「戦え! ボクらのコロクンガー!!」

44.long good-bye(2)

 


 カァン………!

 キィンッッ!!

 斬り結ぶ刀から火花が散る。高い金属音が狭くはないが広くもない廊下に響き渡り耳障りな音色となっ

て反響する。天井がある場所で刀を使うのは不利なのに、敢えてこの武器を選んだのはもはや単なる意

地なのかもしれない。

「戦いにくそうだな、秀吉!」

「はっ! 余計なお世話だ!!」

 宙象の<念>を符を纏わせた刀で切り払う。奴の獲物はこちらの日本刀より一回り小さい小太刀だ。

間合いでいえばこっちが有利だが、懐に入り込まれればやりづらくなる。

 切っ先が交錯し日本刀の先端が敵の左肩を僅かに切り裂く。

 同時、宙象の小太刀が秀吉の左頬を掠める。

 熱いものが頬を伝うのを感じても動きを止めることは出来ない。一合、二合と重ねた打ち合い、ギリギリ

と刃を刃で押し返しながら笑みを刻む。

「今回は本体みてぇだなあ、その身体!! ニセモノ用意してる暇なかったってか!」

「貴様ら如きに本体で相手してやろうというのだ、感謝しろ!」

「抜かせ! 時空改変の波に巻き込まれることを恐れただけだろうが!!」




 ガィン!!




 小太刀を弾き飛ばし、すかさずポケットから取り出した『言霊』対応の符を更に刀に巻きつける。ぼんや

りと日本刀に赤い光が纏わりついた。

 ―――こいつだけは自分で倒されなければ。

 そもそもコイツをあの場で倒せなかったから、洗脳なんかされたから。

 無駄に日吉を悲しませる結果になったのだ………!!

 洗脳されたおかげで探り当てることが出来た真実もあるが何よりも優先すべきはその事実。こうしてい

る間にも途切れ途切れに伝わってくる日吉の感情はひどく揺らめいて不安を伝えていた。妹の精神は妹

自身に関わる危機が原因で揺らぐことはない。彼女のこころはひとえに身内の―――信長のことを案じて

揺れる。

(のんびりしてる暇なんか、ねぇんだよ………!)

 駆けつけてやらなければならない。

 いま、すぐに。

「―――こいよ。一刀両断にしてやらあ」

 不敵な笑みは絶やさないままに軽く右手で敵を手招いた。








 激しい斬戟の音を聞きながら五右衛門は眼前の敵を真っ直ぐに見据えていた。

 己の両手は背中に、敵の両手も同じく背中に。互いに武器を隠し持っていることは明白だ。そして、共に

種が割れている。

「そういやあ―――」

 かつての出来事を思い出した五右衛門の頬が歪む。

「あんたには、いいように逃げられたことがあったっけな」

 まだ秀吉が洗脳されていなかった頃、サスケを回収しに来た心眼とひと悶着あった。あの時は日吉の救

出を優先したけれど、やはり、あの場で倒しておくべきだったかと。

 心眼が見えない表情の下で笑ったように感じた。

 瞬間。

「―――っ!!」

 飛来した鞭をくないで受け流す。首につけた白い二重の輪、それこそが奴の武器だ。縛られるよりは縛

る方がまだ好きだなどと戯言を思い浮かべている暇もあらばこそ。弾き返す度に甲高い音が鳴り響く。全

く、伸縮自在とは、あれもおそらくオリハルコン製だろうが厄介な武器を仕込んでくれたものだ。

 投げつけたくないは敵の遥か後方に突き刺さる。

 次いで投じたくないは跳ね返されて天井に食い込む。

(―――二本っ!)

 向こうはこちらの狙いに気付いているのかいないのか。更に三本、四本、と投じる毎に徐々に相手を円

に囲い込む。くないの取っ手には気付かれぬほど小さな『言霊』用の符が巻きつけてある。未だ一度も験

したことがない技だ。己の技量がどれほどに上がっているかはただひたすらに賭けでしかない。

 直前、遠目に戦う秀吉の背中が目に入った。




「―――<止まれ>!!」




 あらん限りの声で叫ぶ、が。

「ひひ………甘い………!!」

 いつの間にか地面に潜んでいたいま一本の白い輪がぼんやりと浮かびつつあった円形の封印を断ち

切る。やはり、『言霊』の扱いに慣れていない。

 床から跳ね上がった鞭の一撃を覚悟した瞬間。




 キィン………ッ!!




 日本刀が、それを受け止めて。

 振り向き様、五右衛門の投じたくないが宙象の手首を跳ね飛ばす。切断力に勝る刀が鞭を半分に断ち

切って、機動力に優れたくないが敵の手首に傷を負わせて。

 図らずも庇い合う体勢になったふたりは共に相手を罵倒する。

「馬鹿か、お前! 使い方もなってないくせに動きを封じようだなんて甘いんだよっ!」

「小太刀相手に苦戦してた奴が言うんじゃねぇや!!」

 背中合わせになったまま再度、五右衛門は心眼に、秀吉は宙象に向き直る。武器の有効性など知った

ことか。たとえフォーメーションを変更すべきかもしれなくとも。

「―――代わる気はないんだろ」

「勿論」

 あの野郎はこの手でぶっ飛ばす、と、振り返らないままに秀吉が呟いた。

 直後。

 ガシャン………、と、耳障りな音が響いた。

 動きを停止していたはずの銀色の機体がおもむろに両腕を上下させる。目から漏れ出す赤光、起動音、

一歩、踏み出された足が床に新たな亀裂を生む。

「秀吉!?」

「オレじゃねぇよ!」

 濡れ衣着せんな! と背中を庇いあった姿勢のままコロクンガーの動きを見つめる。足止めのため床に

貼り付けられていた符は消え失せ、代わりに、機体の腕や足の其処彼処に見覚えのない札がくっついて

いた。

 ゆらり、と機体の頭部付近で影が揺らめいて。

 立ち上がった影は天井に頭を激突しそうになりながらも高らかな声を上げた。

「ほーっほほほほほ! 油断大敵とはまさにこのことね!!」

「幻夜!!」

 そーいやこいつも居たんだったよ! と叫んだのは果たして敵だったか味方だったか。

 先刻までの落ち込みぶりは演技だったのか、はたまた単にキレただけなのか、幻夜はペタリとコロクン

ガーの額に札を貼り付けてニヤリと笑う。

「所詮はこれもオリハルコンの塊―――操って操れないということはない。シンクロは出来なくとも<念>

で動かすことは可能なはず!」

「ちっ!」

 舌打ちと共に五右衛門が放ったくないは呆気なく心眼に叩き落される。

「ひ………ひひ………! そうは、させんよ………!」

「幻夜! そのまま彼奴らを押し潰してしまえ!!」

 宙象の叫びに応じるかの如くコロクンガーの瞳が赤く輝いた。すかさず守りの構えを取るが如何せん図

体が違いすぎる。




 ゴォッ!!




 振り下ろされた拳は一撃で床を破壊する。皹の入った壁が崩れ落ち、冷たい海風が吹き込んだ。体重

の軽い侵入者サイドにとって強風は不利にしか働かない。秀吉は刀を振りかざそうと左手を持ち上げて、

煽られそうになって歯噛みと共に腕を下げた。

 この風なら敵の動きもある程度は制限されるだろうが―――。

 幻夜が笑う。

 何処か、壊れたかのような音程で笑う。

「ざまあないわね、人間ども! このまま別行動してる連中も叩きのめしてやるわ! 全て倒せば―――

天回様だって………」

 聞きたくなかったのに聞こえてしまった声に僅かに五右衛門が眉をしかめた。何があったのかなど知り

ようがないが、そういえば再会した時の日吉の態度も少々怪しかったし、あまりあまり人道的によろしくな

い出来事があったのかもしれない。

 ―――かといって、同情してやる気にはなれない。

 奴らは自分たちの目的を達成するためだけに多くの人間を巻き込んだ。滅ぼされた村に渦巻く怨嗟の

念はこの場にいない『トキヨミ』と称される連中の仕業だとしても、敢えてその轍を踏もうとする行いを黙っ

て見ていられるはずもなかった。

「死になさい!!」

「させるか!」

 振り下ろされた拳を避けて一足飛びに機体に近付く。足場が上の幻夜のもとへは近づけない。だが、舐

めるな。『コイツ』はこれまでずっと自分たちと共に戦ってきた仲間なのだ。秀吉は語っていた、ブラック・コ

ロクンガーは彼を庇って『死んだ』のだと。

 ―――無機物にも意志が宿ると信じて何が悪い。

 冷え切った銀色の腕に手を触れて五右衛門は叫ぶ。




「コロクンガー!! 止まれ!!」




 ヴィィィィン………!!

 鈍い音を立てて白銀の身体が動きを止めた。前触れなく停止した衝撃でコロクンガーの肩からズリ落ち

そうになりながら、やや混乱した風情で幻夜が叫ぶ。

「何!? 何が起きたと言うの!?」

「てめぇらの思い通りには行かないってこった!!」

 幻夜の放つ<念>と五右衛門の<意志>がせめぎ合う。『彼』自身の抵抗の証の如く機体周辺の空気

が帯電しているように見えるのはただの錯覚か。

「ちっ!!」

 右手後方で宙象が小太刀を構え直した気配を捉えた、瞬間。

 場を離れていた黒い影が日本刀を抜き放ち敵の背後に迫る。振り返る間も、反撃の暇も与えずに鋭い

一撃を振り下ろす。




「てめぇは―――去れ!!」

「がっ………!!!」




 かつての百合の島と同じく、かつてと異なり本体に上部からの一閃を。

 舞い散る鮮血を見たならばこの場にいない『妹』は嘆くのだろうと感じつつ、秀吉は切り下ろす刀を止め

なかった。もんどり打って倒れる敵を冷徹な目で見遣りながら。

 咄嗟にコロクンガーの肩から飛び降りようとした敵幹部の額に何か白いものが飛び掛る。

「キ―――っ!!」

「きゃっ………! な、なに………!!」

 第三の目を爪で引っかかれ動揺する背中にいまひとつの影が近付いた。何処かで入手して来たらしい

謎の釘バットを握り締め。

「あなたも、眠ってなさいっっ!!」




 ゴイ―――ン!!




 脳天直撃、のけぞって落ちかかる相手の身体をヒナタが慌てて食い止めた。その肩に飛び乗ったサス

ケが一声高い警戒音を奏でる。半歩遅れてやって来たヒカゲがコロクンガーの腕と足に貼られていた符

を引き剥がし。

 白い指先が真っ直ぐに背後を指し示す。

「五右衛門、あとひとりよ!!」

「ひ………!!」

 珍しく動揺も露に心眼が一歩、後退る。それを見逃すほど甘い忍びではなかった。投じたくないの一撃

で飛来した鞭を跳ね返し、敵の懐に生じた間隙に身を割り込む。

 腹部にてのひらを当ててトドメをさす前にニッコリと。

「はい。―――終了♪」




 ドッ!!




 情け容赦なく拳の一撃を鳩尾に食らわせれば鈍い悲鳴と共に相手は膝を折る。腹部に鉄板仕込んでた

って堪え切れまい。伊達にあのバカ師匠に鍛えられてきた訳ではないのだ。

 足早に駆けつけた秀吉が心眼の使っていた鞭を拾い上げ、それを使って持ち主自身の両腕を縛り上げ

た。血をダラダラと流し続けている宙象をも鞭を縄代わりとして縛り上げる。

「なーにやってんの、お前」

「こいつらが目ぇ覚ましたら面倒だろ」

 尤もな意見だった。

 しっかりはっきり切り裂いた宙象まで縛り上げる必要はないんじゃないのかと、よくよく改めて見てみれ

ば第三の目の表面は綺麗に切り裂かれているものの、傷自体は然程深い訳でもなさそうだった。手加減

したのかと問えば「防衛隊はヒトゴロシの集団じゃない」と返された。確かな正論の裏には身内が誰かを

傷つけたと知った時の日吉の痛みを案じる気持ちが隠れているに違いあるまい。

 チラリと横目で突然の乱入者を見た。

「―――で? そちらさん達はどうしてここにいるんだ?」

「この子たちが案内してくれたのよ」

 にっこりと笑うヒカゲの背後には頭隠して尻隠さず状態のザコズがうごうごと蠢いている。………答えで

はあるが答えになっていない。

 一瞬、秀吉と顔を見合わせて。

 先ずは、とばかりに廊下の角に隠れている物体をじっと見詰めれば、ものすごく怪しい素振りでオドオド

と踊りながら這い出てきた。点と線だけで構成された外見、見開いたままで瞼も何もない瞳に器用にも涙

を滲ませている。

 尋ねもしない内から彼らは口々に言い立てた。

『だっ………だって、一応秀吉様には助けてもらいましたし―――っ!!』

『本当です! ただ本当にそれだけですっっ!!』

『裏切ったワケじゃないんですっ、恩を返しただけなんですっ、で、ででででも決して心眼様たちを恨んでる

んじゃなくてぇぇぇっっ!』

「わ、わかった、わかった」

 うわぁぁぁん! と泣き出したザコズを前に秀吉が引き攣った笑みを浮かべる。ほんのひとり(?)かふた

りと思っていたのに後から後から途切れなく這い出てくる様はかなり不気味だ。数える気にもならないが、

おそらく、全員がこの場に集合しているのだろう。次から次へとザコズにしがみ付かれる秀吉にとっては

たまったモンじゃない。

 そのままコイツらの保護者役つとめてやればいーんじゃねぇの、なんて軽口を叩きたくもなったけど。

 ザコズの波からそれとなく逃れながら五右衛門が問い掛ける。

「―――助けたのか?」

「覚えがない………」

 ヒーロー然とした振る舞いなどした例がないのだと彼は憮然とした表情で語る。秀吉にとっては、ザコズ

を盾に取られて切れなかったことも、名前がなかった彼らに名前をつけたことも、何一つ『特別』には分類

されないのだった。

 故に、五右衛門にはザコズが協力してくれた理由が分からずじまいだった。

 あらためて防衛隊のオペレーターズに向き直る。

「マジでどーやって此処へ来たのよ」

「教授の力も借りて、モーターバイクで追って来ただけ。―――見届けるためにね」

「見届ける?」

 殴り飛ばした幻夜をロープで縛っていたヒナタが咄嗟に面を上げた。

「五右衛門。あなたは、何を何処まで知ってるの?」

「どこまで、って―――」

 視線をヒカゲからヒナタに、ヒナタからもう一度ヒカゲに、そして最後に秀吉へと移して。

 ………何となく察する。

 この場において仔細を把握していないのは己だけなのだと。

 天回たちの目的は時空改変にあるだとか、それにはブラック・ボックスが必要だとか、ヒナタもヒカゲも秀

吉も引いては日吉も『それ』の当事者なのだとか。そーいった対外的な事実とは別に、何か、彼らだけが

理解していて成そうとしているものが。

 気にならないと言えば嘘になる。確証はないなりに思い至ることはある。

 が、それよりも。

「………知るワケねぇや。てめぇらが好んで黙ってる事実なんて。けど」

 肩を竦めることで答えとなした。

「オレだって色々と隠し立てしてる身だし? とやかく言える立場じゃない」

「―――そう」

 不思議と安堵した表情でヒカゲがゆったりと微笑んだ。

 ごそごそとザコズの山から這い出して秀吉が苛立った声を上げる。

「おい! ンなことより急ぐぞ! 日吉と信長様がどーなってっかわかんねぇんだっ」

「え? 日吉、先に行っちゃってるの!?」

 慌ててヒナタが幻夜を壁にもたせかける。

 大至急、駆けつけるのに異論はないが、いましがた倒したばかりの連中は放置して構わないのか。ふと

した瞬間に目覚めてロクでもないことを仕出かしてくれたらどうするのだ。

「心配ねぇよ。―――ベイスターズ。少しの間でいい。見張っててくれるか?」

『は、はいっっ!!』

 額に「B」と描かれたザコズがビシッ! と姿勢を質す。

「万が一、心眼たちが起きて縄を解けと言ってきたら一目散に逃げろ。解いたら解いたで連中はお前らを

いいように使うだろうからな」

『わ、わかりましたっっ!!』

 いつの間にやら「A」も「C」も、「Z」まで揃っての唱和だ。

 くつくつと笑みを零して「愛されてるねぇ」と茶化せば即座に目を逸らされた。照れてたのかもしれない。

 ヒラリと五右衛門はコロクンガーの背中に飛び上がる。次いで秀吉が、ヒナタが、ヒカゲが、そして最後

に辺りをウロついていたサスケが飛び乗って。

「―――行くぞ!」

 低く命を発すればコロクンガーが唸りをあげて応えた。








 銃声を聞いた瞬間、襲ってきたのは後悔だ。

 たとえ誰に言われようと、本人に言われようと、一緒に行くべきだったのだ。そうすればせめて―――せ

めて、盾にはなれたのに。

「信長様っっ!!」

 青褪めた表情で日吉は鉄筋製の階段を駆け上がる。上がった瞬間、視界の端に捉えたのはもつれ倒

れこんだ信長と天回の姿だ。倒れた時に後頭部を強打したのか天回は低く呻いている。何故に一番容態

が心配なヒトよりも先に敵の様子が目に入ってしまうのだろう。

 ブラック・ボックスを小脇に抱え、急いで信長の頭を抱き起こす。

「信長様! ―――信長様っっ!!」

「………って、え………」

 ほんの僅かな間を空けて隊長が目をこじ開けた。

 ああ―――よかった。

 生きていた。

 常人よりも鋭い光を宿した目がハッキリとこちらを捉える。彼の目に映る自分は実に情けない表情をし

ていて、またそれで目頭が熱くなる。

「―――サル………?」

「、かった………殿………」

 支えた左手が濡れる感触に、銃で撃ちぬかれた彼の左肩に泣きたくなった。どうしてこのヒトはいつも無

茶ばっかりしてくれるのか。その度に自分を含めた周囲がどれだけ心配するか分かっているのだろうか。

 何故か信長が物凄く動揺の色を浮かべた。

「な、なに泣いてんだよ、サル」

「泣いてません」

「嘘つくんじゃねえ」

「ついてません。それより………じっとしてて下さいね。手当て、しますから」

 かすり傷だと嘯く彼を余所にハンカチで肩口を縛る。幸いにして弾は貫通しているようだ。

 ほんの少しだけバツが悪そうにしながら、信長は背後の壁にゆっくりともたれかかった。

「―――天回は」

「気絶、してます。殴ったんですか?」

「殴ってねーよ。そいつが勝手に足滑らせて頭うちつけやがった。………ま、おかげで弾道が逸れたんだ

けどよ」

 でなければ危なかったのだろう。ちょっとだけ信長が神妙な顔をした。

 用が済んだならこれ幸い、とっとと皆と合流するに限ると考えながら日吉は油断なく辺りを見回した。勿

論、天回の手首を奴自身の服の切れ端を使って縛っておくことも忘れない。

「皆に連絡を取りましょう」

「焦るな。向こうも修羅場だろ。………倒せば、追って来る―――」

 壁に背中を預けたまま深く信長は息をつく。見た目より傷が重いのか、仲間を信頼しているからか、ある

いは他の何かから。表情を曇らせてリングで通信しようとすると「早く周囲を調べろ」とせっつかれた。深

いため息をついてから言われた通り探索を開始する。

 薄暗い部屋は重火器類がしまってあるだけかと思いきや、意外と細かなパソコンチックなものまで設置

されていた。画面を見ても意味が分からないしどのボタンがどんな操作に繋がるのかも分からない、下手

に弄って自爆装置を押しては嫌なのであまり手を触れたくはなかったが。

 それでも、起動スイッチと判じたボタンを押してモニタに浮かんできた映像には興味を惹かれる。

 たぶんこれは、基地の全体図。秀吉すら把握しきれていなかっただろう細部まで。連中はもしかしたらブ

ラック・ボックスを本当の本当に中枢近くに安置していたのかもしれない。

「信長様、これ………」

「なんだ」

 画面切り替えのスイッチを押せば、平面に展開されていた図形が立体へと形式を変える。真ん中に記さ

れた光点はこの部屋を示しているのだろう。そして、部屋の真下―――基地の中央に位置するものは。

 しげしげと眺めやった信長が不敵な笑みを浮かべる。

「なるほど? ―――儀式の場は地下にありってワケだ」

 黒い岩石が仕舞われていた部屋から伸びる光線、ブラック・ボックスが置かれていたこの部屋から続く

光線、そして、光線と光線の交わる中核。




「銅鐸の間………」




 ぽつり、と。

 描き出された地図中の名を読み上げる。

 其処が戦いの最終目的地に相違なかった。

 

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微妙にゴエや秀吉たちの戦いが駆け足で反省することしきりであります。

相変わらず戦闘シーンを書くのは苦手であります………苦。

 

取り合えず書く上で邪魔だった(オイ)敵連中は一通り眠ってもらったので、いちおー

次回が「すべての決着」とゆー感じでしょうか。一年シリーズ戦隊ものアニメに喩えるならば

最終回一歩手前のBパートに入ったかのような!(Bパートかよ)

 

殿に怪我してもらったのは原作を踏襲しているのと、少し静かにしててもらうための布石です。

五体満足だったら絶対に何か仕出かしちゃうもんよ、このひと………(遠い目)。

 

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