、巨大な島を空に浮かべた、あの―――!
「まさか………!」
 問いを発する寸前、遠かったはずの影が接近していることに気付いた。
 突っ込んでくる黒影。
 鳥ではない。
 ―――飛行機だ!
 轟音と共に通過した飛行機が至近距離に着陸する。通過時の突風で吹き飛ばされかけた身体を急ぎ立て直した。飛行機からバラバラと兵士たちが降りてくるのが見える。
 しくじった! 彼らは空から自分たちを捜していたに違いない。
「こっちだ、刹那!」
 青年が元の坑道へ戻ろうと手招く。
 だが、走りこむ寸前に飛んできた銃弾と兵士たちに行く手を阻まれた。かろうじて青年の傍へ駆け寄っても武器を携えた兵に取り囲まれては逃げようもない。
 脱出路はと視線を左右へ流す後頭部に強い衝撃を感じた。
「っ………!」
「刹那!? ―――刹那っっ!」
 膝をつき、倒れこむ。
 こちらを助け起こそうとした青年が兵士に拘束される場面を最後に、彼の意識は闇に飲まれた。

 

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※WEB拍手再録


 

今回の配役

ボムじいさん:セルゲイさん

他にてきとーな年齢のおっさんが思い浮かびませんでした(おっさん言うなや)

 

今回ふたりが食べてた食事は通称「らぴゅたパン」とか呼ぶそうで。

画面上では美味しそうだけど、実際にはひどく味気ないとのお話です(※台無しです)

本名は無茶な合成をし過ぎたと思いましたが、原作どおりだと

「ニール・トエル・ウル・ガンダム」になっちゃうから………幾らなんでもそれは………うん(謎)

 

 

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