「戦え! ボクらのコロクンガー!!」

41.RUSH AT!(2)

 


「総員、伏せろ――――――!!」

 誰かの叫びに甲板上の全員がその場にひれ伏した。

 途端、頭上をすり抜ける閃光、熱線、爆音。

 流石に物量作戦だけではこちらが不利かと防衛隊司令官は動かない表情の下で考えを巡らせた。

既に彼自身の服は煤け、抱えていたバズーカの燃料も残り少なくなっている。だが、敵基地は杳として

海上にたゆたっている。

 戦況は徐々に混沌としつつある。周辺を包囲しているのは紛れもない同盟国家ではあるが、バリア

が展開されているために視界は悪く、特殊な磁場でも発生しているのかレーダーの精度も落ちていた

ため現状把握に著しく時間がかかっていた。

 各国の首脳は竹中博士の手によって全員、洗脳から解放されていたから敵に霍乱されることこそ無

かったが、これでは指示を出すにも苦労する。危険を押して現場に赴いた小六の判断は存外正しかっ

たのかもしれない。

 もっとも。

「総員、右舷前方に退避―――! 着弾に備えろ!!」

「左舷後方に敵部隊襲来! 早急に増援願う!!」

 ―――など、多くの怒号と悲鳴が行き交う現場では指示を出すも何もなかったかもしれないが。

 消耗戦になるのはもとより承知の上である。

 手元の腕時計にほんの一瞬、視線を落として司令官は遠くを見遣った。

「まだか?」

「もうすぐでしょう」

 手にした銃を抱え直し、腰の刀を握り締めながら黒田が笑う。

 直後。




 ―――ッ、ドォォォ………ンン………!!




 衝撃と閃光が辺りを埋め尽くした。

 高く跳ね上がった波に船が翻弄される。各々が甲板にしがみつき、自衛の意識を持たない敵兵はぼ

ろぼろと海に落ちていく。

 海軍、空軍、いずこからとも知れず勝鬨にも似た歓声が沸きあがる。崩れ行くのはこちらの部隊では

ない。宇宙人基地の周辺に張り巡らされていた障壁が轟音と共に崩れていく。

 それは壮麗で壮絶な光景だった。








 遠く、防衛隊の戦艦を見詰めて密やかに笑う。

「………やれやれ」

 右手のくないを強く握り締めて半蔵は口元を歪めた。周囲に散らばるのは数多の鉄塊と破壊された

手持ちの武器の数々。頭上を覆うのは虚ろな黒い天井だ。

 敵艦隊の管制室まで潜り込むのにかなり苦労した。

 どちらも自前のバリアを展開している以上、その障壁の硬度が戦況に影響してくることは必至。だか

らこそ隙をついて細心の注意を払いながら忍び寄り。

 僅か一機。

 緊急配備されたはりぼての如き潜水艦。事前に教授と<ロード>の計算から弾き出されていたバリ

アの有効範囲情報をもとに深く、深く潜り、針の穴を狙うような正確さをもって浮上した。敵基地ではな

く敢えて前方に展開する敵艦に横付けした。連中のバリアは八方に布陣した敵艦に装備されている可

能性が高かったからだ。

 ハッチをこじ開けて中に入り、乗員を蹴散らし、管制室へ。

 機械操作の詳細なんぞ分からないから手当たり次第にぶち壊した。理論も理屈もあったモンじゃない

手法はどちらかと言えば弟子が好みそうなやり方である。

「くく………間違いなく、笑われる、な」

 血が滲む左腹部を抑えてコンソールに手をついた。

 機械兵どもの無謀な特攻ぶりを甘く見すぎた。それでもこの一帯のバリアは壊した―――必然的に、

敵基地を取り囲む他障壁も防御力の低下を余儀なくされるだろう。

 第一段階は、成功したのだ。

 ふらつく足を叱咤して振り返る。

 船自体を乗っ取らせてくれるほど敵も愚かではなかったため主力エンジンを壊すしかなかった。この

船は間もなく沈むだろう。

 このまま船と命運を共にするか?

「―――否」

 断じて、否だ。

 青褪めた顔に不敵な笑みを浮かべて迫り来る敵兵の足音に神経を集中する。間もなく海中に没しよ

うとも、潜入に使用した潜水艦は動かずとも、味方の援護が期待できなくとも。

 背中は見せない、逃げない、戦い抜く。

「………帰ったら酒でも奢ってもらおうかね」

 小六と、五右衛門のふたりから。

 半蔵は珍しくも穏やかな笑みを浮かべた。扉の向こうには壊しても壊しても立ち上がる敵兵がひたひ

たと這い寄って。




 ―――扉が。

 開いた。








「………っ」

 ふ、と。

 妙な痛みを感じてこめかみを抑えた。

 周囲を見渡しても他の隊員は何を感じた様子もない。ただ冷静に、海上と基地内の戦況を見詰めて

いる。無論自分もそちらへ精神を集中していたのだが。

 予感も予兆も信じない。不安を感じた方が負けだという気すらしているから。

「………オレは何も出さねぇぞ。ぼけ師匠」

 誰にも聞こえない音量で五右衛門は呟いた。








 先の轟音と閃光は間違いなく障壁の一部が崩れ去った音だった。

 突き出した槍で敵の一群を貫いて、犬千代は瞳を輝かせる。

「やったか!」

「ああ!」

「そのようだな………!」

 至るところに擦り傷と切り傷をこしらえた勝三郎が、万千代が、満足そうに頷く。

 上空を飛び交う友軍が壊れたバリアに集中攻撃を仕掛けている。萎えかけていた気力もこれで取り

戻せようと言うものだ。バタバタと敵を乱雑に切り倒しながら甲板上を後方から前方へと急いだ。確認

したいのは司令官の無事だ。障壁の崩壊に伴い敵の通信網の一部が遮断されたのだろう、攻撃の手

は多少なりとも緩みつつある。かと言って、防御を怠ればあっという間に船は沈んでしまう。

「一益さん!」

「お前ら、無事だったか!」

 銃を構えて海上の敵を狙い撃ちしていた一益と目が合った。犬千代と勝三郎と万千代は槍や刀で敵

を薙ぎ倒しながら、一益は銃で遠目の敵を撃ち払いながら。

「………っ、バリアは、崩れたんですよね!?」

「間違いない。先刻、司令が通信機のもとへ急ぐのが見えた! 黒田が傍に控えているが援護に向か

わなければ―――」

「分かりました。急ぎましょう!」

「それと」

 僅かに表情を曇らせて一益が低く呻いた。

 数分前、敵船がひとつ海中深くへと沈んだ。バリアを壊すために内部工作員が潜入した船だ、沈むこ

と自体は願ったり叶ったりだ。

 だが。

「服部殿と―――連絡がつかなくなったらしい」

「え………」

 妙な沈黙がその場に下りた。

 まさか、そんな、―――取り留めの無い思いが脳内を巡る。これは戦いだ、子供の遊戯ではない、そ

ういった事態も充分予測できた。けれど、頓着している暇も心配している余裕もない。

 だって。

 ―――感傷にひたるにはまだ早い。

「だ………大丈夫ですよ! 服部さんでしょう!」

 勝三郎が裏返りかけた声で宣言する。

 彼の言葉にそれぞれが曖昧な笑みと同意を示しながら、司令が目指している機関部を保護すべく足

を進めた。

 嘆き悲しむのも互いの身を案じるのも後回しだ。

 いまは、進むしかない。








 遠くから足音が響いてくる。主の焦燥を表すようにその音はせわしなく、つっけんどんだ。暗闇に蹲っ

ている日吉の耳に響くそれは外部で何事かが起きたことを知らせてくれる。頭上で鈍く回転を続ける黒

い岩石の重みを何故かずっしりと感じた。




 バン!




 勢いよく戸を開いて現れたのは苛立ちも露な天回と心眼と宙象と幻夜。背後には黙りこくったままの

ザコズがしおしおと付き従っている。

 日吉は何も言わず拳を握り締めたまま睨み返した。

 相手は舌打ちし、と同時に。

「―――ブラック・ボックスを使うぞ!」

「っ………?」

 驚いた。

 あまりにも早すぎやしないか。そこまで急がねばならない事態が生じたのか。突然の天回の発言に

流石に周囲も慌てている。

「天回様、しかし、未だ彼奴の生体情報は―――」

「情報の不足分に構っている場合ではない。持ち運びが出来ぬ以上、この場で全てを行うしかないの

だからな」

 さっさと封を解除しろ、と彼は居丈高に言い放つ。

 理由はよく分からない。が、これはチャンスだ。水や食料も限られていたために体力は消耗している

がそんなもの意志の力でどうとでもなる。

 おそらく奴は日吉を封じている光線状の封印を解くつもりだろう。しかし、件の岩石が此処にあるのだ

から、そう遠くまで出向くことはないはずだ。周囲は薄暗くて良く分からないけれど、おそらく、すぐ近くに

祭壇か何かがあるのだろうと踏んでいる。

 息を詰めて日吉は機を窺った。逆らう気力を無くしたように顔を俯けて。

 ジジッ―――と鈍い音を立てて周囲を覆っていた光の帯が消え失せる。天回に急かされるままに幻

夜は陣内に踏み込むと虜囚の腕を掴み挙げた。

「さあ、とっとと立ちなさい。お前の最期なのだから誇らしく思うがいいわ!」

 左上腕部を捻り上げられる。

 それこそ、狙った瞬間。

「最期は―――お前たちだ!!」

 握り締めていた右手を開いた。

 閉じ込めていたのはかつて兄から贈られた首飾り。撃たれた折りも己を守ってくれた宝物。銀の鎖に

指をかけ、オリハルコン部分を重し代わりに投げつける。

「あうっっ!!?」

 第三の眼を直撃した痛みに幻夜の動きが止まった。

 長めの鎖を敵の首に回し背後をとる。伊達に実働部隊として訓練を積んできた訳ではない。チェーン

がぎりぎりと肉に食い込んでいく感触は耐え難かったし、気分が悪くなった。けれど、同じ『女』である幻

夜が近くに来たこの機を逃すことは出来なかった。心眼や宙象相手では力負けしてしまう。

 グイ! と幻夜を相手方に押しやって、震えそうになる膝を叱咤して叫ぶ。

「そ………そこを退け!! オレはお前らの策になんか協力しないっっ、絶対に!!」

 だが。

 最初こそ動揺が窺えたものの、既に他の宇宙人連中は落ち着きを取り戻していた。

 不気味なほど静かにこちらを眺めている。その様は逆に日吉を落ち着かない心境にさせた。

「………………か、ね―――」

 締められた気道をひゅーひゅーと唸らせながら幻夜がせせら笑う。

「天回―――ま、が………で、引く、と………? 所詮、は、作り物………本体は………!」

 いま活動しているのは『まがい物』。

 だから、ここで『死』んでも痛くも痒くもないのだと。

 ああ、―――確かに。秀吉と共に宙象と戦った、けれども倒したのは機械にすぎなくて、本体は何処

か安全な場所に置かれているのだろうと。

 一瞬。動揺しかかった。

(―――違う、落ち着け!)

 奴らの言葉が真実とは限らない。

 深呼吸をひとつしてから幻夜の肩越しに日吉は真っ直ぐ相手をにらまえた。

「………こっちが『本体』な可能性だってあるだろ」

「なに?」

 ぴくり、と宙象が眉をひくつかせた。

「さっき言ったな、ブラック・ボックスを使うと。時空改変を開始するつもりってことだ。じゃあお前らは、成

功するかどうかも分からないぶっつけ本番の現場に仮の身体で赴くのか? 何かのきっかけで本体と

切り離されてしまうかもしれないってのに!」

 ジリジリと後退る。

 少しずつ、少しずつ、向きを変えながら出口の方へ。

「考え方はふたつ―――危険だから本体を遠ざけておくのか、危険だからこそ本体を伴うのか。ただ、

お前らがこれまでの時空改変の結果を知ってるんなら、大切なものほど傍に置いておくはずだ。何せ、

『余所の自分』と混ざり合ったりしたら、もう、分けることが出来ないんだからな!」

 セリフの数々に返されたのは静寂と冷徹な瞳だけだった。

 挫けそうになるこころを奮い立たせる。思い出すのは信長の無鉄砲さ、五右衛門の不敵な笑み、秀

吉の仏頂面、それから、それから、ヒナタとヒカゲの笑顔に犬千代や加江や竹千代や教授たち、防衛

隊みんなのあたたかい声を。

 帰るんだ。

 みんなのところに、帰るんだ………!

 天回が軽く眼を瞑る。傍らに控えていた宙象がゆっくりと右手を前へと差し伸べた。しかしそれは、仲

間を救うために伸ばされたものではなく。

 開いたてのひら、『念』を放つ構えが向けられた先は。




 ―――幻夜、だった。




 低く、何処か嘲る調子さえ含ませて彼はのたまう。

「全ては天回様の望みのためだ」

「………!」

 彼女が目を見開いたのを感じた。自分で盾にしたはずなのにそれがひどく痛い。

 腕を押し付けた背から読み取れるのは動揺と悲鳴。見捨てられると思っていなかった者のこころだ。

首が絞められていることなど関係なく、幻夜は、身体を細かく震わせていた。

「て―――ん、かい………さま………?」

「幻夜よ」

 手にした杖をひとつ、床について。

 彼らを束ねる人物はわざとらしい憐憫と無関心を滲ませて宣言した。




「わしのために死ね。おぬし自身が以前より告げておったことよ。本望であろう?」




「天回様………!!」

 叫びが胸に突き刺さる。

 ああ、イヤだイヤだイヤだ。こうして彼女を人質にしたのも盾にしたのも追い詰めたのも自分なのに、

簡単に仲間を見捨てる奴らの態度に腹が立ってならない。

 宙象のてのひらに篭められた目に見えない『力』が放たれる瞬間。

 ―――衝撃が辺りを襲った。








 耳障りなノイズと共に設置されたモニターが像を結ぶ。

 服は汚れているものの疲れも感じさせずに防衛隊司令官は仮基地に残った面子に笑いかけた。

『すまん、待たせたようだな。準備は出来ているか?』

「あたぼーよ!」

 信長が不適な笑みと共に拳を握れば傍の秀吉と五右衛門も各々の武器を構え直した。

 竹中教授がゆっくりと正面のコンソールに手をつける。

『服部殿が開いてくれた障壁の穴はごくごく小さい。各国が総力を挙げて攻撃しているが、基地に直行

できるほどの広さが確保できているかは疑問だ』

「大丈夫です。こちらでコースを調節します」

 瞑想に落ちる如く瞳を閉じた教授の脳内では様々な計算がなされているのだろう。

 頭上のモニターに映し出されているのは次々と沈んでいく敵艦隊と、被害を免れえずに後退して行く

味方の艦隊、海に落ちる影は敵か味方か。それでもやはり、バリアの一部を突破したことは大きかっ

た。僅か一点、生じた穴に集中砲火を受ける敵の被害は甚大だろう。

 そして。

 その、僅かに生じた針の穴の如き『隙間』を縫って『転移』するのだ―――実働部隊は。

 運ぶ人間に躊躇いやミスがあったなら途端に通路は閉ざされる。転送途中で落下したり、海上に落

下するならまだ良い。最悪、敵陣に到着する前にいずこかの『別空間』に囚われてしまうだろう。そうな

ったが最後、二度とこちらの世界に帰還することは出来なくなる。

 とは言え。

「頼んだぜ、教授」

「………準備はできてる」

 忍びを名乗る少年が笑い、額に包帯を巻きつけた少年が頷くように。

『操縦者』に対する信頼だけはイヤというほど持っている。

 この場面、この展開において、しくじるような人物ではないのだと。

 静かに教授が目線を送ると陣の真ん中に佇んだ隊長は深々と頷いた。

「送れ」

「………わかりました」

 ほんの少し、瞼を閉じて。

 瞳を開くと同時に凄まじい速さでコマンドを打ち出した。背後で<ロード>が、離れたところで矢崎が、

入力補助を開始する。

 ぼんやりと足元の布陣が鈍い光を放ち始めた。

「転移回廊、確保! 出力、問題なし」

「座標軸特定―――X地点、Y地点、Z地点ともに異空間同位体なし」

「多次元回廊の閉鎖を確認。転移対象の解体と再構築を開始!」

 世界が白く輝く。

 周囲を取り巻く空気を粗い粒子として目に捕らえる感覚。

 現実に、素粒子レベルに分解されつつあるのは己らである。

 この転送方式を経験したことがあるのは秀吉だけだ。一旦、身体がバラバラに分解され転移先で再

構築される奇妙な感覚。気の弱い者であれば『分解』の段階で悲鳴を上げることだろう。

 もはや世界を『世界』として認識するにも難い状況の中、確かに三人は制御者の声を聞いた。




「転移、開始!」




 ―――そして。

 辺りは目映いほどの光に包まれた。

 数瞬のちに開いた目にはかろうじて『何か』が界を移動した光跡が垣間見え。

 実働部隊の三名は見事にその場からかき消えていた。

 残された者は即座に上部のモニターに目を移す。仮基地から発せられた白い筋は進撃を続け、バリ

アに生じた隙間をすり抜け、遠目に浮かぶ半円型の黒い基地に突き立つ。

 その、音が聞こえた訳ではない。

 彼らの安否が目に見えた訳ではない。

 だが、何故か。

 ―――その場にいる全ての者たちが確信と共に。

「やっ、た………!」

 ヒナタの声が彼らの内心の全てを代弁していた。

 収束しつつある円陣の光に突如としてヒカゲが足を踏み入れた。<ロード>や矢崎や竹中博士が戸

惑うのも顧みず、彼女は真っ正面から教授を見詰めた。

「お願いがあります」

「………転送、ですか」

 前々から予期していたのか『転送』の実権を握る人物は抑揚のない声で呟いた。

「二次的な『転移』ではあそこまでの距離は稼げない。おそらくは手前の海上―――それこそ戦闘の只

中に落とされることになるでしょう。それでも行きますか」

「構いません。後はどうとでもします」

 実働部隊が辿った道をなぞるように移動する。だが、前回の軌跡をたどるだけのそれはひどく頼りな

い。初回の『転送』よりも更に危険は増している。

 モニターを見上げて感激に浸っていたヒナタが慌ててヒカゲの腕を引っ張った。

「ちょっ―――待ってよ、ヒカゲちゃん!」

「ヒナタ………ごめんなさいね。あなたには一緒に来てもらわなければならない。危険な目に遭わせて

しまうけれど、」

「そうじゃなくてっ! 海の上に落ちるのが確実ならコレ使おう、コレ!!」

 取って返したヒナタが書棚の影から引きずりだしたのは壊れかけのミニモーターボート。随所が歪ん

ではいるもののエンジンだって動くしハンドルは利くしガソリンだってちゃんと積んでおいたのだ! と

彼女は胸を張った。一体いつの間にこんなものを用意していたのかと呆れぬでもない。

 もしかして己の行動を察していたのかとヒカゲは嘆息する。

「そりゃ、………分かってたよ。ヒカゲちゃん、責任感つよいもん。絶対なにかするって―――」

「ヒナタ………」

「だから用意しといたの! 教授にも相談しておいたっ。ふたり+ボート分の質量ならどうにか運べま

せんかって!」

 今度こそ双子の姉はぱちくりと目を瞬かせた。

 振り向いた先では仕方なさそうに教授が笑っている。『転移』のリスクや自身にかかる負担を考慮し

て尚、前へ進もうとする妹君の熱意に打たれたのだと。ゆっくりと左手でいまにも消えそうな光を放ち続

ける陣を指差し、促す。

「さあ、早く。間隔があけばあくほど到達地点は開いてしまう。いまならばまだ間に合うはずです」

「ありがとうございます、教授。………ヒナタも。ありがとう」

 ううん、別に、と。

 何故かヒナタは少しだけ泣き出しそうな顔をして笑った。

 その肩に甲高い鳴き声と共に何かが飛び乗った。驚いて見遣れば、安全な場所に逃がしておいたは

ずのサスケが何故かその場で寛いでいる。

 コイツも行きたいらしい、とふたり共に苦笑して。

 並んでモーターボートのハンドルを握った。

 

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予定してたところまで入ったような入らなかったような………。

作中で服部さんの生死について頓着されてましたがあまり気にしなくていいと思います(オイ)。

今回、書いてて予想外だったのは幻夜さんがカワイソウな感じに

なっちゃったことですね〜。細部を決めずに書き出すとこーゆーことにな(強制終了)。

 

―――とりあえず、ヒナヒカも実働部隊の後を追って突撃です。

この作品は基本的に原作をトレースしてるので原作ラストでいた人々は現場にいてもらう

必要があるのです。ただそれだけのことです(おい)。

ところで、サスケは仮基地で預かってるって展開で合ってたっけ??(確認しとけヨ)

 

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